21 / 35
4話
4話 ③
しおりを挟む
そう言って、加州さんは車を発進させた。
「この後は、どうするんですか?」
用事も果たしたし、家に帰るのだろうか? そう思って運転席にいる加州さんに尋ねると、加州さんは「腹が減ったから、昼飯でも食いに行こう」と告げた。
「夜はいいところのディナーを予約してあるんだ」
「へ?」
「その前に、ブティックにも寄っていくか。ちゃんと昼飯食っておかないと、体力持たないぞ」
そして彼に連れて行かれるまま昼食をともにし、私はブティックの前に来ていた。
(……また、随分高級そうなお店だな)
「何突っ立てるんだ、早く行くぞ」
「は、はい!」
ドアに近づくと、それは中から勢いよく開いた。
「加州さん! 久しぶり~!」
飛び出してきた女の人が加州さんにぎゅっと抱き着く、彼は煩わしそうにその人を引きはがした。長いまつ毛に、唇をかたどるハッキリとした色の口紅。体にぴったりとしたワンピースはとても彼女に似合っていた。
「最近中々来てくれなかったから、どうしたのかなって思っていたところなのよ!」
「ここに用事がなかっただけだ。莉乃、おいで」
私が戸惑っているのに気づいた加州さんが私を呼ぶ。少しだけ彼に近づくと、加州さんは私を引き寄せて、今度は腰のあたりに腕を回した。
「ひゃっ……!」
「莉乃、コイツはこの店のオーナーのヒロコだ」
「あら、久しぶりに来てくれたと思ったら、新しい女の子を自慢しに来たってわけ?」
ヒロコさんはため息をつきながらお店の中に戻っていく。私たちもそのまま、ブティックに入っていく。お店中に花のような甘い香りが広がっている。
「この後ディナーなんだ。それらしい服に着替えさせてやってくれ」
「若くてかわいい女の子とデートってことね。それはいいけど……」
ヒロコさんはふんふんと頷きながら、私の頭のてっぺんから足の先まで見渡していく。
「今までの加州さんのカノジョとは違うタイプね……新鮮っ! 私の好きにしてもいい?」
「莉乃は、何かこだわりはあるか?」
「い、いいえっ」
「じゃあ、イイ感じに見繕っておいてくれ。俺もいったん家に帰って着替えてくる」
「はいはーい! そうだ、ヘアメイクも私がやっていい?」
「任せる」
「やった! 加州さんがびっくりするくらい可愛くしちゃおっと! 莉乃ちゃんだっけ? こっちにおいで」
ヒロコさんが私の腕を引っ張る。加州さんは「楽しみにしてる」とだけ言って、ブティックから出て行った。
「加州さんも、いつのまにこんなに可愛らしいお嬢さんと付き合いだしたのかしら? 全然話聞いてなかったからびっくりしちゃった」
「別に付き合っている、っていう訳じゃないんですけど……」
「え゛? うそでしょ!」
ラックにかかっているフォーマルドレスを何着か引っ張り出しながら、ヒロコさんは驚いたように声をあげた。
「加州さん、莉乃ちゃんにめっちゃ惚れてるって感じだったけど! なになに、どういう関係?」
ヒロコさんは私たちの関係に興味津々な様子だった。私はその勢いに押されて、ついうっかり……今までの出来事を話してしまった。
「うわ、最低じゃん、加州さん。初対面でソレはないって、引くわー」
「あはは……」
「この後は、どうするんですか?」
用事も果たしたし、家に帰るのだろうか? そう思って運転席にいる加州さんに尋ねると、加州さんは「腹が減ったから、昼飯でも食いに行こう」と告げた。
「夜はいいところのディナーを予約してあるんだ」
「へ?」
「その前に、ブティックにも寄っていくか。ちゃんと昼飯食っておかないと、体力持たないぞ」
そして彼に連れて行かれるまま昼食をともにし、私はブティックの前に来ていた。
(……また、随分高級そうなお店だな)
「何突っ立てるんだ、早く行くぞ」
「は、はい!」
ドアに近づくと、それは中から勢いよく開いた。
「加州さん! 久しぶり~!」
飛び出してきた女の人が加州さんにぎゅっと抱き着く、彼は煩わしそうにその人を引きはがした。長いまつ毛に、唇をかたどるハッキリとした色の口紅。体にぴったりとしたワンピースはとても彼女に似合っていた。
