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第一章 転生そして成長

第70話 オアシス?

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 しばらく蠍の魔物に乗って砂漠を駆け抜けていると、前を走るエレナが声を上げた。

「あ、見えてきましたよ!!」

「む、ようやくか。」

 蠍の尻尾を背もたれ代わりにしてくつろいでいたロレットはゆっくりと体を起こし前を向いた。すると、砂煙に紛れて入るが前方に小さな街並みが見え始めた。

「あんなところに街が……。あれがオアシス?」

「うむ、そのようじゃ。意外と小さく見えるのぉ。」

 そしてオアシスの近くでエレナは蠍の魔物を止めると、ルアたちへとあることを口にした。

「あたしはあの街には入れないので……この辺で。」

「ふむ、いろいろ事情がありそうだが……深くは聞かないでおこう。」

 ロレットたちは蠍の魔物から降りると、再び砂漠の砂に足をつけた。

「これはここまで案内をしてくれた礼だ。受け取ってくれ。」

 そう言うと、ロレットはジャラジャラと音がする袋をエレナの方へと放り投げた。
 エレナが不思議そうにその袋を開けると、彼女の表情が驚愕に染まる。

「なっ……こ、こんなにっ!?」

「お前はあのラミア達を養っているのだろう?それだけあれば一月は飯に困らないはずだ。危険な盗賊稼業はこれを機に辞めることだな。でなければ……いつか?」

「…………っ!!あ、ありがとう……ございました…………。」

 エレナはロレットに一言礼を言うと、そのお金が入った袋をきゅっと強く握りしめながら俯いてしまった。

 そんな彼女を背にルア達は、ようやくたどり着いたオアシスへと足を踏み入れた。
 
「ここがオアシスか……。」

「まぁ予想はしておったが、簡素な街じゃな。」

「だが、ここのどこかに夜の国へと繋がる場所があるのだろう?」

「そうらしい。……が、見た限りそれっぽいものは見当たらんな。」

 辺りを見渡してみるが、あるのは質素な宿屋や、飲食店、道具屋等々……必要最低限の建物しかない。後は街の中心に大きな井戸があるぐらいだ。

「こうなれば聞き込みでもしてみる他ないかの。」

「そうだな。では我はあそこの道具屋の店主にでも尋ねてこよう。」

「頼んだぞ。」

 そしてロレットは道具屋の中へと入っていった。

「じゃあボクはあそこのレストランかな?あそこで聞いてくるよ。」

「うむ、気を付けてな。ではわしはそこの宿屋の店主にでも聞いてこよう。」

 由良は近くにあった宿屋へと入っていった。そして残されたルアと東雲も一件だけある飲食店へと向かう。

「こ、こんにちは~…………ってあれっ!?」

 ルアが飲食店の扉を開けて中へと入ると、そこはもぬけの殻だった。人一人としていない。

 その様子を見て、頭の上にいる東雲がポツリと口を開いた。
 
「ふむ、やはりか……。」

「やはり……って何かわかったんですか?」

「この街に入った時から人の気配を感じぬ。恐らくだが……この街は何かを隠すために作られた偽造の街フェイクか。」

 ルアの頭の上で東雲はそう考察した。

「じゃ、じゃあどうするんですか?」

「どうするもこうするもないだろう?しらみ潰しに夜の国とやらへの入り口を探す他あるまい。兎に角今はこの店の中を物色だ。」

「わかりました。」

 東雲に言われた通りにルアは店の中を見て回るが、特にこれと言って夜の国へと繋がっていそうな物はない。

 そしてあらかた店内を全て見て回ると、東雲がまた口を開いた。

「どうやらこの店には本当に何もないようだな。」

「じゃあ……どうするんですか?」

「ひとまず由良達と合流だ。あやつらが何かを掴んでおるやもしれん。」

 そしてルアが外へと出てみると、ちょうど道具屋から出てきたロレットと鉢合わせた。

「あ、ロレットさん。」

「ルアか、早々に出てきたということは……そこの店ももぬけの殻か?」

「はい、何もありませんでした。」

「ロレットよ、そこの店も……と言ったな?ということはそこの道具屋もか?」

「うむ、看板があるだけの見せ掛けだ。」

「やはりか……となれば由良の方も恐らくは…………。」

 と、そんなことを話していると由良が宿屋から出てきた。

「む?わしが最後か。」

「中の様子はどうだった?」

「もぬけの殻じゃ。ベッドがあるだけで他には何もない。」

 由良は宿屋の中の様子を報告する。そして全ての報告を聞いて、東雲はある場所に目をつけた。

「となれば……あと怪しい場所と言えば、あの井戸のみか。」

 この街に残っているのは後は中心に堂々と設置された大きな井戸だ。

 一行はその井戸に近づくと、中を覗きこんだ……しかし、井戸の底は見えず、ただただ深い……ということしかわからなかった。

「かなり深いな……。」

「まさかこの下に夜の国があるのではなかろうな?落ちたらひとたまりもなさそうじゃが?」

 そうロレットと由良の二人は話す。

 そんな中、東雲はルアの頭の上からある場所をじっと眺めていた。

「………………ルアよ。」

「はい?」

「そこの上から3番目に積んである石に触ってみろ。」

「上から3番目?ここ……ですか?」

 そしてルアが東雲に言われた石に触れると、一行の足元に巨大な魔法陣が現れ、そこから溢れた光が一行を包み込んだ。
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