11 / 20
悪の華として燦然と輝け
あなたはどなた?
ノアは間抜けどころではないので、すぐに私を追ってくるだろう。
私は一階まで律義に寮内を歩くのも面倒になり、適当な窓を開けると、そこから下へと飛び降りた。
どうせ二階で下は土。
この程度ならばと思い切ったのだが、着地してすぐに失敗だと唇を噛んだ。
私の直ぐそばに軍靴が現れ、私の逃亡終了を教えたのだ。
「ねえ、その書類は君の潔白証明のものなんだけど。いいの?」
以外にも軽い口調に私は顔を上げた。
真黒の軍服が彼が情報将校であることを示しており、その軍服にぴったりな真っ黒の髪と猫のような金目という組み合わせの男だった。
そしてその男は、陸軍や海軍のいかつい顔つきの軍人たちと違い、また、近衛の父のような軽薄そうも見えない、とても嘘くさい気安そうな笑顔を浮かべていた。
「お手をどうぞ、未来の妃殿下。」
「未来永劫、ただの子爵令嬢ですけれど、ありがたく。」
私は男の差し出して来た手に叩きつけるようにして右手を乗せ、男のエスコートに従って立ち上がった。
「ハハハ。空から美人が降って来るなんて、ここは素敵な学園ですね。」
「そうね。どこもかしこも警護兵が湧いて出る。素晴らしい学園だわ。」
「え、俺は常駐じゃないですよ。そんなに下っ端に見えます?今からお家に帰るところです。あなたが望まれるならば、俺はあなたをこの学園から出してさし上げられますけれど、いかがですか?」
それは暗に自分に従わねば寮内に戻すぞという脅し以外の何物でもなく、学園を出るつもりの私は、男のいう事を聞く事にした。
門から出れば、875メートル先に大叔母のタウンハウスがある。
私だったら走って逃げ切れることだろう。
「ボディガードのお申し出はありがたい事この上ないわ。あなたが約束を守って下さる紳士だとおっしゃるなら、私は必ずやこの学園から外に出る事が出来るに違いませんもの。」
「あ、訂正させてください。俺の約束は上の命令によって変更だらけです。」
「さようなら。」
私は男の手を振り払って先に行こうとしたが、男の手は強靭で、私が彼から離れる事を許さなかった。
その上、その男は、私の手を自分の腕に絡め、勿論脇を締めた上に私の手をもう片方の手で掴んでくれたのである。
しかし、彼はそのまま裏門へと歩き出したので、私は無駄に抗議はせずにそのまま彼を裏門へと歩くことにした。
「俺は君と歩いてみたかった。ちょっと夢が叶ったかな。」
「名もないあなた?名乗らない人の言葉を信じられて?」
男は私に目線を寄こすと、軽く片眼を瞑って見せた。
「あの方は何て名前かしらと、これからの君は俺の事だけを考えてくれる事だろう。」
「トゥーランドットの馬鹿王子ね。カリフ?ああ、待って。知っているわ。あなたはノアの大事なカナン少佐ね。」
「残念。正解だ。殿下は意外とお喋りでしたね。」
「ノアがどこで情報を手に入れているのか知りたくて、彼の書類を少し漁ってみたの。書類のいくつかに、あなたの署名がありましたわ。」
カナン少佐は彫りの深い目元だったものを、点にしか見えない目元という無表情になった顔で私を見返していた。
「何か?」
「殿下の部屋に潜入されたのですか?いつ?」
「ノアが私の部屋を漁りに来た時かしら。彼も私の荷物を漁ったのだから、私も少しくらい漁るのはいいでしょう?」
「ええと。まあ、お二方が分ってやっているなら何も言いませんけどね。殿下はその日はあなたへの贈り物を置きに行っただけで、あなたの荷物を漁りに行ったわけでは無いでしょうし、ええと、殿下は多分あなたに部屋を漁られたのは分っていない、かも?」
「まああ!」
わざとらしく驚いた顔をして見せると、カナン少佐は私を大嘘つきだと言って笑った。
あら、完全に飽きられると思ったが、さすがノアの従者ね。
また、この会話が終わった時を見計らったように、私達は丁度よく裏門に着いていて、それどころか、裏門には黒塗りの馬車が停まっていた。
私は一階まで律義に寮内を歩くのも面倒になり、適当な窓を開けると、そこから下へと飛び降りた。
どうせ二階で下は土。
この程度ならばと思い切ったのだが、着地してすぐに失敗だと唇を噛んだ。
