灰色の王子様こそ泥棒娘を守りたいと願っている!

蔵前

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悪の華として燦然と輝け

甘いわね!

 私はノアに特別室に閉じ込められた。
 私がゴリラだと思っているのか?というぐらいに、これでもかと、偏執的に逃亡手段を潰しての閉じ込めだった。
 しかし、彼はやっぱり王子という甘ちゃんだった。

 どうして私を縛らない?
 どうして、部屋の中で火事があったら、あるいは何か災害があったらと、想定して、そういった場合の逃亡用具を残しておくのよ!
 私が自由の身の上でそんなのが残っていたら、部屋の鍵を壊すぐらいじゃ意味無いでしょう!

 しかし、ノアのその行為が甘々の意味がないものだったとしても、好意目的が大昔の私が彼にした事と同じだと認めるしかない。
 けれども、その事実こそ私を苦しめ、私は再び彼との婚約破棄を考えていた。

 灰色の影と呼ばれる婚約者であるが、その灰色の髪は銀色に輝いてとても美しく、水色の瞳は宝石のようでもある。
 いや、彼が私のようなどこにでもいる茶色の髪に茶色の瞳でも、私はきっと彼を守ることを選んでいただろう。
 王子というだけあって彼の仕草は洗練されているし、いや、彼が粗野でも全然平気、私が彼を好むのは彼が私を色眼鏡で見たりはしないからだ。

 学園の男の子達は、常に私を遠巻きにする。
 まあ、学園内の同性にこそ遠巻きにされているのだから、異性の彼らに嫌われるのは仕方が無い事だろう。

 ただ、私が傍にいる事で、ノアこそ人を失っているのだ。

 王子という彼なのだから、学園にいる間ぐらい、彼こそ友人知人を作らねばならないだろう。
 だから、同じクラブにならなかった事で、私は少しほっとした。
 女の子しかいないクラブだったから、彼がそこに入会してしまう事に対して私はかなり葛藤したが、彼が自分以外の女の子に触れ合う機会は必要だと決意したのだ。

 好きでもないがいつもそばにいて手ごろだからと結婚されたら、私が彼を好きな分、絶対に辛いはずだと言い切れるし。

 その決断によって、今はこんな目に遭ってはいるが。

 私は特別室という名の自分への独居房をぐるりと見回し、ノアによって何もなかった部屋がさらに寒々とした部屋になったと、まるで今の自分の心象風景みたいだと溜息をついた。
 私はノアの行った事に、嬉しいような悲しいような気持ちである。

 ここまでやったのは、私がノア暗殺の計画を立てた黒幕であるという噂に対して信じていないとの意思表明だ。
 でも、その意思表明を確かなものとして周囲に知らしめるには、彼は私との婚約を続行し続けなければいけない。
 愛など無いのに?
 私達は婚約破棄の話し合いをしていたのではなくって?

「どうしたらいいのかしら。証拠なんか無いのだし、逃げてしまって有耶無耶にした方が彼と私の為にはいいかもしれないわね。おかしな濡れ衣がある女なんか、王子様の婚約者でいられない。婚約破棄が出来るわ。」

 では逃げるか、と決意した時、私を閉じ込めた部屋の外で大勢の足音が響いた。

「うわあ、開かない!」

「どうしよう!王子の命令なのに!」

 どっちの王子の事だろう?
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