166 / 249
第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第164話 青は……①
しおりを挟む
ぐったりとしたクロロを木に預け、ルアはまた歩き出す。
「これで残ってるのはお母さんと東雲さん……。どこにいるんだろう……。」
「わしを探しておるのかのル~ア~や?」
「えっ!?」
突然ルアは後ろから優しく由良に抱き締められた。
「むっふっふ♪あぁ……愛しい……愛しいのぉ~。」
由良はすりすりとルアの顔に自分の顔を擦り付ける。
「お、お母さん……。」
「顔を赤くしおって、なぁに恥ずかしがることは無いのじゃぞ?わしらは親子なのじゃからな。」
恥ずかしそうにするルアに更に心を揺さぶられたのか、由良はニヤリと笑う。その瞳の奥にはどこか嗜虐的なものが見え隠れしているようだ。
そんな時……。
「くくくくく、普通の母子ならばそんなに過剰な接触はせぬのではないか?なぁ由良よ。」
「……!!」
ゆらりと二人の前に東雲が姿を現した。
「東雲さま……母が子に愛を注ぐことは当然じゃとわしは思いますのじゃ。」
「そうか、だが由良よ。親という文字は……木の上に立って見る。と書く……子の情事にまで首を突っ込むのが親とは思えんぞ?」
「東雲さまは子を持ったことがない故そう思うのですじゃ。わしは本当の親というのは子側に寄り添う者だと思っております。」
東雲と由良の間で魔力がバチバチとぶつかり合い、その場にただならない雰囲気が漂い始めた。
「くくくくく、言うようになったなぁ……ん?由良よ。」
「お言葉ですが東雲さま。今のわしは誰にも負ける気がしないのですじゃ。」
ルアを置いてどんどんヒートアップしていく二人。
「面白い……ならばそれが口だけではないことを見せてもらおうか?」
「もちろんそのつもりですじゃ!!」
パンと音を立てて由良が両の手のひらを合わせると、彼女の尻尾が九本にまで増え、足元に五芒星が描かれた魔法陣が現れる。
ルアはその魔法陣に見覚えがあった。
(あ、あれって……もしかして……。)
そしてその魔法陣を発動させるために由良がポツリと呟く。
「招来禍津火ノ神。」
「ほぅ?」
由良が使った魔法は、初めて天使を倒したときにルアが用いたものだった。しかし、今回のそれは少し違うようで、魔法陣から黒い魔力が溢れだしたかと思うと、由良の背後に鎖を咥えた黒く大きな狐が現れる。
それを見て東雲はクスリと笑う。
「くくくくく、先の言葉に偽りはないようだな。いつの間に禍津火ノ神を使えるようになった?」
「これも日々の修練の成果ですじゃ。そしてこれが……我が子を想う母の力ですじゃあッ!!」
由良はそう叫ぶと、背後に顕現した禍津火ノ神を体の中に取り込んでいく。すると、由良の体毛に変化が現れ、金色から白色に……そして禍津火ノ神を全て取り込む頃には黒く……染まっていた。
「その姿……ずいぶん禍々しくなったな。魔力も桁違いに上がった。」
純白の毛並みの東雲とは対照的に、漆黒の毛並みに変わった由良の姿を見て東雲から笑みが消えた。
「以前、禍津火を取り込んだ時は膨大な魔力に体が犯され諸刃の剣も良いところだったが……どうやら完全に禍津火の持つ暴走する魔力を制御したようだな由良よ。」
「ついこの前まではできなかったものが、今はなんでも出来るような気がするのですじゃ。」
「ほぅ?」
由良の言葉に東雲は興味深そうに聞き入った。
「先にあの女神が言っていたことと繋がりがありそうだ。欲望の解放……なかなかどうして興味深い。」
「東雲さま、この勝負……わしが勝たせていただきます!!」
「くくくくく、来い由良。」
再び笑みを見せた東雲は由良を挑発するように手をクイックイッ……と動かした。
その次の瞬間、東雲の足元から何本もの鎖が飛び出し彼女の体に巻き付こうとする。
「おぉっ……流石の妾もこれには捕まりたくないな。」
トン……と軽く地面を蹴り東雲は鎖を避けるために空中に飛び上がった。
「逃がさぬッ!!」
由良が魔力を手に纏わせ、東雲へと向かって引っ掻くような動作をする。
「むっ……。」
何かを感じとり咄嗟に東雲は自分の体を濃い魔力で覆った。すると、次の瞬間彼女を覆っていた魔力を何かが深く抉る。そしてそれは周りの木々にも影響を及ぼしていた。
「妾の全力の守りを貫通するか。凄まじい魔力だな。」
そうポツリと呟いた東雲の手からは僅かに出血が見られ、ポタポタと地面に鮮血が滴り落ちていた。
「だが、まだまだこれは序の口……だろう?」
ニヤリと笑い東雲は傷口を魔法であっという間に塞いでしまう。
「もちろん……ここからが本番ですじゃ。」
