異世界探偵・不知火 明

不報 刀姫

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トロール、ハーフウルフ。

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「ねぇねぇ答えは?」

「おぉお⁉急に口調変えるな、びっくりしたわ」

もうわからんとばかりに俺の袖を指先でつまみ
答えを求めるリーシャ。
なんで可愛さを重視した答えの聞き方をするんだ。
俺への好感度上げて何が狙いだ。
リーシャなりのボケをスルーして俺は答えを言う。

「その剣そのものだよ」

「…うむ?どういうことだ?」

「じゃあリーシャ、お前自分の右手で
自分の右手を殴れるか?」

「は?何をいって……そんなの…あれ?無理じゃのう」

「…ふふ、ははは…そういうことだよ」

疑問符を頭の上で浮かべるリーシャに背を向け
俺は抑え込んでいた笑いが漏れてきた。

「お前さん!家の中にある物と言ったではないか!」

頬を膨らまし激昂するリーシャ。

「その剣があるとして━━と、想定して考えたならば、その剣もだろ?」

「なっ!?」



簡単な問題をだして集会までの時間を潰そうと
試みたものの、機嫌を損ねたリーシャと仲直りするためにかかった時間のおかげで、あっという間に被害者の遺族と面会する時間になった。
だが、時間は聞かされても場所は聞かされなかったので
どこに集まるんだと聞こうとしたら、
リーシャがいきなり「出発の準備をしてくれ」と言ってきたので言われるがまま準備をしようとしたがこれといって準備するものといえば、
リーシャがこの会の参加者全員に配った
参加者の詳細が書かれた紙一枚ぐらいしかない。
というか昨日の今日なので。
俺がいた世界からの異世界なので。
物というもの物は着ている服と履いてる靴のみだ。
準備を終え場所はどこだとリーシャに聞く前に
既にリーシャはワープゲートを開いていた。

「……教会?」

ワープゲートを潜り抜けた先は古びた教会がひとつ。
周りは木々に囲まれている感じ、これは森の中にひっそりと建っている場所なのか。

「集まるにはうってつけの場所だろう?」

「だな」

被害者及びその遺族が一同に会するとして
最も恐れる可能性がひとつある。
それは、新たな被害者が生まれるということだ。
こんな人目のつかない場所は危ないと思われるが、このような場所でないと来られない者もいるだろう。
俺とリーシャは教会に入り、参加者全員がいるであろう大部屋へと向かった。

ギイィ…

「…みな、揃っておるな。主催者の私が
最後に到着とは申し訳ない」

きしむ扉を開けると、まず目に入ってくるのは大きなシャンデリア。
蝋燭全てに火が灯されて部屋全体を明るくしている。
窓から入る光で多少部屋は明るいが昼下がりなので火を灯すには充分な時間帯ではある。
そして、その真下。
大きなシャンデリアとほぼ同じ大きさの丸テーブルが置かれクロスも敷かれている。
その丸テーブルの周りに椅子が6つ、今回の参加者、俺とリーシャを除く四名は既に席についていた。

「イアナニサヘロ」

は?え?
シャンデリアと丸テーブルの大きさに引けを取らないほどの
大男がニコニコ微笑みながらこちらに向かって言葉を発した。
が、俺には理解出来なかった。

「あーそうか。明、お前さんは言語の壁を乗り越えねばな。
どれ耳を貸せ」

「ん…」

リーシャが両手で俺の両方の耳を軽く握り、
目を閉じ呪文のようなものを唱え始めた。

「ほれ、もう大丈夫だろ」

リーシャが手を離し、俺はさっきの大男に挨拶を試みる。

「…えと、初めまして。俺はワケあって異世界からきた、人間の不知火明っていいます」

人間のって言うと違和感が否めないが、
こう言わないとこちらの世界ではなにかと不便だろう。

「がはは、そうか人間か兄チャンは。
そりゃあ言葉が通じないだろうなぁ。
因みにさっきは『予定より早いさ』って言ったんだ」

「そうなんすか」

「だがやはり主催者側として最後というのは失礼した」

リーシャは席につくみんなに謝罪の言葉を述べた。
真面目だよなぁ。

「良いってことよ嬢ちゃん。
俺はトロールのテリート、大工をやってる。
なんたって俺達トロールは力仕事がメインだかんな。
この教会だって俺が修行時代に親方と建てたもんなんだぜ」

トロール。やはりそうか
この巨躯に当てはまる参加者と言えばトロールしかいない。
手を伸ばせばシャンデリアまで届くであろう
腕の長さとそれに伴う高身長、そして、大きく膨れたお腹はトロールの特徴なのだろうか。
こんなこと言ったらテリートは怒るだろうから黙っておくか。

「人間か…」

口を開いたのは腕組をした狼。
黒い体毛。鋭い目付き。尖った牙。
狼の参加者と言えば━━

「私はリンドー。見ての通りのハーフウルフだ、
とある名家のお嬢様の用心棒として雇われていた。
しかし、ある日あの怪物にお嬢様は……くっ。
私がついていながら、情けないばかりだ」

ハーフウルフ。見るからに、というか用心棒という実績上、戦闘には長けているように思えるが、あの化け物には敵わなかったというのか?

「そう自分を責めんなや狼の兄チャン。
アンタの評判は俺の故郷でもよく耳にする。
『黒狼・リンドー』腕のたつ用心棒だって、
今までアンタが護ってきたモンたちは命はもちろん傷1つつけさせないって謳われてきた。
確かに信用問題は落ちるだろうが、しかし━━」

「違う!違うんだ!」

テリートの言葉を遮りリンドーが声を荒げ、立ち上がった。

「ハァ…ハァ…信用問題なんてどうでもいい。
私とお嬢様は恋仲にあったのだ!
用心棒と護衛対象という関係をわかった上でだ」

息を落ち着かせながらリンドーは告白した。

「……そうか、狼の兄チャンも大切なモンを奪われたんだな」

……も?

「俺は弟子を奪われたよ、この世にただ1つの宝物。
血の繋がった実の息子をよ」

「…なっ⁉」

「泣きたくなる気持ちは皆一緒さ」

涙目になりながらテリートはリンドーの肩に手を置いた。
それと同時にリンドーは膝から崩れ落ちた。

「ああああああ!!」

涙の雫とともに。
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