もんむすッ！めたもるふぉ～ぜ☆～世界に♂はボク一人！？～

第一章 転生そして成長

第28話 怒り

　コンコン……とノックされた扉をルア達三人はじっと見つめていた。
　すると、何度もコンコン……コンコン……と扉がノックされ始める。

「お、お母さん……。」

「じっとしておれ……動くでない。」

「で、でも……この気配間違いない……ですよね？」

「うむ。」

　クロロと由良は扉の前に立つ者の気配を敏感に感じとり、それがいったい何者なのかわかっている。

　何度もノックが繰り返されていたが、ある時ふっ……とノックが止んだ。
　その代わりに扉の向こうから声が聞こえてきた。

「ん～……めんどくせぇですねぇ～。そこにいるのはわかってるっつ～のに。」

　　少し荒々しい声が扉の向こうから聞こえてきた次の瞬間……。

「開けてくれねぇなら、通・り・抜・け・れ・ば・問題ねぇです。」

「「「………！！」」」

　家の扉が開けられていないのに……ルア達の後ろに先ほどシーレーヌの町で見た天・使・が立っていた。

「なっ……結界を通りぬけてきたのかっ！？」

　ルアを抱えて後ろに飛び退いた由良は驚いた表情で言った。

「はぁ～……結界？あのヨワヨワな魔力の壁のこと？あんなのうちら天使には効かねぇです。」

「くっ……。」

「さて、単刀直入に言うから、その獣耳かっぽじってよ～く聞きやがれです。そこの男・の・子・を渡せ。」

　天使はルアの事を指差した。その天使の言葉に対して、由良は言う。

「男の子？はてはてなんのことやら、わからんのぉ～。この娘っ子はわしの可愛い娘じゃぞ？」

「あくまでもシラを貫き通すつもり……か。はぁ……。」

　ため息をはいて、シュン……と一瞬三人の前から姿を消した天使。
　そして次の瞬間、由良の脇腹に天使の細い足がめり込んでいた。

「ぐっ！！」

　その細い足から繰り出されたとは思えない威力で、由良は家の壁まで蹴り飛ばされぐったりと崩れ落ちた。

「っ！！このっ！！」

　真横に現れた天使に向かって、短刀を振りかざしたクロロ。

　しかし、短刀は天使に届く前にピタリと何か壁のようなものに受け止められる。

「うそっ……。」

「天使に下界の物が触れられるわけねぇです。天・命・に・逆・ら・う・愚・者・に・裁・き・を・。」

　裁きを……と天使が呟くと、クロロの短刀を受け止めていた見えない壁から、バチッ……と電気が走りクロロの体を突き抜けた。

「っ！！ぎにゃあぁぁぁぁっ！！」

　バチバチと電気に撃たれたクロロも力なく床に崩れ落ちる。あっさりと天使に倒されてしまった二人にルアが叫ぶ。

「お母さんっ！！クロロさんっ！！」

「あ～耳元でそんなに大声出すんじゃねぇですよ。さて、邪魔者もいなくなったし、とっとと連れて帰って…………あ？」

　天使はルアが自分の方を睨み付けて、ふるふると体を震わせていることに気が付いた。
　そんな彼の姿を見て、クスクスと笑いながら天使は言った。

「あっはははっ！！もしかして怒ってる？それとも怖がってる？それとも両方？その表情……ゾクゾクしてくるですねぇ～。」

　天使はしゃがんでルアと視線を合わせると、品定めするように彼の全身を舐め回すように、じっくりと眺めた後ポツリと呟いた。

「ここで味見しても……文句は言われねぇですよねぇ～。」

　ペロリと舌舐めずりをした天使。

　その視線の先にいたルアが、彼女に向かってポツリと呟く。

「…………さない。」

「あ？」

「絶対に……絶対に許さないっ！！メタモルフォーゼェッ！！」

　由良とクロロの事を傷付けられ、怒りにうち震えたルアは大声でメタモルフォーゼと口にした。

　すると、いつものように光が彼を包むのではなく……赤い……いや、紅い煙が彼の体をもくもくと包み込んだ。

「何が起こっていやがるんですか……これは？」

　ただならぬ気配に動くことができない天使。

　そして紅色の煙が霧散し始めると、中からは煙の色とは打って変わって純白の装束と、九尾の狐の紋様が入れられた、これまた純白の袴を身に纏ったルアが現れた。

　普段由良を思い浮かべて変身する時とは、また違う姿……金色の毛並みは透き通るような白になり、瞳の色は紅く、尻尾は最初から九本生え揃っている。

　そして変身を終えたルアは、目の前に天使がいるのにも関わらずスタスタと歩きだし、倒れている由良とクロロのもとに歩み寄った。

「…………。」

　二人に向かって手を翳すと、ルアの手からは金色の光が放たれ二人の事を包んだ。
　すると……。

「ん……うん？」

「う～ん……。」

　一瞬にして二人の傷が治り、由良は目を覚ました。そしてルアの姿を目にした由良は思わずポツリと呟いた。

「仙狐……様？」

「二人はここで待ってて、あいつはボクが倒してくる。」

「あっ！？」

　由良達の傷を治したルアは天使のもとに歩み寄った。

「へぇ？もしかして今まで姿を隠してたってやつですか？」

「お前には関係ない。ここでは戦いたくないから、場所を変えるよ。」

「そんなの関係な…………。」

　天使が言葉を言い終える前にルアと天使は姿を消した。