由良は両手を地面につけると、魔力を込めながらポツリと呟いた。
「獄門……解。」
「これで残ってるのはお母さんと東雲さん……。どこにいるんだろう……。」
「わしを探しておるのかのル~ア~や?」
「えっ!?」
突然ルアは後ろから優しく由良に抱き締められた。
「むっふっふ♪あぁ……愛しい……愛しいのぉ~。」
由良はすりすりとルアの顔に自分の顔を擦り付ける。
「お、お母さん……。」
「顔を赤くしおって、なぁに恥ずかしがることは無いのじゃぞ?わしらは親子なのじゃからな。」
恥ずかしそうにするルアに更に心を揺さぶられたのか、由良はニヤリと笑う。その瞳の奥にはどこか嗜虐的なものが見え隠れしているようだ。
そんな時……。
「くくくくく、普通の母子ならばそんなに過剰な接触はせぬのではないか?なぁ由良よ。」
「……!!」
ゆらりと二人の前に東雲が姿を現した。
「東雲さま……母が子に愛を注ぐことは当然じゃとわしは思いますのじゃ。」
「そうか、だが由良よ。親という文字は……木の上に立って見る。と書く……子の情事にまで首を突っ込むのが親とは思えんぞ?」
「東雲さまは子を持ったことがない故そう思うのですじゃ。わしは本当の親というのは子側に寄り添う者だと思っております。」
東雲と由良の間で魔力がバチバチとぶつかり合い、その場にただならない雰囲気が漂い始めた。
「くくくくく、言うようになったなぁ……ん?由良よ。」
「お言葉ですが東雲さま。今のわしは誰にも負ける気がしないのですじゃ。」
ルアを置いてどんどんヒートアップしていく二人。
「面白い……ならばそれが口だけではないことを見せてもらおうか?」
「もちろんそのつもりですじゃ!!」
パンと音を立てて由良が両の手のひらを合わせると、彼女の尻尾が九本にまで増え、足元に五芒星が描かれた魔法陣が現れる。
ルアはその魔法陣に見覚えがあった。
(あ、あれって……もしかして……。)
そしてその魔法陣を発動させるために由良がポツリと呟く。
「招来禍津火ノ神。」
「ほぅ?」
由良が使った魔法は、初めて天使を倒したときにルアが用いたものだった。しかし、今回のそれは少し違うようで、魔法陣から黒い魔力が溢れだしたかと思うと、由良の背後に鎖を咥えた黒く大きな狐が現れる。
それを見て東雲はクスリと笑う。
「くくくくく、先の言葉に偽りはないようだな。いつの間に禍津火ノ神を使えるようになった?」
「これも日々の修練の成果ですじゃ。そしてこれが……我が子を想う母の力ですじゃあッ!!」
由良はそう叫ぶと、背後に顕現した禍津火ノ神を体の中に取り込んでいく。すると、由良の体毛に変化が現れ、金色から白色に……そして禍津火ノ神を全て取り込む頃には黒く……染まっていた。
「その姿……ずいぶん禍々しくなったな。魔力も桁違いに上がった。」
純白の毛並みの東雲とは対照的に、漆黒の毛並みに変わった由良の姿を見て東雲から笑みが消えた。
「以前、禍津火を取り込んだ時は膨大な魔力に体が犯され諸刃の剣も良いところだったが……どうやら完全に禍津火の持つ暴走する魔力を制御したようだな由良よ。」
「ついこの前まではできなかったものが、今はなんでも出来るような気がするのですじゃ。」
「ほぅ?」
由良の言葉に東雲は興味深そうに聞き入った。
「先にあの女神が言っていたことと繋がりがありそうだ。欲望の解放……なかなかどうして興味深い。」
「東雲さま、この勝負……わしが勝たせていただきます!!」
「くくくくく、来い由良。」
再び笑みを見せた東雲は由良を挑発するように手をクイックイッ……と動かした。
その次の瞬間、東雲の足元から何本もの鎖が飛び出し彼女の体に巻き付こうとする。
「おぉっ……流石の妾もこれには捕まりたくないな。」
トン……と軽く地面を蹴り東雲は鎖を避けるために空中に飛び上がった。
「逃がさぬッ!!」
由良が魔力を手に纏わせ、東雲へと向かって引っ掻くような動作をする。
「むっ……。」
何かを感じとり咄嗟に東雲は自分の体を濃い魔力で覆った。すると、次の瞬間彼女を覆っていた魔力を何かが深く抉る。そしてそれは周りの木々にも影響を及ぼしていた。
「妾の全力の守りを貫通するか。凄まじい魔力だな。」
そうポツリと呟いた東雲の手からは僅かに出血が見られ、ポタポタと地面に鮮血が滴り落ちていた。
「だが、まだまだこれは序の口……だろう?」
ニヤリと笑い東雲は傷口を魔法であっという間に塞いでしまう。
「もちろん……ここからが本番ですじゃ。」
由良は両手を地面につけると、魔力を込めながらポツリと呟いた。
「獄門……解。」
0
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる