やるかやられるか三日以内に決めてくれ

晩餐という名の顔みせは最後の夜に 二日目の夜

天野家の光坊主

　ガラス張りのエレベータは、夜景という星空の中を上昇し、本物の天体が待つ展望デッキの階まで俺達を運んでいった。

　到着した会員制クラブはどんな煌びやかなのかと思ったが、普通に五つ星ホテルのバーに図書館みたいな書籍が詰まった棚もあるという静かな雰囲気で、知的で金のある人向けの隠れ家という感じの場所だった。
　基本的に本があるところは安心する俺としては、当初に考えていた緊張はやり過ごす事が出来た。

　いや、足元が落ち着いているのは、俺の右手を離さない温かな九曜の手があるからだろうか？

　彼は人の目も気にせずに俺と手を繋ぎ、俺がパートナーだという事を世界中に知らしめたいという風に、胸を張って俺を連れ立っているのである。

　そしてついに俺達を待っていた九曜の父に対峙することになったが、彼は年齢と食生活の乱れによるのか恰幅が良い体つきで、整った顔立ちと刈り上げられた坊主頭が相まって、仏像、という第一印象の人だった。
　しかし、その第一印象の姿のせいか、俺は彼に対して初対面なのに親しみと信頼を抱いてしまいそうになった。
　そこで、弁護士という職のために敢えてそういう姿に自分を作り上げたと、俺は邪推したくらいだ。

　しかし、俺はここで九曜のママが父親のようになるなと九曜に注意していた意味を理解し、俺こそ九曜にこの恰幅の良い姿にはならないで欲しいと強く願ってしまった。
　あ、完全に人様の外見でディスってしまうとは。

　さて、天野九曜の父は九曜の手に繋がれて現れた俺に対し、蠅でも見る目線をまず寄こしたが、俺達が近づくにつれてそんな目線を完全に隠した。
　いや、頬は酒を飲んだかのようにピンク色に染まり、九曜と同じ口元は時々九曜が俺に対してするみたいに間抜けに半開きだ。

　脳溢血でも起こしたか？
　生活習慣病の一つか二つは持ってそうな恰幅のお身体だもの！

「親父、彼が俺の心を掴んで離さない――。」

「この馬鹿息子が！」

　だよね。
　九曜は成功した男だったはずだもの。
　俺の手はそれでも九曜の手を強く握り、九曜も俺を離すもんかという風にさらに指を絡めた。

「こんな可愛い子供を誑かして！」

　はい？