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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第214話 由良の薬を求めて
しおりを挟む移動魔法を使ったルアはとある豊かな森の中に移動していた。柔らかい日差しが木々の間から射し込み森の中を明るく照らしていた。
「えっと、ここで合ってるのかな。もしかしてちょっと離れた場所に移動しちゃったかも?」
きょろきょろと辺りを見渡すルアだが、彼が目的にしたとある場所は近くにはないようだ。
「う~んどこにあるんだろ、地図で見たときはこの辺だったんだけど……。」
ルアはバッグから地図を取り出して確認するが、目的の場所は確かにこの森の中にあるようだ。
「地道に探してくしか無いかなぁ。」
地図をたたんだルアは森の中を歩きだす。
そしてふと森の中を歩いていたルアはこんなことを感じた。
「なんかここにいるだけで癒されるような感じがする。マイナスイオン?みたいなやつがあるのかな。」
彼が感じたのは、森の中の澄み切った空気を吸って体の中から浄化されていくような感覚。汚染されていないきれいな空気をたっぷり吸ったから感じたのだろう。
綺麗な空気を堪能しながら森の中を歩いていたルアだったが、彼はすっかり忘れていた。この世界には魔物というものが蔓延っていることを。そしてそれはいくら澄み切った綺麗な森の中にでも存在しているということを彼は知らなかった。
故に隙が生まれた。
「グルルルァァァァァっ!!」
「ふえっ?」
気が付いたときにはもうどうしようもないほど近くまで魔物は接近していた。それはもう、ルアの細い首元に鋭い牙を突き立てようとしていた。
その時……。
「ふっ!!」
「ギャン!?」
風切り音とともにどこからか弓矢が飛んできてルアに襲い掛かっていた魔物を打ち抜いた。
「キミ、大丈夫?」
「あ、は、はい。」
「そこにいて、私の後ろから離れちゃダメだからね。」
ルアをかばうように現れた女性は矢をつがえ、再び魔物の方に視線を向けると、ルアを狙っていたのかぞろぞろと魔物の群れが姿を現した。
「1、2、3………全部で5匹ね。」
彼女はつがえた矢に魔力を込めると、魔物へと向かって打ち放った。すると放たれた矢は途中で5本に別れ的確に魔物の急所の首元に突き刺さった。
「カ……ハ……。」
そしてバタバタと魔物は地に倒れていく。
「ふぅ、やっぱり最近は魔物の血の気が多いわね。」
額を流れる汗をぬぐうと、彼女はルアに向き直った。
「キミ、こんなとこを一人で歩いてちゃダメでしょ?目立った武装もしてないみたいだし……。お母さんはどこ?」
「あ、えと……じつはお母さんを治す薬が欲しくて、ここを探してたんです。」
そう言ってルアは彼女に地図を見せた。すると……。
「薬を探しに来たってことは、目的はもしかして……。あ、やっぱり。私たちの里ね。」
彼女は大きく頷くと、ルアの手を取った。
「観光客ってなら話は別だし、何よりお母さんのお薬を探しに来るようないい子は、私が案内してあげる。」
「あ、ありがとうございます!!」
「うんうん、それじゃあ私にしっかり着いてくるのよ?」
そしてルアは彼女に道案内をしてもらうことになった。いつしか彼の不安は吹き飛び、安心感が心を埋め尽くしていた。
「そういえばキミのお母さんは病気なの?」
「えっと、病気というか体を壊しちゃったみたいで……自由に動けなくなっちゃったんです。」
「なるほどね。結構複雑なんだ、でも大丈夫、私たちの里には薬剤師がいっぱいいるからきっとお母さんに合う薬が見つかるはずよ。」
そんな会話をしていると、突然彼女はぴたりと立ち止まった。
「ちょっと待っててね~。」
そして彼女は胸から提げていたペンダントを宙に掲げたすると、目の前の空間にぐにゃりと歪みができた。歪みの奥には集落のようなものが見える。
「来客があるってとき以外はこうやって魔法で集落そのものを隠してるの。ホントはこれがないと入れないんだから。さ、入って入って。」
そしてルアは導かれるがまま彼女たちの集落へ、由良の薬を探すために足を踏み入れた。
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