「最近中々来てくれなかったから、どうしたのかなって思っていたところなのよ!」
「ここに用事がなかっただけだ。莉乃、おいで」
私が戸惑っているのに気づいた加州さんが私を呼ぶ。少しだけ彼に近づくと、加州さんは私を引き寄せて、今度は腰のあたりに腕を回した。
「ひゃっ……!」
「莉乃、コイツはこの店のオーナーのヒロコだ」
「あら、久しぶりに来てくれたと思ったら、新しい女の子を自慢しに来たってわけ?」
ヒロコさんはため息をつきながらお店の中に戻っていく。私たちもそのまま、ブティックに入っていく。お店中に花のような甘い香りが広がっている。
「この後ディナーなんだ。それらしい服に着替えさせてやってくれ」
「若くてかわいい女の子とデートってことね。それはいいけど……」
ヒロコさんはふんふんと頷きながら、私の頭のてっぺんから足の先まで見渡していく。
「今までの加州さんのカノジョとは違うタイプね……新鮮っ! 私の好きにしてもいい?」
「莉乃は、何かこだわりはあるか?」
「い、いいえっ」
「じゃあ、イイ感じに見繕っておいてくれ。俺もいったん家に帰って着替えてくる」
「はいはーい! そうだ、ヘアメイクも私がやっていい?」
「任せる」
「やった! 加州さんがびっくりするくらい可愛くしちゃおっと! 莉乃ちゃんだっけ? こっちにおいで」
ヒロコさんが私の腕を引っ張る。加州さんは「楽しみにしてる」とだけ言って、ブティックから出て行った。
「加州さんも、いつのまにこんなに可愛らしいお嬢さんと付き合いだしたのかしら? 全然話聞いてなかったからびっくりしちゃった」
「別に付き合っている、っていう訳じゃないんですけど……」
「え゛? うそでしょ!」
ラックにかかっているフォーマルドレスを何着か引っ張り出しながら、ヒロコさんは驚いたように声をあげた。
「加州さん、莉乃ちゃんにめっちゃ惚れてるって感じだったけど! なになに、どういう関係?」
ヒロコさんは私たちの関係に興味津々な様子だった。私はその勢いに押されて、ついうっかり……今までの出来事を話してしまった。
「うわ、最低じゃん、加州さん。初対面でソレはないって、引くわー」
「あはは……」
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない
橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。
そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。
1~2万文字の短編予定→中編に変更します。
いつもながらの溺愛執着ものです。
婚活に疲れたアラサーOLの私、癒やし的存在の弟分(高校生)に「もう待てない」と外堀を埋められています ~10年分の執着は、甘すぎて重すぎる~
ダルい
恋愛
「29歳? 子供産むならもっと若い子がよかったな」
中堅企業で働く早川結衣(29)は、婚活市場における年齢の壁と、デリカシーのない男たちにすり減らされる日々を送っていた。
そんな結衣の唯一の癒やしは、マンションの隣に住む幼馴染の高校生・瀬戸湊(16)。
両親が共働きの彼に代わって、幼い頃はお世話をしてあげていた……はずが、いつの間にか立場は逆転。
手料理を振る舞われ、愚痴を聞かれ、マッサージまでされる始末。「湊がお嫁さんならいいのに」なんて冗談を言っていたけれど。
「今の結衣姉が一番綺麗だよ。……早く、誰も手出しできない『おばさん』になってくれればいいのに」
可愛い弟分だと思っていた彼が、時折見せる『オス』の顔。
16歳の高校生と、もうすぐ30歳のアラサー。
13歳差の常識と理性に抗いながら、生意気な年下男子に外堀を埋められていく、甘くて重い現状維持(ラブストーリー)。
「俺が大人になるまで、誰とも結婚しないで」
癒やされたいすべての女性に贈る、最強の年下幼馴染による溺愛包囲網、開始。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる