ReaL -墓守編-

千勢 逢介

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第二章・墓標に刻む者

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 勇三たちはカウンターに置かれた端末の前に戻った。
 トリガーがウィンドウを切り替えると、昨日とは別のレギオンの姿が映さ出される。

 足の短い、鋭い爪をもった半魚人のような風体だった。顔には目が無く、鯨のような丸い頭部とぶ厚い唇を持っている。

「WL―54。階級はピクシー級……つまり五段階のランク最下位だ。単独での危険性も低いが、主に群れで行動している。囲まれないように気をつけろ」
「もし囲まれたら?」
「そのときはおれが指示を出す。もっとも、ニンフズから離れなければ危険な目に遭うこともないだろう。それから、今後の報酬についてだが」
「それはあんたらに任せるよ」
「そうもいかない。こちらの提案に対するおまえの了承が必要なんだ。たとえ口約束であっても、それが金で動く傭兵というものだ。ルールや規則よりも、我々は報酬に対して敬意を払わなければならない。傭兵にとっては金こそが理念であり、行動原理だからだ」
「わかったよ、それで?」
「報酬はそれぞれの取り分として三割ずつを均等に山分けする。おれ、おまえ、そしてニンフズの三人でな」
「ちょっと待てよ」勇三が遮る。「だったらあいつら……レギオンを倒した数は関係無いってことか?」
「そうだ。つまり、おまえは生き残りさえすれば報酬が約束される。どうだ、悪くない条件だろう?」

 勇三は頷いた。確かにこれは破格の条件だと言えよう。要するに逃げ回ろうと隠れようと、死にさえしなければ金が転がり込んでくるのだから。

「それから残りの一割だが、この店の家賃にまわさせてもらう。ここは会社の借り上げで、家主の政府に払う家賃もばかにならないんだ」
「いきなり世帯じみてきたな」
「それにおれとニンフズの住まいでもある。代わりと言ってはなんだが、おまえもここを自由に出入りしてくれて構わない。ただし武器や弾薬だが、それは買うなり借りるなりで工面してくれ」
「じゃあ、この銃も?」勇三はライフルを持ち上げてみせた。
「それは餞別だ。おまえにやるよ。<EOS>にようこそ」

 ありがとう……すまない……そうした返事が脳裏をよぎったが、勇三は頷くだけにとどめた。

「それじゃあ、そろそろ行くよ」
「勇三」カウンターを離れて裏口へ向かおうとしたところで、トリガーが声をかけてくる。「おれからも謝らせてくれ。巻き込んでしまって本当にすまない」

 振り返ると、トリガーは謝罪の意志を示すようにこうべをたれていた。

「それから、ニンフズを恨まないでやってくれ。誰よりも自分を責めているはずだ」
「もういいよ。それよりアドバイス頼む」
「任せてくれ。ドアをあけたら地下に行く梯子がある。それを降りた先にある扉を空けて奥に進んでくれ」

 勇三は頷くと、意を決して扉を開けた。
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