たいして好みでは無い、と言われたので婚約解消した令嬢は、伯爵様と交渉する。

らりささ

文字の大きさ
85 / 103
6.大精霊編

11.暴走

しおりを挟む
アスランの気持ちは、セラにはお見通しだった。
更に、セラがルシンダを狙っている。
その事実が、アスランの行動を暴走させたのは間違いない。

きっかけは、ちょっとしたことだった。
ルシンダがクルーズに頼まれ、騎士団の本部に書類を持っていった時だった。
書類を渡そうにも、誰も職員がいない。
困っているルシンダにアスランが声をかけた。
「預かっておきましょうか?」
「いいんですか?ありがとうございます!」
ルシンダはホッとした顔をした。
「魔術部には慣れましたか?仕事はどう?」
アスランは、もう少し彼女と話をしたかった。ただ、他愛も無い話をするだけのつもりだった。

しかし、ルシンダからはセラの話ばかり出てくる。
「セラさんが、色々教えてくださるので、勉強になっています。あ、こないだも…」
ずっとこの調子だったので、アスランは流石にイラッとしてきた。

「良かったら、僕の執務室でお茶でも飲みます?」
アスランはさらっと聞いてみた。

「は、はい!」
もちろん、アスランの願望を思わず口にしたに過ぎなかったのだが、まさか、ルシンダが二つ返事で了承するなどと、アスランも思ってはいなかった。
「え?いいの?」
「あ、ダメでしたか…そうですよね、社交辞令ですよね。すいません。私、そういうの良く分かってなくて、失礼しました」
そう言って去ろうとするルシンダを引き留め、アスランは自身の執務室にルシンダを招いた。

アスランがルシンダを見つめる瞳も、ルシンダがアスランを見て赤く染めた頬も、お互いがお互いに同じ事を考えているということが、ヒシヒシと伝わってくるようであった。

その日、初めてアスランとルシンダは口吻をした。

止まらなかった。

それはもう、何度も、何度も。

しかし、アスランはそれ以上のことはしなかった。

いや、出来なかったのだ。
ルシンダのことが眩しすぎて、これまでの女性と同じようには扱えなかったのだ。

ルシンダには、絶対に誰にも言えない秘密ができてしまった。
ライトの顔も、セラの顔もその日はまともに見ることが出来なかった。

それでも、また後日、ルシンダはアスランと密かに逢った。

逢いたかった。

二人の逢い引きは、何度も続いた。

アスランもルシンダも、もう誰の気持ちも顧みることができなくなっていた。

ただ、アスランとルシンダの世界に消えてなくなりたかった。

ルシンダは、ただアスランを好きでいたかった。

それだけのために、ライトに離縁を申込むつもりだった。
勿論、アスランには言っていない。
勝手にアスランを想い、行動するだけなのだから、彼に迷惑をかけてはならないと思っていた。

「どうした?大事な話ってなに?」
ライトは、上着を脱ぎながら言った。まるで警戒心がない。

「私と、離縁してください!」
ルシンダは真っ直ぐにライトの目を見て言った。

ライトは、全く予期していなかった上に、その潔さに絶句していた。

暫く、沈黙が流れたが、ようやくライトが口を開いた。

「なんで…?なんて聞かないぞ、俺は。分かってたからな…ルーシが俺のこと何とも思っていないってことくらい、初めから。だから、どんな理由であれ、俺は、絶対に、離縁などには応じない…!」
ライトの目は、恐ろしいほど据わっていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます

さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。 望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。 「契約でいい。君を妻として迎える」 そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。 けれど、彼は噂とはまるで違っていた。 政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。 「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」 契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。 陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。 これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。 指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

処理中です...