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第ニ章

才能の開花

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 稽古を始めてから少し時間が経ち、流石の二人にも少し疲れの色が見えてきた。

「うん、二人ともだんだん慣れてきたし…そろそろ頃合いかな。」

 動きにも慣れてきたみたいだし、今日のところはお終いにしよう。

「よし、それじゃあ今日の稽古は終わりにしよう。」

 パンパンと手を叩いてそう告げると、二人はふぅ……と大きく息を吐き出した。

「ふぅ……そんなに長い時間じゃないけど疲れるわね。」

「ハァハァ、ホントだよ。」

「疲れたろ?ほら飲み物。」

 二人に冷えたコーラを手渡す。すると、二人は勢いよくそれを飲み始めた。

「ぷはぁ~……普段より増して美味しく感じるわぁ~。」

「でも、こんなに短い時間でいいのかい?休憩挟めばもっとやれるけど……。」

「いや、一度にたくさんいろんなことを教えても、体に本当に身につくものって少ないんだ。それよりは少しずつ確実に身につくものを毎日やった方がいい。」

 そう説いていると、グレイスと遊び終わったらしいシアが一人でこちらに駆け寄ってきた。

「お兄さん!!シアともあれやろ?」

「ん?さっき二人がやってたやつか?」

 コクコクとシアがうなずいた。

(ん~、まぁ優しくやれば……大丈夫かな。怪我だけはさせないように気を付けよう。)

「わかった。それじゃあいくぞ~?」

「うん!!」

 俺は遊びのつもりでゆっくりと拳をシアへと向けて近づけていく。ゆっくりだ、ゆっくり優しく……。

 自分なりにシアに気を使ったつもりなのだが……それが間違いだったと後悔することになる。

 シアの手が俺の手首に触れた瞬間世界が反転したのだ。

「ッ!?」

 簡単な話だ。ゆっくりの力には素早い力をかけて加速させる。もちろん、こんなことはドーナやランにも教えてもいない。いわゆる応用的なテクニックだ。
 なぜシアがこんなものを取得しているのか疑問に思う前に、地面が急速に迫ってくる。

「ふんっ!!」

 身の危険を感じて受け身を取ると、衝撃を流した地面が大きく陥没してしまう。

(し、死ぬかと思った……。受け身が取れなかったらヤバかったな。)

 冷汗が頬を伝うと、シアが無邪気な笑みを浮かべながら問いかけてきた。

「ねぇねぇお兄さん!!今のどう?」

「あ、あぁバッチリだ。よく見ただけでできたな?」

「見ただけじゃないよ?グレイスが一緒にやってくれたの~。」

 チラリと先ほどまでシアとグレイスが遊んでいた場所に目を向けると、頭から地面にグレイスが突き刺さっていた。

 すぐに近くに駆け寄って、ズボッと地面からグレイスを引っこ抜いて声をかける。

「グレイス?生きてるか?」

「な、なんとか生きてるっす……。」

 どうやらしっかりと生きているようだ。

 それにしても……ここのところ、グレイスのタフさが際立ってきているような気がする。ステータスお化けのシアにぎゅっと抱きしめられても、気絶するだけだし…投げられて地面に突き刺さっても無事だ。
 もしかするとグレイスもシアに適応してきているのだろうか?

 その後、まるで何事もなかったかのようにグレイスは元気に飛び始めるのだった。
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