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魔女裁判
とりあえず王子は走ったが
俺はイルヴァとカナンの馬車が去って行くのを見送ると、大きく息を吐き、そして自分が途中で放ってしまった場に戻らねばと駆けだした。
全く。
イルヴァがいる場所で彼女の濡れ衣を晴らしてやりたかった、のに!
だが彼女はそれを望んでいないどころか、濡れ衣を喜んで被ろうとしていたじゃないかと思い立ち、俺は背筋にぞっと悪寒が走って足が止まった。
「まさか!」
俺は自分の持つ茶封筒の中身を覗き、入っているはずのカナンによる書類ではなく学園のパンフレットがこんにちはをしてきた事で、イルヴァにしてやられたと目頭に手を当てた。
「畜生!先に書類を捨てていたとは!ほんっきで可愛げのない女だ!」
それでも俺はやるべきことをやらねばと、魔女裁判に集まっている徴集がいるだろう特別室へと駆け出していた。
だが、灰色の王子と名高い俺は、あだ名通りに存在感が無かったらしい。
誰も俺を待つことなしに、責め立てられるべき存在のイルヴァが消えた事で、気持が晴れたかのようにして解散してしまっていた。
つまり、俺によって破壊された扉がキイキイと軋むだけで、ひとっ子一人特別室に残っているものなどいないのである。
俺は目頭に左手を当てていた。
泣きたい気もする。
自分が王子でなければ別の学校に転校してイルヴァと通い直せるのに、と、部屋に戻って自分の身の上を嘆きながら布団の中で泣いてしまおうか。
「あら、ノア殿下。ご機嫌麗しゅう。」
「この姿を見てご機嫌がいいと言える君は素晴らしいよ。」
左手を外して自分に声を掛けて来た者を見返せば、キールストラ侯爵家令嬢はガブリエラという名の通りに嘘くさい天使の微笑みを俺に返して来た。
蜂蜜色の腰近くまである長い金髪は海のさざ波のようにウェーブを作り、そんなゴージャスさに見合う瞳の色は深い青だ。
つまり、海のビーナスそのものの外見の美女が俺に微笑んでくれているのだが、俺はイルヴァに感じるような気持ちは彼女からは一切感じたことはない。
「何をボーとなさっているの?ここにいた大騒ぎの皆さんは、医務室へ移動なされたばっかりよ。まだお祭りは終わっていないのでしょう?」
「その通りだ。ああ、医務室ね。」
「ええ。あの伯爵令嬢様はそういえば銃撃されたばかりなんですものね?」
俺は左腕を差し出した。
ガブリエラは俺の腕に自分の右腕を絡めた。
「ねえ、ノア。私のクリストファーを取り戻してくださるのよね?」
「俺が取り戻したいのはイルヴァの名誉だけだよ。」
クリストファーの婚約者候補としては一番の有望株は、彼女が恋をしている筈のクリストファーには絶対に見せない、鼻を鳴らすという下品な振舞いを俺の横でして見せた。
全く。
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だが彼女はそれを望んでいないどころか、濡れ衣を喜んで被ろうとしていたじゃないかと思い立ち、俺は背筋にぞっと悪寒が走って足が止まった。
「まさか!」
俺は自分の持つ茶封筒の中身を覗き、入っているはずのカナンによる書類ではなく学園のパンフレットがこんにちはをしてきた事で、イルヴァにしてやられたと目頭に手を当てた。
「畜生!先に書類を捨てていたとは!ほんっきで可愛げのない女だ!」
それでも俺はやるべきことをやらねばと、魔女裁判に集まっている徴集がいるだろう特別室へと駆け出していた。
だが、灰色の王子と名高い俺は、あだ名通りに存在感が無かったらしい。
誰も俺を待つことなしに、責め立てられるべき存在のイルヴァが消えた事で、気持が晴れたかのようにして解散してしまっていた。
つまり、俺によって破壊された扉がキイキイと軋むだけで、ひとっ子一人特別室に残っているものなどいないのである。
俺は目頭に左手を当てていた。
泣きたい気もする。
自分が王子でなければ別の学校に転校してイルヴァと通い直せるのに、と、部屋に戻って自分の身の上を嘆きながら布団の中で泣いてしまおうか。
「あら、ノア殿下。ご機嫌麗しゅう。」
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左手を外して自分に声を掛けて来た者を見返せば、キールストラ侯爵家令嬢はガブリエラという名の通りに嘘くさい天使の微笑みを俺に返して来た。
蜂蜜色の腰近くまである長い金髪は海のさざ波のようにウェーブを作り、そんなゴージャスさに見合う瞳の色は深い青だ。
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「何をボーとなさっているの?ここにいた大騒ぎの皆さんは、医務室へ移動なされたばっかりよ。まだお祭りは終わっていないのでしょう?」
「その通りだ。ああ、医務室ね。」
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「ねえ、ノア。私のクリストファーを取り戻してくださるのよね?」
「俺が取り戻したいのはイルヴァの名誉だけだよ。」
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