愛以上、恋未満 ―処女未亡人は、危険なオトコの愛欲に溺れる―

indi子/金色魚々子

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2話

2話 ④

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 生まれて初めて、男の人の劣情に流された。

 どれだけ抵抗しても体の自由を奪われ、口づけされたところはまるで火がともされたみたいに熱くなって、彼の大きな手が私の体を這いまわるたびに、感じたことのない刺激が頭を揺らす。

 自分の口から漏れる声が、まるで私自身のものとは思えないくらい甘くなっていった。初めは乱暴のように思えた彼の手付きが、徐々に優しくなっていくのが分かった。今まで自分でも触れたことのない場所に、彼の長い指が触れ、生暖かい舌で舐められて、唇で触れられる。その度に、私の体がびくりと跳ねてしまう。頭の中は何度も雷が落ちたみたいにビリビリと痺れて、息絶え絶えになって、体から力が抜けていく。

 その度に、彼は私の耳元で囁くのだ。

「いい子だ。かわいいな、お前は」

 それを思い出すと、顔がカーッと熱くなっていった。私は頭を振ってその残像を払おうとしたけれど、一度思い出してしまったものは、簡単に消えてはくれない。

 私の体が彼を受け入れる準備が整った時、彼はもう一度こう言った。

「これで……正真正銘、お前は俺のモノだ」

 そして、彼自身が私の体の中心に突き立てられていく。痛みもあったけれど、私はそれを嫌だと思わなかった。まるでそれが自然のことなのだと、体も心も、いつの間にか彼を受け入れてしまったみたいだった。

「……変なの」

 初対面の男性に半ば無理やり抱かれても嫌だと思わない私も、こんな私を自分のモノにしようとする彼も、何もかもおかしい。帰ってきたら、ちゃんと話を聞かないと……私は久しぶりのお風呂にじっくりと浸かりながら、そう決意を新たにしていた。

 そう、加州さんが帰ってきたらちゃんと話をしてみよう。……しかし、あれ以来、彼と遭遇できる機会はほとんどなかった。

 まず、彼が帰ってくるのはいつも深夜だった。私は寝ないように頑張ってリビングで待っていたけれど、いつの間にか眠ってしまい……加州さんが運んでくれたのか、朝目覚めた時はベッドに横になっている。もちろん、その時には加州さんはもう外出してしまっている。

 それなら、今度は朝早く目覚めて彼が出かける前に捕まえよう……と思ったけれど、夜が明ける前にフジイさんが迎えに来て、彼は足早に出かけて行ってしまうことも多々あった。

 そういう訳で、このマンションに連れてこられて数日、私は彼と全く話をしていない。

「……忙しいんだよね、きっと」

 ヤクザといえども、フジイさんがバーやクラブに経営もしていると話していた。想像するしかできないけれど、こんなに家にいないなんて、もともと目が回るくらい忙しい人なのだろう。

 私はそんな事を考えながら、夕食の支度を始める。加州さんのお言葉に甘えて、台所を勝手に使わせてもらっている。冷蔵庫の中には食材なんてものはなかった(お酒やゼリー飲料くらいしか入っていなかった)ので、タブレットとクレジットカードも借りて、食材も宅配購入した。そのお礼も言いたかったのに、加州さんには声をかける暇もない。

(もしかして、ずっとこうなのかも)

 そんな不安が胸をよぎったとき、玄関のドアが開く音が聞こえた。加州さんだと思って慌てて廊下に出るが、靴を脱いでいたのはフジイさんだった。

「あ、莉乃さん、コンバンハ」
「こんばんは……あの、加州さんは?」
「暁生さんですか? 今日は忙しくて泊まりになるから、着替えを持って来いって言われまして……あとついでにクリーニングするものも。莉乃さんの着てた喪服、持って行っていいですか?」

 私は喪服を用意して、フジイさんが持ってきたランドリー袋に入れた。その中にはすでに何着かのスーツやワイシャツが入っていた。ふとフジイさんの顔を見ると、目の下にうっすらと隈が出来ているのがわかる。

「お忙しいんですか?」
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