もんむすッ！めたもるふぉ～ぜ☆～世界に♂はボク一人！？～

第一章 転生そして成長

第52話 及第点

　
「さぁ、どこからでもかかってこい。妾はここからは動かぬからな。」

「ーーーっ、その余裕……どこまで続くか楽しみだなっ！！」

　ここでもやはり先に飛びかかっていったのはロレットだった。

「動かないと言ったな？ならば我の全力の一撃……喰らって貰おうか！！」

　全身のを流れる魔力、そして持ちうる力……全てを剣に乗せロレットは振り下ろした。

「龍神の一閃ドラグーンスラストッ！！」

「ほぉっ♪」

　技の名前を叫び、士気を高めロレットは剣を振り下ろす。それを見て東雲は楽しそうに……そして感心したように声を漏らした。

　ロレットの龍神の一閃が目の前に迫ってくると、東雲はクスリと笑いながら剣の峰に魔力を込めた御札を当てた。

「おおっ！？」

　すると、何かに流されるようにロレットの剣が東雲を避けて真横の地面へと突き刺さってしまった。
　突き刺さった地面には、まるで一匹の龍が地面を這ったようにビキビキと縦一本に大きな亀裂が入った。

「くくくくく、その技……コレットも使っていたな。尤も……まだ未完成のようだが。」

　東雲がロレットの技を考察していると、真横から風切り音とともに御札が飛んで来た。

「ロレット！！離れておれっ！！」

「くっ……。」

　ロレットは由良の声に従って、剣を引き抜き東雲と距離をとる。それと同時に、東雲の体にペタペタと何枚もの御札が張りつていく。

「おぉ、これは…………」

　東雲が体に張り付いていく御札を眺めていると、由良が人指し指と中指を二本ピンとたてて言葉を放った。

「爆雷符！！」

　すると、御札が光り始め次の瞬間には大爆発を起こしていた。

「お、おい由良。流石にこれはやりすぎではないか！？」

「東雲様にこの程度の威力では、傷ひとつつけられんじゃろう。その証拠にほれ、見てみよ。」

　そしてロレットが爆心地に目を向けると、そこには大きなクレーターができていた。
　しかし、東雲が立っていた場所だけは綺麗に一本の土の柱が形成されており、その上では無傷の東雲がくつくつと笑っていた。

「悪くない符の威力……だな。コレットの孫の力量も、まだまだ荒削りだが悪くない。」

　土の柱からピョンと飛び降りた東雲。その瞬間に土の柱は脆く崩れ去った。
　そして東雲は二人に歩み寄ると、一言……こう告げた。

「まぁ、2名共に及・第・点・と言ったところか。」

「これで及第点……か。」

　東雲のその言葉にロレットはガックリと肩を落とした。

「まぁ、そう肩を落とすな。及・第・点・というのはあくまでも天使に勝てる力を持っているのかどうか……という基準で決めている。」

　その言葉にロレットは表情を一気に明るくした。

「ほ、本当か！？」

「うむ、本当だ。」

　喜びを露にするロレットの横で、一人由良だけが不安そうな表情を浮かべていた。
　そして、由良は東雲にあることを問いかける。

「……東雲様。」

「ん？どうした由良？」

「天使には名・の・な・い・天・使・と名・の・あ・る・天・使・がいると聞き及んでおりますじゃ。」

「…………そうだな。確かにその通りだ。」

「わしらは……その、名のない天使に勝てるだけであって、名のある天使には勝てないのでは？」

　由良のその問いかけに、どう答えるべきか一瞬迷った東雲は少し間をおいてから口を開いた。

「そうだな……確かに今のお前達では名がある天使にはまず勝てないだろう。」

「…………。」

「しかし、それは妾とて同じ事。一・人・で・は・奴等に敵わん。」

「東雲様でも勝てぬのですか！？」

「あぁ、勝てぬ。なにせ妾はその名のある天使に殺・さ・れ・た・のだからな。」

　呆気なくそう話した東雲だったが、思わずその事実に由良とロレットの二人は黙りこんでしまう。

　しかし、そんな二人にクスリと笑いながら東雲は言った。

「だが、一人で勝てないのなら二人で……二人で勝てないのなら三人で挑めばよかろう？」

　更に続けて東雲は言った。

「なにも、我らがあやつらに合わせて戦う必要はない。勝てぬなら勝てるだけの力を合わせて挑めば良いのだ。」

　そう二人に説いた東雲は、呆気にとられている二人の顔を自身の尻尾でぺちぺちと叩く。

「ほれ、しゃんとせんか。お前らはルアを守りたいのだろう？♂を守ろうとするメスがそんな顔してどうする。ルアにまで不安を抱かせるつもりか？」

「「っ！！」」

　東雲のその言葉で二人は我に返ると、東雲にあるお願いを申し出た。

「もう一本我の剣を受けていただきたい！！お願いだ！！」

「わ、わしからもおねがいですじゃ！！」

「くくくくく、よかろう。お前ら二人が一歩も動けなくなるまで付き合ってやるわ。」

　士気を取り戻し、再び向かってくる二人に東雲は何か確信めいた笑みを浮かべていた。