沈黙のういザード 

豚さん

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9話 プレゼント探し①

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 大きな商業施設のガラスに、
 雲の切れ間から差した光が反射していた。

 憂はダウンコートの袖をぎゅっと握りしめ、
 足を止めたまま視線を落とす。

「……葉月姉。
 どれを見ても、千秋に似合う気がしないよ……」

「はいはい~。焦っちゃいけませんぞ~」

 葉月はわざとらしく腕を組み、にっこり笑う。

「大切なひとへのプレゼントはね、
 迷って当然! むしろ迷わないなんて愛が薄い証拠ですっ」

「愛って言わないで!? 恥ずかしい……!」

「恥ずかしがるってことは~? え?」

「お姉ちゃんストップ!」

 やいのやいのと軽口を交わしながら、
 二人はエスカレーターを上がる。

 アクセサリー、服飾、雑貨……
 光の粒がきらきら視界に踊った。

「でもさ……千秋って全部似合っちゃうじゃん。
 逆に“特別”が分かんなくて」

「ふっふっふ。そこなのよ、妹よ」

 葉月は顎に指を当て、キラーンとウインクする。

「“似合うもの”じゃなくて、
 “憂ちゃんがあげたいもの”を選びなさいな」

「……わたしが、あげたいもの……」

「そう、プレゼントってね、
 贈るひとの気持ちがそのまんま形になるの」

 憂は胸元のネックレスを握りしめる。
 視線はガラスケースの中へ。



 アクセサリーショップ。
 ショーケースで揺れる小さな宝石たち。

 雑貨店。
 柔らかな手触りの冬小物。

 香水店。
 甘い香りの波。

 けれど憂は——
 何を手にしても、すぐに戻す。

「……違う……
 これじゃない……」

「うんうん。
 一つ一つに千秋ちゃんを重ねてるんでしょ~?」

「……喜んでほしいし……
 驚いてほしいし……
 ちゃんと“伝わる”やつがいいの……」

 言い終えた瞬間、
 頬がぽっと赤く染まった。

 葉月はすかさず腕を組み、ドヤァ!

「ほ~ら~! 愛じゃ~ん♪」

「今その単語ほんとやめて!!」

「むふふ♪」



「はぁぁぁぁぁぁぁ……」

「はい、ため息11回!
 あと39回で今日のノルマ達成~」

「ノルマなんてないから!!」

 ショッピングモールの冬物コーナー。
 店内の明るいBGMとは裏腹に、憂は曇天。

「ねぇ葉月姉……
 千秋って、どういうの好きだと思う……?」

「それはもう、
 上質で、高級感あって、センス抜群で、
 ロマンをちょびっと隠し持つツンデレお嬢様デザイン!」

「条件てんこ盛りすぎぃ!」

「つまりだね、
 “気持ちがちゃんとこもってるもの”ってことよ」

 葉月がふっと声を落とす。

「想像してみ? 憂ちゃん」

「え……?」

「千秋ちゃんが、それを身につけたときの顔」

 息が、止まる。

 脳裏に浮かぶ——
 涼やかで誇らしい横顔。
 それを照らす、真っ直ぐな瞳。

 その瞬間——

 憂の視線が、ケースの一つに
 ぴたり、と吸い寄せられた。

(これだ……)

 光が、未来を示すみたいに
 ただそこで静かに輝いていた。
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