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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第220話 由良復活
しおりを挟むエルフの里で薬を入手したルアは、急いで由良のもとへと向かう。
「お母さん、ただいまっ!!」
「おぉ、ルアや帰ったのかの?どこぞへと行っていたようじゃ行っていたようじゃが……どこへ行っておったのじゃ?」
「エルフの里に行ってたんだ。」
「なんと、エルフの里じゃと!?」
「うん、そこにいる薬師の人にお母さんの薬を作ってもらったんだよ。」
そう説明したルアは、作ってもらった薬を由良に手渡した。
「はいっこれね。」
「ほほぉ……エルフの作る薬はわしも飲むのは初めてじゃ。」
薬を受け取った由良は、キュポンと蓋を開けると一思いにその薬を飲み干した。
すると、由良の顔が真っ青に青ざめる。
「~~~ッ!?んぐぐぐっ……。」
「あ、あれ?お、お母さん大丈夫?」
ふるふると体を震わせながらなんとかそれを飲み干した由良。苦しそうに飲み干した後、彼女はポツリと言った。
「に、苦すぎるのじゃ……。良薬は口に苦しとは言うものの、ここまで苦い薬は初めてじゃ。」
「ご、ごめんね……。」
「良いのじゃ。ルアがせっかくエルフの里まで赴いて持ってきてくれた薬じゃ。如何に苦くとも飲み干して見せるぞ。」
強がって歪な笑みを浮かべた由良だったが、彼女の体にすぐに変化が現れ始めた。
「お?おぉっ?」
由良が飲んだ薬はすぐに体内にある魔力の源泉に作用し、嫉妬の暴走で傷付いた魔力の器を修復し始めたのだ。
乾きに乾いた魔力の器は、新たな魔力を欲し、周囲の空気中に漂う微細な魔力を集め始める。
そして由良の胸の中心に集まった膨大な魔力は、ゆっくりと……彼女の中へと吸収されていく。
「ッ!!」
吸い込むように膨大な魔力を吸収した由良がカッ……と目を見開くと、彼女を中心として辺りに巨大な魔力の衝撃波が広がった。
「わぁっ!?」
その衝撃の強さに、ルアは体を吹き飛ばされてしまうが、フワリとルアの体が浮いた瞬間……彼は由良に抱き止められていた。
「お、お母さん?」
「心配をかけたの、ルアや。お陰でもう大丈夫じゃあ。」
優しく語りかけながら、由良はルアのことをいとおしそうにきゅっと抱き締める。
そして今の衝撃波を感じとり、ロレットがいち速く部屋へと駆けつけてきた。
「な、何事だ!?……って由良?」
「ロレット、すまなかったの。心配をかけてしまったようじゃ。」
「も、もう動いても大丈夫なのか?」
「うむ、ルアが薬を持ってきてくれたお陰での。この通り……万全じゃ。以前よりも魔力の量も遥かに上がっておる。」
呆気にとられているロレットに、由良はゆっくりと近付くと悪戯に笑いながら問いかける。
「むっふっふ、お主……わしが寝ておる間も欠かさず鍛錬を続けたのじゃろ?病み上がりのわしを相手取る程度わけないはずじゃなぁ?」
「フフフ、病み上がりの者がずいぶん大口を叩くな?以前の我と思うなよ?」
「望むところじゃ。」
ロレットは由良が復活したことで、嬉しさを浮かべる反面、挑発されたことで獰猛に笑いながら由良からの挑戦を受け入れた。
「お、お母さん!!まだ休んでた方が……。」
心配したルアがそう声をかけると、由良はそっと彼のことを抱き締めて声をかける。
「大丈夫じゃルア。わしはもう完全に回復した。もうおぬしに心配をかけるようなことはせぬ。約束するのじゃ。」
そしてポンポンとルアの頭を撫でると、由良はニコリと笑いながら言った。
「では行ってくるのじゃ。」
「……うん、気を付けてね。」
そして由良のことを見送ったルア。一人部屋の中でもやもやする彼だったが、ふと頭に重さを感じた。
「やはり狸寝入りだったか。」
「ふえっ?東雲さん!?」
ルアの頭の上にはいつの間にか狐の姿の東雲が居座っていた。
「し、知ってたんですか?」
「当たり前だ。妾を謀るなど1000年早いわ。」
そうくつくつと東雲は笑う。そしてルアの頭をポンポンと肉球のついた前足で叩いた。
「そんなに心配せずともよい。由良の魔力は以前よりも遥かに強くなっている。そして心もな。まぁ何が言いたいかと言えば、前のように暴走するようなことはないということだ。妾が断言しよう。」
そう告げると東雲はルアの頭からピョンと飛び降り、人の姿へと姿を変えた。
そしてルアの手をとる。
「さて、由良のお守りも終わったことだ。今度はお前が我に付き合ってもらうぞ?」
ニヤリと笑ってそう告げた東雲はルアのことを連れて部屋を出るのだった。
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