やるかやられるか三日以内に決めてくれ

蔵前

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とりあえずの一日目、監禁された一日目?

天野兄妹

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 一夜明けて蝶子の部屋をよく見まわしてみれば、彼女はお嬢様なのか、学生が住むには豪華で広々とした寝室を持つ1LDKだった。
 道理でベッドがダブルでもちゃぶ台を置くスペースがあったはずだ。

 蝶子は部屋から持って来た小さなちゃぶ台を広々としたダイニングの片隅に置くと、そこにキッチンの棚から出して来たタコ焼き器を置いた。
 そして、キッチンの勝手を知っているらしき九曜は、次々に皿や飲み物を用意している妹を横目に、手際よくホットケーキミックスを混ぜ始めた。
 俺は彼等に言われるがまま、ホットケーキミックスに入れる小さなウィンナーを軽くフライパンで炒めていた。
 蛸の代りに中に入れる事で、ちっちゃなアメリカンドッグが出来るらしい。

「蝶子、俺はチーズを入れたい。ゴーダチーズある?」

「ゴーダは無い。チェダーとモッツアレラならある。」

 プロセスチーズではなくてナチュラルチーズがご所望とは、この兄と妹はやはり金持ちのお子様らしい。
 しかし彼らは大きなスペースの端っこにちゃぶ台という貧乏くさいシチェーションに拘っていて、俺に似た貧乏性な感性なのかもしれないと少々彼らに親近感が湧いた。
 ほんの少しだよ。
 ゴキブリも地球生命体だと認めるぐらいの親近感だって。

「ああ、なんか、あたしったら庶民って感じがする!」

「やっぱり相手が普通の子だと、気取らない感じでいいよね。なんか新鮮。」

 てめえら!本気で俺を堕とす気があるのか?
 目の前で俺が貧乏人だと突きつけるな!

 さて俺は彼らに怒っていても、彼等兄妹の様子を見ると、蝶子は兄とのやり取りに楽しそうであるし、九曜もそんな妹との掛け合いをことの外楽しんでいるようなのだ。
 蝶子は俺の一学年上だが、早生まれで俺と同じで今のところは二十歳だ。
 対する九曜は、東大在学中に司法試験に通ったという若きエリート様であるが、ベテランの裁判官というだけあって、彼の年齢は二十八とかなり年上だ。
 年齢差のある兄妹が互いに絡むため、という、俺は口実なのかもしれないな。

「兄ぃはさ、三日後に出張なの?ウチに持って来た鞄がデカすぎない?」

「いや、異動。三日後には新天地。ママがさ、引っ越し作業は全部してやるからってね、俺は邪魔だからって官舎を追い出されたの。」

「すいません。九曜さん。異動でお引越しでしたら、ご自分で荷づくりなどなさらないのですか?」

 ほら、ママに見られたら大変な物、二十八歳のあなたには色々ありそうですけれど?
 九曜は俺の質問に肩だけすくめた。
 そして、兄の代りに蝶子が答えた。

「ママね、ルームコーディネーターが仕事なの。勝手にあたし達の部屋を作って、あたし達からお金を巻き上げる業突く張りなんだよ。」

「そう。でもさ、楽だからいいかなって。大事な大事な俺の玩具は鞄の中だしさ。ねえ、空。今夜俺の玩具で遊んでみる?」

 彼等のママは、自分の子供のコーディネートはしてくれなかったのだろうか。
 そして絶対に、俺は九曜の鞄など覗かない!
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