私の直ぐそばに軍靴が現れ、私の逃亡終了を教えたのだ。
「ねえ、その書類は君の潔白証明のものなんだけど。いいの?」
以外にも軽い口調に私は顔を上げた。
真黒の軍服が彼が情報将校であることを示しており、その軍服にぴったりな真っ黒の髪と猫のような金目という組み合わせの男だった。
そしてその男は、陸軍や海軍のいかつい顔つきの軍人たちと違い、また、近衛の父のような軽薄そうも見えない、とても嘘くさい気安そうな笑顔を浮かべていた。
「お手をどうぞ、未来の妃殿下。」
「未来永劫、ただの子爵令嬢ですけれど、ありがたく。」
私は男の差し出して来た手に叩きつけるようにして右手を乗せ、男のエスコートに従って立ち上がった。
「ハハハ。空から美人が降って来るなんて、ここは素敵な学園ですね。」
「そうね。どこもかしこも警護兵が湧いて出る。素晴らしい学園だわ。」
「え、俺は常駐じゃないですよ。そんなに下っ端に見えます?今からお家に帰るところです。あなたが望まれるならば、俺はあなたをこの学園から出してさし上げられますけれど、いかがですか?」
それは暗に自分に従わねば寮内に戻すぞという脅し以外の何物でもなく、学園を出るつもりの私は、男のいう事を聞く事にした。
門から出れば、875メートル先に大叔母のタウンハウスがある。
私だったら走って逃げ切れることだろう。
「ボディガードのお申し出はありがたい事この上ないわ。あなたが約束を守って下さる紳士だとおっしゃるなら、私は必ずやこの学園から外に出る事が出来るに違いませんもの。」
「あ、訂正させてください。俺の約束は上の命令によって変更だらけです。」
「さようなら。」
私は男の手を振り払って先に行こうとしたが、男の手は強靭で、私が彼から離れる事を許さなかった。
その上、その男は、私の手を自分の腕に絡め、勿論脇を締めた上に私の手をもう片方の手で掴んでくれたのである。
しかし、彼はそのまま裏門へと歩き出したので、私は無駄に抗議はせずにそのまま彼を裏門へと歩くことにした。
「俺は君と歩いてみたかった。ちょっと夢が叶ったかな。」
「名もないあなた?名乗らない人の言葉を信じられて?」
男は私に目線を寄こすと、軽く片眼を瞑って見せた。
「あの方は何て名前かしらと、これからの君は俺の事だけを考えてくれる事だろう。」
「トゥーランドットの馬鹿王子ね。カリフ?ああ、待って。知っているわ。あなたはノアの大事なカナン少佐ね。」
「残念。正解だ。殿下は意外とお喋りでしたね。」
「ノアがどこで情報を手に入れているのか知りたくて、彼の書類を少し漁ってみたの。書類のいくつかに、あなたの署名がありましたわ。」
カナン少佐は彫りの深い目元だったものを、点にしか見えない目元という無表情になった顔で私を見返していた。
「何か?」
「殿下の部屋に潜入されたのですか?いつ?」
「ノアが私の部屋を漁りに来た時かしら。彼も私の荷物を漁ったのだから、私も少しくらい漁るのはいいでしょう?」
「ええと。まあ、お二方が分ってやっているなら何も言いませんけどね。殿下はその日はあなたへの贈り物を置きに行っただけで、あなたの荷物を漁りに行ったわけでは無いでしょうし、ええと、殿下は多分あなたに部屋を漁られたのは分っていない、かも?」
「まああ!」
わざとらしく驚いた顔をして見せると、カナン少佐は私を大嘘つきだと言って笑った。
あら、完全に飽きられると思ったが、さすがノアの従者ね。
また、この会話が終わった時を見計らったように、私達は丁度よく裏門に着いていて、それどころか、裏門には黒塗りの馬車が停まっていた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「君はいらない」と捨てられた夜、天敵の冷徹社長に「なら、俺が貰う」と拾われました。――手を出さない約束でしたが、彼の理性が限界のようです
葉山 乃愛
恋愛
【婚約破棄から始まる、不器用なライオン(冷徹社長)の猛烈な求愛!】
「俺の妻になるなら覚悟しろ。……もう、指一本逃がすつもりはない」
★あらすじ★
「美月は完璧すぎて、可愛げがないんだよ」
28歳の誕生日。
一流ホテルのウエディングプランナーである相沢美月(あいざわ みつき)は、婚約者の裏切りにより、結婚目前ですべてを失った。
