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2章 呪われた炎
第51話 アサシンの仕事
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《カリン視点》
「……」
「やめ!やめてください!」
「ははは!そろそろ根を上げたでござるか!」
「ちがいます!人殺しをやめてください!」
「……うるさい!愚妹ごときが!」
「ああ!?」
私は、ボルケルノ家の庭に身を隠し、目の前の惨状にどう介入すべきか考えていた。私だけであの男を止められるだろうか。
「ははは!」
「っ!?や、やめ……」
シューネ様は、必死に耐えていて一歩も引く様子はない。傷口を見る限り、そこまで深くは斬られていないようだが、このまま斬られ続けたら、出血死する可能性がある。
屋敷の方を見る。使用人たちは青い顔をして眺めているが、誰も助けようとはしない。信じられないことに、家族もだ。赤い髪の人物が何人か窓際を通ったが、庭の方をチラッと見てからすぐに姿を消した。この屋敷にシューネ様を助ける人物はいないのだ。
私が助けに……いや、一旦ご主人様に報告を……
でも、ご主人様に報告したらすぐに助けに向かうだろう。そうしたら、ご主人様にまであの凶刃が向けられる可能性が高い。それはダメだ。私が、やるしかない。そう決心して、私は短剣を構えて、ゆっくりとマーダスに近づいた。
「ははは!……ネズミが紛れているでござるな」
「っ!?」
ガキン。背後からの一撃だった。完璧に気配を消したはずだった。
それなのに、私の短剣はマーダスの首元で止められている。しかもこいつは、こちらを見てすらいない。私はすかさず、こいつから距離を取った。
「何者でござるか?」
ゆっくりと振り返る快楽殺人者。刀を向けられてすぐにわかった。私では勝てないと。
「あ、あなたは……?」
でも、シューネ様はもう限界だ。身体を震わせて血みどろになっている。
「シューネ様、お逃げください」
「え?……あなた……ジュナリュシア様の家にいた……」
「……」
私は、シューネ様に顔を明かしていない。私のことを知っているということは……そうか、私たちの会話を聞いてここに来てしまったのか、と思い当たる。
私は自分が失敗したことを理解して唇を噛む。アサシンとして、あってはならない失態だ。
「ジュナリュシアだと?はぁ、またあのスキル無し関連か。やれやれでござる。そなた、あやつの従者でござるか?」
「……でしたら、なんだと?」
「なら、斬ってもいいでござるな」
ニヤ。マーダスがニヤついたかと思ったら、一瞬で距離を詰められた。やつが目の前にいる。
刀は!?右!
「っ!?」
ガキン。なんとか受け止めることはできたが、やつの刀の勢いを殺すことはできず吹き飛ばされ、大木に叩きつけられる。
「がはっ!?」
「ははは!よく止めた!女のわりにやるでござるな!」
「お兄様!やめて!」
「うるさい!おまえはそこで見ていろ!」
立ち上がる。息を整えて前を向いた。シューネさんが私を助けようと、足を引き摺りながら近づいてくるのが見えた。
マーダスはニヤつきながら刀を肩にのせている。
倒せない、私には。
シューネ様は……すみません……ここは逃げるしか……
私は煙玉の準備をする。すると、
「あ?おまえ、逃げる気か?」
ニヤついていたマーダスの顔が暗い顔にかわる。
「……」
私は答えない。
「逃げるつもりなら、手加減はやめだ」
マーダスが構えをとったと同時に、私は煙玉を投げつけた。煙幕が広がり、視界が塞がる。私は出口に向かって駆け出した。
でも、あいつのおぞましい殺気が近づいてくるのがわかった。
「ご主人様……」
諦めに似た気持ちを覚え、愛する主人のことを考える。最期にもう一度だけ、ご主人様に触れたかった……
そのとき、
「逃げて!!」
煙の向こうから、シューネ様が現れて、私のことを突き飛ばした。
綺麗な手だった。その手が、突き出された両手が、私のことを助けてくれた綺麗な手が、左側から現れた刀と重なる。
私の目の前で、シューネ様の両手が斬り落とされた。
「あぁぁぁぁ!!」
「シューネ様!」
「はははは!!」
