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スライム、エルフ。
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「オイラは妹を殺されたよ…」
「……え?」
声のした方へ目を向けるとそこには無色透明の
水の塊のようなものが椅子の上に乗っていた。
否、座っていたと言うべきか。
「オイラはスライムのスロウ。農家をしている。
妹と一緒にここからそう遠くない田舎で親父の畑仕事を継いで、
仕事をしてたけど突然ヤツが現れて妹を殺して消えたよ……」
スライム。俺のいた世界の創作物じゃザコキャラ扱いだが、俺が思うに水相手に物理攻撃はなんの意味も成さない気がするんだが…
「答えにくいだろうが、どうやって殺されたか教えてくれないか?」
俺の両親はあの化け物に刃物みたいなもんで殺された。
…まぁ、蘇生されたけど。
「……火だよ」
「火…?」
「……想像できるかい?アンタら人間は体の6、7割が水分って言われてるけどよ、オイラたちスライムは見ての通り10割水分。水そのもの。妹は………焼殺にて蒸発して…この世から……言葉通り……グスン……いなくなったよ。
俺は奴の魔法で動きを……止められて……何も……何も出来なかった……グスン」
「……!」
絶句。
そんな酷いことができるのか…。
言葉通りこの世からいなくなる。と、言葉では簡単だが、実際水を火に掛けて蒸発するまでとなると水の温度にもよるがかなりの時間を要する。
長い時間焼き続けられたということか。
人間の俺には想像し難い、仮に自分がブクブクと沸騰する姿……
考えるのはよそう。
「……ぅぅ…」
被害者の遺族三名の話を聞いて女の子が泣きはじめた。
リーシャではない。
「……わたしは……お母さんと…お父さんが…
ひっぐ……」
涙でぼろぼろになり、声は枯れていた。
「よしよし、大丈夫だよ。お前さん…名前は?」
リーシャが泣き出した女の子の頭を撫で落ち着かせる。
「……っすん、私は……ど、エル…フのミリア…なの」
エルフ。俺のような人間の種族の子供と見た目はなんら遜色ない。━━尖った両耳を除いて。
しかし、不思議なのは耳以外にもある。
「なぁミリア。お前さんひとりで来たのか?お母さんとお父さんの代わりに君の面倒を見てくれる者は一緒に来ておらんのか?」
俺の疑問をリーシャが代弁する形になったが俺の意図ではない。
リーシャもそこが気になったのだろう。
こんな森の中、女の子がひとりで赴こうとは思えない。
リーシャが用意した場所だから安全だとは思うが。
「………」
ミリアは黙り込んでしまった。
子供には子供の事情がある。
そこに大人が介入する余地などないのである。
「……━━しいの…」
「…ん?」
「…寂しいの。ミリア寂しいの。…もうミリアの周りには誰もいないから……ぐすん」
少女の嗚咽とともに吐き出されたその言葉はこの場にいる参加者全てに当てはまることであった。
「………」
一番弟子であり、実の息子であり、何よりこの世で唯一無二の宝物を奪われたトロール。
「………」
自分への評価など気にせず、ただただ愛する者を愛したが守ることが叶わなかったハーフウルフ。
「………」
父親の仕事を継ぎ、妹と助け合い支え合い頑張っていこうと決意したのも束の間、なす術なく妹をこの世から消されたスライム。
「………」
かけがえのない両親を失った事実はその幼心に深傷を負わせるには充分だった。思い出すだけで涙が止めどなく溢れる独りぼっちのエルフ。
「……あぁそうだな」
変わらぬ日常はある日突然歪に捻れ曲がり、心の臓の破裂は平和が崩壊する合図だったのかもしれない。
「俺もミリアと同じで両親を殺された…俺自身も。リーシャのお陰で一命はとり留めたが、俺は奴を許さない」
「……明」
「それにアンタらのおかげでだいぶあの化け物のことがわかってきたよ」
「そうなのか?私はわかりたくもないがな…」
「まあそういうなよリンドーさん。テリートの旦那のような力自慢の種族を殺害でき、スロウの証言から魔法が扱える奴ってことがわかった、んで、魔法の扱いなら言わずもがな長けてるエルフをも手に掛ける……そんなヤツだ」
とりあえず魔法の使えるヤツ……ってこの世界じゃあ珍しくもないか、むしろ使わないヤツのほうが少ないのか。
あまり進展がないようにも思えるがゼロではない。
「……あの…」
「む。どうかしたかの?ミリア?」
ミリアが恥ずかしそうに小声でリーシャの耳に手をあてて話しかけた。
ただでさえ小さくか細い声がさらに小さくなったのでこちらには聞こえない。
「おぉ、わかったぞ」
なにか了承したのかわからないがミリアは席を立ちリーシャを連れて部屋を出ようとする。
「…え、どこ行くんだ?リーシャ」
「お花狩りだ」
摘めよ。
◆
ミリアがお花を狩…摘みに(リーシャは付き添いで)部屋を出ていき、部屋には俺、スロウ、リンドー、テリートが残った。
で、テリートが。
「よし!俺は魚を獲りに行ってくる。ここで俺達が会ったのも何かの縁だ。晩飯は俺がご馳走しよう!」
「魚なんてあったのか?私が来たルートには川なんてなかったが」
腕組みをしたリンドーがテリートに問いかけた。
「修行時代に見つけた川がまだ生きててな。いやぁ懐かしい。てことでちょっくら行ってくる」
意気揚々に立ち上がったテリート。
座ったときの高さ、つまり座高が既に俺の身長よりデカかったのだ。その巨体が立ち上がるのだからさらにデカくなった。
その際天井から吊るされたシャンデリアが大きく揺れ、火が灯された蝋燭が一本落ちた。
落ちた先はスライムのスロウの目の前に。
ゴトッ!
「うわぁぁぁぁっ!!!火ィ…火ィイ!」
スロウの絶叫に皆驚いて、すかさずテリートが━━
「あぶねぇ!!」
ブシュウゥ……
━━大きな手を蝋燭に覆い被せ火を消火した。
「ハァ……ハァ……勘弁…してくれ、火はもう…ハァ…トラウマなんだ…」
可愛い妹をこいつは火で殺されたのだ。
そりゃトラウマものだ。
「す、すまねぇ」
「危うく火事であったぞ」
「ふぅ…って、テリート手は大丈夫なのか?」
火を手で消し止めたんだぞ?
「へっへっへ、俺は全身の皮が厚いからなこの程度は平気だ」
◆
テリートは魚を獲りに部屋を出て、建物を出た。
あとでミリアとリーシャが先の悲鳴が何だったのか心配しながら部屋に戻ってきた。
ちゃんと説明をして二人を安心させたところで二人の手に目をやると、そこには彩り豊かな花がいくつか握られてた。
ホントにお花狩り行ってた。
「……え?」
声のした方へ目を向けるとそこには無色透明の
水の塊のようなものが椅子の上に乗っていた。
否、座っていたと言うべきか。
「オイラはスライムのスロウ。農家をしている。
妹と一緒にここからそう遠くない田舎で親父の畑仕事を継いで、
仕事をしてたけど突然ヤツが現れて妹を殺して消えたよ……」
スライム。俺のいた世界の創作物じゃザコキャラ扱いだが、俺が思うに水相手に物理攻撃はなんの意味も成さない気がするんだが…
「答えにくいだろうが、どうやって殺されたか教えてくれないか?」
俺の両親はあの化け物に刃物みたいなもんで殺された。
…まぁ、蘇生されたけど。
「……火だよ」
「火…?」
「……想像できるかい?アンタら人間は体の6、7割が水分って言われてるけどよ、オイラたちスライムは見ての通り10割水分。水そのもの。妹は………焼殺にて蒸発して…この世から……言葉通り……グスン……いなくなったよ。
俺は奴の魔法で動きを……止められて……何も……何も出来なかった……グスン」
「……!」
絶句。
そんな酷いことができるのか…。
言葉通りこの世からいなくなる。と、言葉では簡単だが、実際水を火に掛けて蒸発するまでとなると水の温度にもよるがかなりの時間を要する。
長い時間焼き続けられたということか。
人間の俺には想像し難い、仮に自分がブクブクと沸騰する姿……
考えるのはよそう。
「……ぅぅ…」
被害者の遺族三名の話を聞いて女の子が泣きはじめた。
リーシャではない。
「……わたしは……お母さんと…お父さんが…
ひっぐ……」
涙でぼろぼろになり、声は枯れていた。
「よしよし、大丈夫だよ。お前さん…名前は?」
リーシャが泣き出した女の子の頭を撫で落ち着かせる。
「……っすん、私は……ど、エル…フのミリア…なの」
エルフ。俺のような人間の種族の子供と見た目はなんら遜色ない。━━尖った両耳を除いて。
しかし、不思議なのは耳以外にもある。
「なぁミリア。お前さんひとりで来たのか?お母さんとお父さんの代わりに君の面倒を見てくれる者は一緒に来ておらんのか?」
俺の疑問をリーシャが代弁する形になったが俺の意図ではない。
リーシャもそこが気になったのだろう。
こんな森の中、女の子がひとりで赴こうとは思えない。
リーシャが用意した場所だから安全だとは思うが。
「………」
ミリアは黙り込んでしまった。
子供には子供の事情がある。
そこに大人が介入する余地などないのである。
「……━━しいの…」
「…ん?」
「…寂しいの。ミリア寂しいの。…もうミリアの周りには誰もいないから……ぐすん」
少女の嗚咽とともに吐き出されたその言葉はこの場にいる参加者全てに当てはまることであった。
「………」
一番弟子であり、実の息子であり、何よりこの世で唯一無二の宝物を奪われたトロール。
「………」
自分への評価など気にせず、ただただ愛する者を愛したが守ることが叶わなかったハーフウルフ。
「………」
父親の仕事を継ぎ、妹と助け合い支え合い頑張っていこうと決意したのも束の間、なす術なく妹をこの世から消されたスライム。
「………」
かけがえのない両親を失った事実はその幼心に深傷を負わせるには充分だった。思い出すだけで涙が止めどなく溢れる独りぼっちのエルフ。
「……あぁそうだな」
変わらぬ日常はある日突然歪に捻れ曲がり、心の臓の破裂は平和が崩壊する合図だったのかもしれない。
「俺もミリアと同じで両親を殺された…俺自身も。リーシャのお陰で一命はとり留めたが、俺は奴を許さない」
「……明」
「それにアンタらのおかげでだいぶあの化け物のことがわかってきたよ」
「そうなのか?私はわかりたくもないがな…」
「まあそういうなよリンドーさん。テリートの旦那のような力自慢の種族を殺害でき、スロウの証言から魔法が扱える奴ってことがわかった、んで、魔法の扱いなら言わずもがな長けてるエルフをも手に掛ける……そんなヤツだ」
とりあえず魔法の使えるヤツ……ってこの世界じゃあ珍しくもないか、むしろ使わないヤツのほうが少ないのか。
あまり進展がないようにも思えるがゼロではない。
「……あの…」
「む。どうかしたかの?ミリア?」
ミリアが恥ずかしそうに小声でリーシャの耳に手をあてて話しかけた。
ただでさえ小さくか細い声がさらに小さくなったのでこちらには聞こえない。
「おぉ、わかったぞ」
なにか了承したのかわからないがミリアは席を立ちリーシャを連れて部屋を出ようとする。
「…え、どこ行くんだ?リーシャ」
「お花狩りだ」
摘めよ。
◆
ミリアがお花を狩…摘みに(リーシャは付き添いで)部屋を出ていき、部屋には俺、スロウ、リンドー、テリートが残った。
で、テリートが。
「よし!俺は魚を獲りに行ってくる。ここで俺達が会ったのも何かの縁だ。晩飯は俺がご馳走しよう!」
「魚なんてあったのか?私が来たルートには川なんてなかったが」
腕組みをしたリンドーがテリートに問いかけた。
「修行時代に見つけた川がまだ生きててな。いやぁ懐かしい。てことでちょっくら行ってくる」
意気揚々に立ち上がったテリート。
座ったときの高さ、つまり座高が既に俺の身長よりデカかったのだ。その巨体が立ち上がるのだからさらにデカくなった。
その際天井から吊るされたシャンデリアが大きく揺れ、火が灯された蝋燭が一本落ちた。
落ちた先はスライムのスロウの目の前に。
ゴトッ!
「うわぁぁぁぁっ!!!火ィ…火ィイ!」
スロウの絶叫に皆驚いて、すかさずテリートが━━
「あぶねぇ!!」
ブシュウゥ……
━━大きな手を蝋燭に覆い被せ火を消火した。
「ハァ……ハァ……勘弁…してくれ、火はもう…ハァ…トラウマなんだ…」
可愛い妹をこいつは火で殺されたのだ。
そりゃトラウマものだ。
「す、すまねぇ」
「危うく火事であったぞ」
「ふぅ…って、テリート手は大丈夫なのか?」
火を手で消し止めたんだぞ?
「へっへっへ、俺は全身の皮が厚いからなこの程度は平気だ」
◆
テリートは魚を獲りに部屋を出て、建物を出た。
あとでミリアとリーシャが先の悲鳴が何だったのか心配しながら部屋に戻ってきた。
ちゃんと説明をして二人を安心させたところで二人の手に目をやると、そこには彩り豊かな花がいくつか握られてた。
ホントにお花狩り行ってた。
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