24 / 35
4話
4話 ⑥
しおりを挟む「それから、莉乃の事を調べたんだ。あの女がどこの誰だったのかから始まって、どこに住んでいるのか、どんな仕事をしているのか……その過程で、莉乃の実家の経営状態が良くないのを知った。うちから仕事を回すことができないか、そんな事を考えていたときにあの話が耳に飛び込んできたんだよ」
「それって、斉藤さんとの結婚話ですか?」
「そうだ。本当に驚いた、はらわたが煮えくり返ったね。……でも、この世界に身を沈めていたら聞かない話じゃない。娘をスケベな金持ちの後妻や妾にあてがうなんて、腐りきるほどある。けれど、俺は本当に許せなかった。あのジジィを殺してやろうかと思ったほどだよ」
加州さんはとても物騒な事を言うので、私は少し背筋が震えた。
「けれど、ジジィはあっけなく死んだ。その時は神に感謝したね……きっとあの家の人間は莉乃の事を追い出す。莉乃は帰ったところで、またどこかに売られてしまうのがオチだ。だったらその隙に莉乃に話をつけて、そのまま連れて帰ってしまおうと思ったんだ」
話だけじゃすまなかったけどな、と加州さんは言葉を付け加える。
「本当に、悪いことをしたと思ってる」
「え?」
「あの日、無理やり……」
彼はそこで言葉を途切れさせた。何を言おうとしているのか、私にははっきりわかる。それを思い出そうとすると、お腹が勝手に熱くなってしまう。それを加州さんに悟られないように、私は脚に力を込める。
「本当は、もっと違うカタチでしたかったさ。でも、俺だってオトコだ。……好いた女が目の前にいたら、我慢なんてできないさ」
「……すっ!?」
「いや、そんな生ぬるいものじゃないな。俺はあの時から、ずっとお前の事を愛している」
顔がカッと熱くなっていく。きっと今、見えている素肌すべてが真っ赤に染まっているに違いない。
だって! 男の人に、こんな風にストレートに好意を伝えられるなんて……生まれて初めてだったから。きっと、初めて彼と関係を持った時よりも、心臓がバクバクと素早く脈打っているに違いない。彼はまっすぐに私を見つめる。それが恥ずかしくて、私は顔を伏せた。
「莉乃」
そう呼びかける彼の声は、とびきり優しい。上目遣いに彼をちらりと見ると、加州さんは優しく微笑んでいる。
「このホテルに、部屋を取ってるんだ。……いいか?」
その言葉に、私は頷くほかなかった。
***
加州さんに連れてこられた部屋は、高層にある――いわばスイートルーム。広い部屋がいくつもあって、ベッドルームには大きなベッドが置いてある。洗面所から、加州さんが私を呼び声が聞こえてきた。
「莉乃、ちょっと見てみろよ」
洗面所に向かうと、加州さんは浴室から出てきたばかりだった。
「うちより広い風呂だ。一緒に入ろう」
「……え?」
「いいだろ、別に。何度も裸を見た仲だろう?」
加州さんは上着を脱ぎ、ネクタイをほどいていく。私がもじもじと戸惑っていると、加州さんはワイシャツのボタンを外す手を止めた。
「莉乃?」
「あの……一緒にお風呂はちょっと……」
「どうして?」
私は加州さんから目を反らす。私が彼と一緒にお風呂に入るのが拒む理由……恥ずかしいのもあるけれど、もう一つ理由があった。
「……い、刺青が……」
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない
橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。
そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。
1~2万文字の短編予定→中編に変更します。
いつもながらの溺愛執着ものです。
婚活に疲れたアラサーOLの私、癒やし的存在の弟分(高校生)に「もう待てない」と外堀を埋められています ~10年分の執着は、甘すぎて重すぎる~
ダルい
恋愛
「29歳? 子供産むならもっと若い子がよかったな」
中堅企業で働く早川結衣(29)は、婚活市場における年齢の壁と、デリカシーのない男たちにすり減らされる日々を送っていた。
そんな結衣の唯一の癒やしは、マンションの隣に住む幼馴染の高校生・瀬戸湊(16)。
両親が共働きの彼に代わって、幼い頃はお世話をしてあげていた……はずが、いつの間にか立場は逆転。
手料理を振る舞われ、愚痴を聞かれ、マッサージまでされる始末。「湊がお嫁さんならいいのに」なんて冗談を言っていたけれど。
「今の結衣姉が一番綺麗だよ。……早く、誰も手出しできない『おばさん』になってくれればいいのに」
可愛い弟分だと思っていた彼が、時折見せる『オス』の顔。
16歳の高校生と、もうすぐ30歳のアラサー。
13歳差の常識と理性に抗いながら、生意気な年下男子に外堀を埋められていく、甘くて重い現状維持(ラブストーリー)。
「俺が大人になるまで、誰とも結婚しないで」
癒やされたいすべての女性に贈る、最強の年下幼馴染による溺愛包囲網、開始。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる