もんむすッ!めたもるふぉ~ぜ☆~世界に♂はボク一人!?~

しゃむしぇる

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第一章 転生そして成長

第58話 大狸の真琴

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「も、もう無理でひゅ……ゆるひてくらはひ。きゅぅ…………。」

 無理矢理東雲に酒を飲まされてベロンベロンに酔っ払ってしまった化け狸は、許しを乞いながら意識を失った。

「なんだ?もう根をあげてしまったか……。まだ少し残っておるというのに、勿体無いやつだな。」

 瓢箪を揺らすとまだちゃぽちゃぽと水音がする。東雲はそんな瓢箪の口を咥えると、ゴクゴクと一気に飲み干した。

「ぷはっ!!うむうむ、これならばまぁ酒として飲めぬことはないな。だが、まだ弱い……。」

 地面でダウンしている化け狸の横に空になった瓢箪を置くと、東雲はグイッと口元を拭った。

「さ、邪魔者も消えたことだ。さっさと大狸に会いに行くぞ。」

 そして意気揚々と歩きだした東雲だったが、二、三歩進んだ辺りでピタリと歩みを止めた。

「…………。ほいやっ!!」

 すると、ポン!!と可愛らしい音をたてて東雲は狐の姿へと戻ってしまったのだ。

「あ、あれ?東雲さん?」

「今の妾は人の姿を保つのにも魔力がいる。大狸と会う前に魔力を消費したくないからな。」

 そう告げると、東雲はしゅるしゅるとルアの体を登り、定位置である頭の上に居座った。

「さぁ行けルア、大狸はこの先だっ!!」

「はぁ、わかりました。」

 東雲に促されるがまま、ルア達は先へと進む。

 登るにつれてだんだん霧が晴れ、山頂に佇む簡素な一軒家が見えてきた。

「東雲様、あそこが大狸の住処ですかな?」

「うむ、間違いない。妾が生きていた頃からまったく変わっていない。質素な家だ。」

 大狸の家に近付くと、東雲は再び人の姿へと化けた。そして家のドアを叩く。

 すると、中から声が聞こえてきた。

「んぁ~?誰や~?」

「くくくくく、久方ぶりに聞いたぞその独特の訛り……。なぁ大狸の真琴まことや。」

 東雲がそう口にした瞬間、家の中からガタン!!と大きな音が聞こえ、バタバタと階段を下ってくる音が聞こえた。

 そして、家の扉が内側から勢いよく開けられた。

「し、東雲はん!?」

「久方ぶりだな真琴。」

 くつくつと笑う東雲だったが、一方の真琴という大狸はうるうると目に涙を溜め、ガバッと東雲に抱きついた。

「うわぁぁぁぁん!!ほんまもんの東雲はんやぁ!!」

「こ、こら!!涙を擦り付けるでない!!妾の服が汚れるだろうが!!」

「ぐすっ、うぅぅぅ……そのいけずでつべたい口調、間違いないわぁ……。」

 やっとのことで、東雲から離れた真琴はぐしぐしと目にたまった涙を強引にぬぐう。すると、ようやくルアと由良の姿も目に入ったらしい。

「あんれ?そっちの二人は誰どすか?」

「修行中の仙狐の由良とその……娘のルアだ。」

「おぉ~!!東雲はんの後に仙狐になったんやね?やるやないの~。それにそっちの子もかわえぇねぇ~。お酒はまだあかんかな?あ……あては大狸の真琴っちゅうからよろしゅうなぁ~?」

「よろしく頼むのじゃ。」

「よ、よろしくお願いします……。」

 真琴は自己紹介を終えると、一行を中に入るように促してきた。

「積もる話もあるやろし、中で酒でも飲みながらどうでっしゃろ?」

「うむ、構わん。妾もちょうどお前の酒が飲みたくなっていたところだ。」

 そして、一方は真琴の家の中へと入り座敷に通されると……早速真琴は東雲と由良と自分の前に大きな盃を置いた。

「嬢ちゃんは~……お茶で堪忍しとくれやすな~。」

「あ、大丈夫です。ありがとうございます。」

 ルアには熱いお茶を注いだ真琴は、三人の前にどっかりと座ると早速今回ここに来た経緯を問いかけた。

「ほんで、なんぞぉしたんどす?」

「うむ、単刀直入に言うぞ。天使を倒すため我らに協力してほしい。」

「……天使、そういえばこの前一匹来はったらしいどすなぁ?」

「そいつは、そっちのルアが片付けた。」

「ほんまどすかぁ!?嬢ちゃん、ややこみたいな顔して結構やり手なんねぇ~。」

「あ、ありがとうございます……。(ホントは東雲さんが倒したけど、話合わせたほうがいいよね?)」 

「それで、どうだ?協力してくれるか?」

 改めて東雲がといかけると、真琴はう~んと悩む。

「確かにあてでも名のない天使ぐらいなら倒せるどす。ほんでも、名付きはかなんどすぇ?」

「名付きの天使は妾でも勝てん。だからこうして協力者を集めている。」

「なるほど……ほんならこうしましょ!!」

 真琴は戸棚から何本か一升瓶を取り出してきて一行の前に並べた。 

「あてが先につぶれたら東雲はん達に協力する。東雲はんが先に潰れたら……この話は無かったことに……。あてかて、危険なのは堪忍どす。かまへんね?東雲はん。」

「くくくくく、やはりそう来るか。良いだろう乗った。」

「ほんなら一杯目……。」

 とくとく……と良い音を奏でながら東雲の盃に酒がなみなみと注がれていく。そしていっぱいになったところで、今度は東雲が真琴に酒を注いだ。

「では、いただこう。味は落ちてないだろうな?」

「あてはそこまで鈍くさくないどす。なんしかまぁ、ほな……よばれまひょか?」

「くくくくく……。」

「んふふふふ……。」

 二人はそう不敵に笑うと、一気に盃の中に注がれていた酒を飲み干した。
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