ボルケルノ家の庭園には、少女たちの悲鳴と、殺人鬼の笑い声が響き渡っていた。
「……」
「やめ!やめてください!」
「ははは!そろそろ根を上げたでござるか!」
「ちがいます!人殺しをやめてください!」
「……うるさい!愚妹ごときが!」
「ああ!?」
私は、ボルケルノ家の庭に身を隠し、目の前の惨状にどう介入すべきか考えていた。私だけであの男を止められるだろうか。
「ははは!」
「っ!?や、やめ……」
シューネ様は、必死に耐えていて一歩も引く様子はない。傷口を見る限り、そこまで深くは斬られていないようだが、このまま斬られ続けたら、出血死する可能性がある。
屋敷の方を見る。使用人たちは青い顔をして眺めているが、誰も助けようとはしない。信じられないことに、家族もだ。赤い髪の人物が何人か窓際を通ったが、庭の方をチラッと見てからすぐに姿を消した。この屋敷にシューネ様を助ける人物はいないのだ。
私が助けに……いや、一旦ご主人様に報告を……
でも、ご主人様に報告したらすぐに助けに向かうだろう。そうしたら、ご主人様にまであの凶刃が向けられる可能性が高い。それはダメだ。私が、やるしかない。そう決心して、私は短剣を構えて、ゆっくりとマーダスに近づいた。
「ははは!……ネズミが紛れているでござるな」
「っ!?」
ガキン。背後からの一撃だった。完璧に気配を消したはずだった。
それなのに、私の短剣はマーダスの首元で止められている。しかもこいつは、こちらを見てすらいない。私はすかさず、こいつから距離を取った。
「何者でござるか?」
ゆっくりと振り返る快楽殺人者。刀を向けられてすぐにわかった。私では勝てないと。
「あ、あなたは……?」
でも、シューネ様はもう限界だ。身体を震わせて血みどろになっている。
「シューネ様、お逃げください」
「え?……あなた……ジュナリュシア様の家にいた……」
「……」
私は、シューネ様に顔を明かしていない。私のことを知っているということは……そうか、私たちの会話を聞いてここに来てしまったのか、と思い当たる。
私は自分が失敗したことを理解して唇を噛む。アサシンとして、あってはならない失態だ。
「ジュナリュシアだと?はぁ、またあのスキル無し関連か。やれやれでござる。そなた、あやつの従者でござるか?」
「……でしたら、なんだと?」
「なら、斬ってもいいでござるな」
ニヤ。マーダスがニヤついたかと思ったら、一瞬で距離を詰められた。やつが目の前にいる。
刀は!?右!
「っ!?」
ガキン。なんとか受け止めることはできたが、やつの刀の勢いを殺すことはできず吹き飛ばされ、大木に叩きつけられる。
「がはっ!?」
「ははは!よく止めた!女のわりにやるでござるな!」
「お兄様!やめて!」
「うるさい!おまえはそこで見ていろ!」
立ち上がる。息を整えて前を向いた。シューネさんが私を助けようと、足を引き摺りながら近づいてくるのが見えた。
マーダスはニヤつきながら刀を肩にのせている。
倒せない、私には。
シューネ様は……すみません……ここは逃げるしか……
私は煙玉の準備をする。すると、
「あ?おまえ、逃げる気か?」
ニヤついていたマーダスの顔が暗い顔にかわる。
「……」
私は答えない。
「逃げるつもりなら、手加減はやめだ」
マーダスが構えをとったと同時に、私は煙玉を投げつけた。煙幕が広がり、視界が塞がる。私は出口に向かって駆け出した。
でも、あいつのおぞましい殺気が近づいてくるのがわかった。
「ご主人様……」
諦めに似た気持ちを覚え、愛する主人のことを考える。最期にもう一度だけ、ご主人様に触れたかった……
そのとき、
「逃げて!!」
煙の向こうから、シューネ様が現れて、私のことを突き飛ばした。
綺麗な手だった。その手が、突き出された両手が、私のことを助けてくれた綺麗な手が、左側から現れた刀と重なる。
私の目の前で、シューネ様の両手が斬り落とされた。
「あぁぁぁぁ!!」
「シューネ様!」
「はははは!!」
ボルケルノ家の庭園には、少女たちの悲鳴と、殺人鬼の笑い声が響き渡っていた。
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