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5話
5話 ④
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振り返ると、髪を金色に染めた男の人が立っていた。人懐っこい表情で、私を見てニコニコとしている。
「お姉さん、もしかして困ってるんじゃない?」
私の現状を見抜いたその言葉に、頷くほかなかった。彼は「やっぱり!」ととても嬉しそうだ。
「それならさ、うちの店で働くのはどう?」
彼は私の肩に腕を回して、まるで捕らえるようにグッと力強く引き寄せた。呼吸が近くなって、私の体に緊張が走る。彼はその状態のまま、ゆっくりと歩き出していた。
「そんなに硬くならないでよ! うち、いい店だよ~。給料も支払いいいし、客だっていい人ばっかり。見た感じ住むところもないんでしょ? 今ならすぐ入居できる寮だってあるよ」
「……寮、ですか」
「そうそう。お姉さん、初心そうだけど、もしかして処女?」
「い、いいえ!」
「そっかぁ。残念、処女だったら手当てもついたんだけど。ま、仕方ないか。まずは店に来て、面接受けなよ。でもお姉さんならきっと大丈夫、かわいいし! すぐにお客さんだってつくよ!」
男性は一人で話を続ける。
「店長の面接に合格したら、まずは研修を受けてもらうんだよね。どうやったらお客さんが満足してもらえるかとか、プレイの内容とかね。店長や俺らで懇切丁寧に教えてあげるから、心配しなくてもいいよ! それにお姉さん、コンナ店で働いたことないでしょ? 業界未経験の女の子が来たら、常連さんにしか紹介しないことにしてるから。変な人いないし、その方が安心できるでしょ?」
「は、はぁ……」
「あー、そうだ。これだけは言っておかなきゃ、あとで店長にも女の子にも怒られるんだけど……」
彼は私の耳元に口を近づけて、そっと囁く。
「一応さ、本番はNGなんだけど。あ? 分かる? 『本番』って……まあ処女じゃないならわかるよね。ただ、常連さんの中には強引な人もいてね、うちも困ってるんだけど、お小遣いとかくれるんだわ。もし君がそういうのシタイ気分だなってときだけでいいからさ、常連さんのワガママも聞いてあげてもいいかな? お客さんが離れちゃったらうちの店も困るし……それに一番困るのは働いている女の子だし、そこらへん協力してうまくやってよ? ね? あ、うちの店ココなんだ」
見上げると、そこにあったのはよくある雑居ビルだった。看板も何も出ていない。本当にこんな所に、『お店』があるなんて信じられなかった。
「ま、まずは店長と面接ね。ほら、入ってよ」
男性は雑居ビルの薄いガラスのドアを開ける。私は大きく息を吸った。……もう誰にも頼ることはできない、一人で生きていくにはこの方法しかない。自分に言い聞かせるように、何度も頭の中で繰り返した。覚悟を決めて、足を踏み入れようとしたその瞬間――誰かが、私の腕を強く掴んでいた。
「この、バカ!」
「……加州、さん?」
顔をあげると、そこにいたのは心の中で別れを告げたはずの加州さんだった。私が都合よく見ている幻覚なんかじゃない、今までずっと一緒に過ごしていた彼の姿が、なぜか今、私の目の前にあった。
「どうして、ここに……」
「それはこっちのセリフだ! 俺から逃げようとしたって無駄だぞ!」
加州さんは強引に勧誘の青年から私の体を引き離し、私の腕を掴んでそのまま歩き出そうとした。
「あぁ、そうだ」
加州さんは足をピタリと止め、振り返って私を勧誘していた青年に振り返る。彼は状況が飲み込めないのか、呆然としている。
「うちのシマで勝手に商売してるっていうのはお前らか。店長に言っとけ、あとでうちの組の者がいくって」
「く、組ぃっ!? もしかして、それって加州組じゃ……」
「わかってんなら話が早い。……行くぞ、莉乃」
私の返事を聞かないまま、加州さんは早歩きで人混みを進み始めていた。
「お姉さん、もしかして困ってるんじゃない?」
私の現状を見抜いたその言葉に、頷くほかなかった。彼は「やっぱり!」ととても嬉しそうだ。
「それならさ、うちの店で働くのはどう?」
彼は私の肩に腕を回して、まるで捕らえるようにグッと力強く引き寄せた。呼吸が近くなって、私の体に緊張が走る。彼はその状態のまま、ゆっくりと歩き出していた。
「そんなに硬くならないでよ! うち、いい店だよ~。給料も支払いいいし、客だっていい人ばっかり。見た感じ住むところもないんでしょ? 今ならすぐ入居できる寮だってあるよ」
「……寮、ですか」
「そうそう。お姉さん、初心そうだけど、もしかして処女?」
「い、いいえ!」
「そっかぁ。残念、処女だったら手当てもついたんだけど。ま、仕方ないか。まずは店に来て、面接受けなよ。でもお姉さんならきっと大丈夫、かわいいし! すぐにお客さんだってつくよ!」
男性は一人で話を続ける。
「店長の面接に合格したら、まずは研修を受けてもらうんだよね。どうやったらお客さんが満足してもらえるかとか、プレイの内容とかね。店長や俺らで懇切丁寧に教えてあげるから、心配しなくてもいいよ! それにお姉さん、コンナ店で働いたことないでしょ? 業界未経験の女の子が来たら、常連さんにしか紹介しないことにしてるから。変な人いないし、その方が安心できるでしょ?」
「は、はぁ……」
「あー、そうだ。これだけは言っておかなきゃ、あとで店長にも女の子にも怒られるんだけど……」
彼は私の耳元に口を近づけて、そっと囁く。
「一応さ、本番はNGなんだけど。あ? 分かる? 『本番』って……まあ処女じゃないならわかるよね。ただ、常連さんの中には強引な人もいてね、うちも困ってるんだけど、お小遣いとかくれるんだわ。もし君がそういうのシタイ気分だなってときだけでいいからさ、常連さんのワガママも聞いてあげてもいいかな? お客さんが離れちゃったらうちの店も困るし……それに一番困るのは働いている女の子だし、そこらへん協力してうまくやってよ? ね? あ、うちの店ココなんだ」
見上げると、そこにあったのはよくある雑居ビルだった。看板も何も出ていない。本当にこんな所に、『お店』があるなんて信じられなかった。
「ま、まずは店長と面接ね。ほら、入ってよ」
男性は雑居ビルの薄いガラスのドアを開ける。私は大きく息を吸った。……もう誰にも頼ることはできない、一人で生きていくにはこの方法しかない。自分に言い聞かせるように、何度も頭の中で繰り返した。覚悟を決めて、足を踏み入れようとしたその瞬間――誰かが、私の腕を強く掴んでいた。
「この、バカ!」
「……加州、さん?」
顔をあげると、そこにいたのは心の中で別れを告げたはずの加州さんだった。私が都合よく見ている幻覚なんかじゃない、今までずっと一緒に過ごしていた彼の姿が、なぜか今、私の目の前にあった。
「どうして、ここに……」
「それはこっちのセリフだ! 俺から逃げようとしたって無駄だぞ!」
加州さんは強引に勧誘の青年から私の体を引き離し、私の腕を掴んでそのまま歩き出そうとした。
「あぁ、そうだ」
加州さんは足をピタリと止め、振り返って私を勧誘していた青年に振り返る。彼は状況が飲み込めないのか、呆然としている。
「うちのシマで勝手に商売してるっていうのはお前らか。店長に言っとけ、あとでうちの組の者がいくって」
「く、組ぃっ!? もしかして、それって加州組じゃ……」
「わかってんなら話が早い。……行くぞ、莉乃」
私の返事を聞かないまま、加州さんは早歩きで人混みを進み始めていた。
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