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第三章

空駆けるグレイス

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グレイスside

 ヒイラギ達が入ったバッグを落とさないように首にかけると、グレイスは空を見上げた。

「これで大丈夫っすね、それじゃっ……。」

 大空へ向け翼を大きく羽ばたかせた。一つ二つと羽ばたく度にグレイスの体が空へと浮き上がった。

「高さはこんなもんっすかね~。」

 雲のすぐ下ぐらいまで高度をあげたグレイスはそう言った。

「確かあっちの方って言ってたっすね、風は……向かい風。」

 追い風ならば風にのって加速することができるので最高速を手っ取り早く出せるのだが、残念ながら今は向かい風…流れに乗ることはできない。

「うーんヒイラギさんに全力でって言われてるっすからね~。」

 グレイスは魔力を練り上げ、ある魔法を使った。



 この魔法は風魔法の初歩的な魔法である。自身の周りにそよ風を起こす魔法だが、練度が高まると風の向き、強さ等も自由自在に変えることができる魔法だ。

「これで大丈夫っすね。じゃあ飛ばすっすよ!!」

 ブリーズによって風は常に追い風になったことで、グレイスは一気に加速する。飛び始めて三分程で最高速に達した。
 今のグレイスに出せる限界のスピード、音速に近い速度だ。

「なんか見えるっすね~、邪魔なのがいるっす。」

 飛んでいると前方に行く手を遮るように鳥の魔物が群れで現れた。ギャアギャアとこちらを威嚇している。

 しかし、グレイスはスピードを落とさない。むしろ突っ込む勢いで飛んだ。

「雑魚は引っ込んでろっす!!」

 再びグレイスは魔力を練り上げる。先程のブリーズとは比べ物にならないほどの高密度の魔力…。

!!」

 そして、グレイスは翼の羽ばたきから生まれた音速の風の刃を鳥の魔物の群れへ放った。風の刃は何匹か鳥の魔物を切り裂き通過していく。
 風の刃で倒せた魔物は少ないがグレイスの狙いは別にあった。

 音速の風の刃が通りすぎた直後、鳥の魔物達が音の衝撃波で次々に落ちていった。…音速を越えた物体が生み出す大音響だ。

 その衝撃波は少し離れた窓ガラス程度であれば簡単に砕くという。もしそれを間近で食らえばどうなるか。
 鼓膜が破れ、三半規管はボロボロになり下手をすれば爆ぜる。戦闘機がソニックブームの衝撃に耐えきれずバラバラになったという事例も少なくはない。

 それほどの衝撃なのだ。

 落ちていった魔物達を見下しながらグレイスが悠々とそこを通りすぎる。

「こんなんじゃ足止めにもならないっすよ。」

 魔物の妨害を退け、グレイスは先を急ぐのだった。
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