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23話 二人だけ
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音楽室は、秋の冷えを閉じ込めていた。
窓の外で風が葉を鳴らし、
季節外れの冬の匂いがそっと忍び込んでくる。
「千秋。まずは聴いて」
雪乃は鍵盤へ両手をそっと置き、
一切の迷いなく弾き始めた。
一音――
凍る空気を切り裂く鋭い孤独。
二音、三音――
触れた温度が砕けてしまうような儚さ。
それは吐息すら凍りつく季節。
泣くことも許されない冬の哀しみ。
冷たい風の中で、
一人きりで立ち尽くしていた時間――
千秋は胸を押さえる。
雪乃が歩いてきた道を
音がありありと語っていた。
最後の音が、深い深い場所へ沈む。
――ドォン……
雪乃は指を離し、
鍵盤の余韻が消えるのを静かに待った。
「これが前半部分。
“冬の哀しみ”。
……リナと一緒に作った曲」
千秋の胸に
鋭いトゲが刺さった。
「リナさんと……一緒に……?」
「ええ。
あの子と……色々あって。
私が凍ってしまわないように、
音で支えてくれたの」
その微笑みはどこか遠く、
千秋を見ていない。
雪乃の隣に立っていたのは
千秋ではなく――リナだった。
喉がきゅっと締めつけられる。
そこにいたのは
自分ではなく、リナ。
千秋は唇を噛む。
嫉妬は、ほんの一滴で胸いっぱいに広がる。
「……お姉様。
その……リナさんとは……」
言葉にした瞬間、
自分の声が震えていたことに気づく。
雪乃はそんな千秋の心のざわめきを
まるで全部見透かしていた。
「大丈夫。
今、隣にいるのは……千秋だよ」
その一言だけで、
涙が零れそうになる。
雪乃の手が
優しく千秋の手を包む。
温度が伝わる。
過去を溶かすほどの温度。
「前半はリナが一緒に作ってくれた。
……でもね、後半は――」
雪乃は真っ直ぐ千秋を見つめた。
「私の未来に、
寄り添ってくれる音を……
あなたに任せたい」
千秋の胸が大きく跳ねる。
嫉妬で揺れた心は、
今度は恋でいっぱいに満たされていく。
「お姉様……
わ、わたくしにしか……できないのですか……?」
雪乃は少し照れたように笑う。
「そうよ。あなたにしかできないの。
だって――私は、あなたの音が好きだから」
「……ぁ……っ……」
千秋の頬が一瞬で紅く染まる。
視界が滲み、胸がぎゅっと熱を持つ。
「でも、無理に終わらせなくていい。
ただ……一人にしないで。
あたたかい音でそばにいて?」
千秋は震えながら雪乃の手を握った。
弱いけど、絶対に離さない強さで。
「わたくしの音で……
あなたの未来を……抱きしめます……!」
雪乃はその言葉を
まるで宝物みたいに受け取った。
「ありがとう、千秋。
本当に……救われるよ」
鍵盤の上で重なった手が
まだ言葉にも楽譜にもなっていない
新しい旋律を生み始める。
凍てついた過去の冬に――
秋の夜、やわらかな未来の灯がともった。
それは二人にしか奏でられない
恋と音のはじまりだった。
窓の外で風が葉を鳴らし、
季節外れの冬の匂いがそっと忍び込んでくる。
「千秋。まずは聴いて」
雪乃は鍵盤へ両手をそっと置き、
一切の迷いなく弾き始めた。
一音――
凍る空気を切り裂く鋭い孤独。
二音、三音――
触れた温度が砕けてしまうような儚さ。
それは吐息すら凍りつく季節。
泣くことも許されない冬の哀しみ。
冷たい風の中で、
一人きりで立ち尽くしていた時間――
千秋は胸を押さえる。
雪乃が歩いてきた道を
音がありありと語っていた。
最後の音が、深い深い場所へ沈む。
――ドォン……
雪乃は指を離し、
鍵盤の余韻が消えるのを静かに待った。
「これが前半部分。
“冬の哀しみ”。
……リナと一緒に作った曲」
千秋の胸に
鋭いトゲが刺さった。
「リナさんと……一緒に……?」
「ええ。
あの子と……色々あって。
私が凍ってしまわないように、
音で支えてくれたの」
その微笑みはどこか遠く、
千秋を見ていない。
雪乃の隣に立っていたのは
千秋ではなく――リナだった。
喉がきゅっと締めつけられる。
そこにいたのは
自分ではなく、リナ。
千秋は唇を噛む。
嫉妬は、ほんの一滴で胸いっぱいに広がる。
「……お姉様。
その……リナさんとは……」
言葉にした瞬間、
自分の声が震えていたことに気づく。
雪乃はそんな千秋の心のざわめきを
まるで全部見透かしていた。
「大丈夫。
今、隣にいるのは……千秋だよ」
その一言だけで、
涙が零れそうになる。
雪乃の手が
優しく千秋の手を包む。
温度が伝わる。
過去を溶かすほどの温度。
「前半はリナが一緒に作ってくれた。
……でもね、後半は――」
雪乃は真っ直ぐ千秋を見つめた。
「私の未来に、
寄り添ってくれる音を……
あなたに任せたい」
千秋の胸が大きく跳ねる。
嫉妬で揺れた心は、
今度は恋でいっぱいに満たされていく。
「お姉様……
わ、わたくしにしか……できないのですか……?」
雪乃は少し照れたように笑う。
「そうよ。あなたにしかできないの。
だって――私は、あなたの音が好きだから」
「……ぁ……っ……」
千秋の頬が一瞬で紅く染まる。
視界が滲み、胸がぎゅっと熱を持つ。
「でも、無理に終わらせなくていい。
ただ……一人にしないで。
あたたかい音でそばにいて?」
千秋は震えながら雪乃の手を握った。
弱いけど、絶対に離さない強さで。
「わたくしの音で……
あなたの未来を……抱きしめます……!」
雪乃はその言葉を
まるで宝物みたいに受け取った。
「ありがとう、千秋。
本当に……救われるよ」
鍵盤の上で重なった手が
まだ言葉にも楽譜にもなっていない
新しい旋律を生み始める。
凍てついた過去の冬に――
秋の夜、やわらかな未来の灯がともった。
それは二人にしか奏でられない
恋と音のはじまりだった。
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