灰色の王子様こそ泥棒娘を守りたいと願っている!

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ことはじめ

違和感仕事しろ!!

 銃撃に驚く俺とイルヴァは立ち上がっており、俺はそんな銃撃が信じられない気持ちのまま、ふらりと俺に倒れて来た体を支えた。

 俺の身代わりに銃弾を受けたらしき、運が悪い女性の身体を受け止めたのだ。
 神様の贈り物のように、ふわっと俺の腕に納まるように落ちてきた彼女を!

 金色の髪にヘイゼルの瞳をした、美人と名高いエディット・ベーベルシュタム伯爵令嬢がどうしてこんなことになっているのか考えも及ばないが、俺はとにかくも肩を真っ赤に染めた彼女を抱きかかえながら周囲に叫んでいた。
 本気で違和感ばかりだが、とにかく誰か他の手が無ければ!

「医者を!医者を呼んでくれ!」

 しかし貴族の子弟という安寧な世界しか知らない者達は、俺の言葉に従うどころかパニックに陥り騒ぎ立てているだけだ。
 けれども俺の視界の隅では、ああ、一番に俺にしがみ付いて欲しいイルヴァ様が、カフェの使用人や学園の警備兵に指図をして立ち動いてくれていた。
 俺は彼女の姿に安心しながらも、ちくしょうとも思っていた。
 だからか、数分前の彼女の台詞を思い出してしまっていたのだ。

――私は恋が出来ないのに、あなたは好きなように恋をして。

 え?俺が誰かに恋をしているって考えた?
 どうしてこんな状況でそんなことを俺が考え出したのか不思議だが、俺は愛しい婚約者の姿から目を離せなくなっていた。

「あ、ああ。これ、は、あのお方の仕業ですわ。あなた様を奪われまいと、ええ、あの方が画策したに違いないのです。」

「俺を奪われまいとする……あの方?」

 俺の腕の中の令嬢が、俺の注意をイルヴァから剥がしてしまう程の、俺の希望を読んだような言葉をつぶやき出した。
 イルヴァが俺を奪われたくないものと思っている?
 俺の視線はイルヴァから離れて、腕の中の令嬢へと移った。
 もっと自分の自信につながる言葉が欲しいと。
 婚約破棄をされた俺は、今は崖っぷちで策も何もない間抜け男なんだから、と。

 緑色にも金色にも輝く猫の目を持った美女はいかにも辛そうな表情を見せながら、彼女に対して何も微笑んでもいない俺に対して微笑み返し、俺にご安心ください、と言った。

「ご安心?」

「わたくしがあなた様を守りますわ。あなた様を しいしてクリストファー王子の気を惹こうと計画されたのです。そんなことは許せません。わたくしは、ええ、そんな恐ろしいイルヴァ様からあなた様をお守りします。」

 俺は腕の中の女性を取り落としそうになった。
 この銃撃はイルヴァが計画したことだって?
 で、イルヴァが気を惹きたいのはクリストファーの方だって?

「ノア王子様。」

「ああ、まずはこの傷を癒す事を考えよう。その後に俺達はイルヴァと話をしよう。いいね。」

「もちろんですわ。」
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