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隠れ家を探す二日目の午後

世界は破壊されるためにある

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 九曜は何度も何度も俺に自分で決めろと言った。
 俺こそ無理矢理に奪って世界を壊して欲しかったけれど、九曜は既に壊してしまった世界に立っていたのだ。

 彼は俺に手を差し伸べる?
 いや、手を俺に差し伸べられないのだ。
 俺を愛していると叫ぶことのできる世界だけど、そこは俺に何も与えられない荒野かもしれないからだ。
 だから彼は俺に愛しているとだけ叫ぶ。

 俺に全てを賭けているということか!

 俺は九曜を抱き締めながら、大きく息を吸った。
 久しぶりに息を吸ったような気がした。

「九曜、父さんと母さんは俺に何を望んでいたんだと思う?」

「……君が大学を出て、ちゃんと就職して、そして、友人に囲まれて、好きな女性と結婚もして、ああ、子供のいる家庭を持つ、かな。」

 答える九曜の声は暗く固かった。

「ばかやろ。長ぇよ。もっと端的に。」

 九曜はついさっきの俺と同じようにして、はあと息を吸った。
 それから、俺の腕の中で震えた。
 俺が九曜の告白を聞いてから震えているのと同じ震えに違いないと、俺は九曜の頭に頬ずりをした。

「俺は馬鹿なんだ。語彙も少ない。だから、親が願っているだろう希望の根っこだけ言ってくれ。」

「……誰よりも幸せになってくれ。」

 俺は大きく息を吸い、そして吐いてから、九曜を腕から解放した。
 俺の腕から解放された彼は俺を見つめる事が出来、俺は俺を見つめる九曜の目に真っ直ぐに目線を合わせた。

「九曜。俺はお前を愛しているよ。お前と一緒にどこにでも行こう。」


 九曜は物凄い勢いで俺に飛び掛かり、奴の頭は俺の顎にぶつかった。

「ああ!ごめん!大丈夫か!空!ああああ!可愛い下唇から血が!」

 俺は早まったかもしれない。
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