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2日目

第44話 ドクミンは毒ではない

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(タートレー)
「娘がえらく動揺してたけど、
 その[魔素供給]ってのはなんなのさ?」

(最適さん)
『魔素を他者に分け与えるスキルになります。
 提供者の魔素が減り、
 対象者の魔素が増えます』

(リアード)
「つまり魔素の回復か、
 それは素晴らしい」

 リアードが褒め称える理由は、
 従来の回復手段が
 食事と時間経過でしかないからだ。

 それ故、クロエは普通に暮らしていれば
 4万の魔素回復に2年間と言ったのだ。

 まぁ、ドラゴンの生活は
 喰える時と喰えない時がある。
 それを含めての期間だったわけだが。

(タートレー)
「アンタ、バカだねぇ……。
 それならファル達が反対する理由はないだろ?
 何かあるね?」

(シオン)
「あー、そうだな。
 方法が口移しだ」

(ココル)
「うげ……。
 ウチイヤよ?
 アンタとキスなんて」

 ココルが苦虫を噛み潰す顔をし、
 それを見たシオン妻ズが睨み付ける。

 勿論、自分ら以外の者と唇を交えるのは
 容認したくはないが、
 低く評価されるのはもっと嫌なのだ。

(タートレー)
「なるほどね……。
 こりゃファルは動揺するね。
 というか、嬢ちゃん達が知ってるって事は
 ヤったのかい?」

(シオン)
「昨日、兄貴やフランクらがいる前でな」

(タートレー)
「それで嬢ちゃんとフランク君は
 赤面してんのかい……、ウブだねぇ。
 フランク君はそんなんで
 ウチの娘と結婚出来んのかね?」

(ココル)
「お母さん?
 結婚ってど~ゆ~事?
 ファルちゃんの相手はそこのシオンでしょ?」

 ココルはシオンを指差す、

(タートレー)
「アンタの相手だよ」

(ココル)
「へ~………………ウチの!?
 う~ん、まぁカワイイからオッケー!」

 あっさり快諾した。

(タートレー)
「なんでアンタが上から言ってんのさ。
 アンタが行遅れを気にしてたから、
 シオンちゃんが婿を連れてきてくれたんだ。
 感謝しな!」

(ココル)
「チッチッチッ!
 お母さん?
 ウチ、ハイヒューマンなのよ?」

(タートレー)
「だから?」

(ココル)
「王都で明かせば、
 お婿さんなんで選び放題よ~」

 ニタニタ笑うココルを見て、
 呆れるタートレー。

(タートレー)
「んなもん明かしたら、
 研究熱心なバカがわんさかくるよ?」

(ココル)
「ふふん♪
 来たとしてもウチの耐久値は14万よ?」

(タートレー)
「それで?」

(ココル)
「14万あれば敵無よ~♪」

-あれ?
-でも確か……。

(シオン)
「あ、80万あっても
 ドクミンは普通に動けなくなるぞ」

(ココル)
「……はぁ?」

(最適さん)
『神の意向により料理は
 防ぐものから除外されています』

(ココル)
「何で!?」

(最適さん)
『理由まではわかりません』

(シオン)
「んなもん簡単だ。
 神さんも料理を味わいたいって事だろ」

(ココル)
「ぐぅ……それなら毒耐性を上げれば……」

(最適さん)
『ドクミンは毒物に含まれていません。
 アジミン及びヤクミンにつきましては
 スキル、魔法、耐性で防ぐ事は出来ません』

(ココル)
「何なのよ、それ~!!」

(最適さん)
『効果を高める事は出来ますが』

(ココル)
「要らないわよそんなの!」

(タートレー)
「大体ね。
 アンタは平気でも、
 周りの者は対処できないだろ?
 婚約者候補なんて逆に逃げてくさ」

(ココル)
「そんな~」

(シオン)
「ならハイヒューマンになってるのは
 不味いんじゃねぇの?」

(リアード)
「確かにシオン君の言うとおりだ。
 マナーのない奴は勝手に観るだろうし……」

-あ、俺だ。
-前にタートレーのを勝手に観たな……。

(リアード)
「高い料金を払わないと見れないが、
 公爵ともなれば
 勝手に依頼する奴もいるだろう。
 当人が観れる可能性もある事だしな」

(最適さん)
『気になるようでしたら、
 スキル[偽装]を修得されると宜しいかと。
 ステータス表示を自在に変更できます。
 看破するには神話級ゴッズ以上の
 開示スキルが必要になりますので
 並の者は欺けるでしょう』

(ココル)
「りょ~か~い」

(タートレー)
「アンタも使うべきだね。
 冒険者やるんだろ?
 ギルドに行ったら新人を覗き観する
 鑑定屋がいるからね」

(最適さん)
『必要ですか?』

(タートレー)
「必要だろうさ。
 騒ぎになっちまう」

(最適さん)
『マスターは必要としますか?』

(シオン)
「騒ぎにゃしたくねぇから、
 使っといてくれ。
 表記は任せる」

(タートレー)
「レベルは100前後、
 基礎値は300前後がいいんじゃないか?
 初登録の冒険者はそんなもんだろ」

(シオン)
「そんなに高いのか」

(タートレー)
「高いってアンタ……皮肉かい?」

(シオン)
「昨日も言ったろ?
 俺がこの世界に来た時はLv.20で
 基礎値は105だったんだよ」

(タートレー)
「確かに言ってたね。
 今のアンタを観てると信じられないけど。
 はぁ……Lv.2000に基礎値80万って……
 アンタ、絶対[偽装]とやらをかけときなね」

(ココル)
「うっそ~!
 今Lv.2000もあるの~?
 てゆ~か~、
 何でお母さんにそれがわかるの~?」

(最適さん)
『今この場にいるココルさん以外は、
 スキル[ステータス開示]神話級ゴッズ
 修得しています』

(ココル)
「えぇ!?
 何でよ!」

(最適さん)
『マスターがプレゼントいたしました』

(ココル)
「ず~る~い~。
 ウチにも頂戴よ~」

(リアード)
「ダメだ」
(タートレー)
「ダメだね」
(ファル)
「ダメです」

 家族一同、拒否。

(シオン)
「なんでだ?
 俺は構わねぇが?」

(タートレー)
「絶対悪用するね」

(リアード)
「そうでなくとも
 辺り構わず観まくり
 何かやらかすだろう」

(ファル)
「お姉ちゃんはマナーがないから……」

(ココル)
「うぅ……」

 家族なのに散々な言われよう。

(シオン)
「お前、とことん信用無いな……」
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