雨の降る路地裏。
ヒールも折れ、心も折れてうずくまっていた美月の前に現れたのは、かつての高校時代の天敵であり、現在は勤務先の冷徹な社長 一条蓮(いちじょう れん)だった。
「捨て猫以下だな」
そう憎まれ口を叩きながらも、彼は泥だらけの美月を躊躇なく抱き上げ、最高級ペントハウスへと連れ帰る。
そして、彼が突きつけたのは、あまりにも強引な提案だった。
「住む場所がないなら、俺の家に来い。その代わり――俺の『婚約者』役を演じろ」
利害の一致した契約関係。
条件は「お互いに干渉しないこと」、そして「決して手を出さないこと」。
……のはずだったのに。
「髪、濡れたままだと風邪を引く」
「あんな男のために泣くな。顔が台無しだ」
同居生活で見えてきたのは、冷徹な仮面の下に隠された、不器用すぎるほどの優しさと独占欲。
美月が作った手料理を誰よりも美味しそうに食べ、元婚約者が復縁を迫ってくれば「俺の女に触れるな」と徹底的に排除する。
天敵だったはずの彼に守られ、凍っていた美月の心は次第に溶かされていく。
しかし、ある雷雨の夜。
美月が不用意に彼に触れた瞬間、一条の理性のタガが外れてしまい――。
「……手を出さない約束? 撤回だ」
「そんな無防備な顔で見つめて、何もしないでいられるほど、俺は聖人君子じゃない」
10年越しの片思いをこじらせたハイスペック社長 × 仕事熱心で恋愛に臆病なプランナー。
契約から始まった二人の関係が、本物の愛(溺愛)に変わるまで。
元婚約者への痛快な「ざまぁ」も収録した、極上の大人のシンデレラストーリー!
【登場人物】
◆相沢 美月(28)
ホテルの敏腕ウエディングプランナー。真面目でお人好しな性格が災いし、「つまらない女」と婚約破棄される。実は家事万能で、酔うと少しだけ甘えん坊になる(本人は無自覚)。
◆一条 蓮(28)
ホテルグループの社長。美貌と才覚を併せ持つが、他人に興味を示さないため「氷の貴公子」と呼ばれる。実は高校時代から美月を一途に想い続けており、彼女のこととなると冷静さを失う。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
愛を知った私は、もう二度と跪きません
阿里
恋愛
泥だらけのドレス、冷え切った食事、終わりのない書類仕事。
家族のために尽くしてきたエカテリーナに返されたのは、あまりにも残酷な追放宣告だった。
「呪われた男にでも喰われてこい」
そう笑って送り出した彼らは知らなかった。辺境伯ゼノスが、誰よりも強く、美しく、そして執着心が強い男だということを。
彼の手によって「価値ある女」へと生まれ変わったエカテリーナ。
その輝きに目が眩み、後悔して這いつくばる元家族たち。
「エカテリーナ様、どうかお助けを!」
かつて私を虐げた人たちの悲鳴を聞きながら、私は最愛の夫の腕の中で、静かに微笑む。
触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました
由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。
そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。
手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。
それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。
やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。
「お前に触れていいのは俺だけだ」
逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。
これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
良綏
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