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第三章 風子と小さなラーメン屋
白良浜ラーメン屋さん
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宗一郎さんに紹介してもらった、ラーメン屋でのアルバイトが始まって7日目。
研修中だった私は、今日から独り立ちをすることになった。
天井が高く広々としたホール20席を、私がワンオペレーションで全部回す。
責任重大だ。
けれど、高校生の頃から色んな飲食店で十年働いてきた私にとって、セルフサービスのこの店なら、そんなに難しい仕事とは思わなかった。注文は食券で、配膳も片づけもお客様自身がしてくれる。
そんなシステムの店で、私の仕事は「おもてなし係」だ。
店の壁際に立ちホール全体に目を配ると、カウンター席の水入れピッチャーの残量が目にとまる。
「お水をお足しいたします」
笑顔でお客様に声をかけながらすぐに水を足しに行き、戻りの足で使用済みテーブルを布巾で拭き上げる。現場の空気感に身体が馴染んでいくのを感じる。
長年、飲食の現場で働いて知ったのだが、私は現場にいる時が一番冴えている。先日、図書館に行ったとき、榎本君の司書としての振る舞いはプロフェッショナルだった。
私も、飲食の現場ではプロでありたい。
店の内装は全面ガラス張り、どの席からでも白良浜の海が見える。白とエメラルドグリーンが基調の店内に配置された樫の丸テーブルはどこも満席だ。
ラーメン屋なのに、南国リゾート風というキャッチーな造りで、開放的な独特の風情がある店だ。
白良浜から徒歩一分。白良浜前のメインストリート一等地にあるこの店、「白良浜ラーメン屋さん」は常に人が途切れない。
私は自分の席にラーメンを運び終わったお客様のテーブルへと足を運んだ。お客様は透き通った魚介塩スープのラーメンをスマホで撮影し始めていた。
「いらっしゃいませ!白良浜ラーメン屋さんへようこそ~!」
セルフサービスの店なのに、突然テーブルを訪問する私に、お子様連れのご家族四人は目をぱちくりさせた。グリーンの三角巾と前掛けを巻いた私はにっこり笑う。
「当店のサービスで、ご家族のお写真をお撮りしますがいかがですか?もちろん、お客様のスマホでの撮影で、料金はいただきません」
「いいんですか?じゃあお願いします」
「承りました。よろしければ白良浜の波ポーズをお願いします。こんな感じです」
私がくねくねと手首を動かして波の真似をすると、小学生の子どもたち二人がくすくす笑った。
「フラダンスみたいじゃーん」
「そうです、そのイメージです!」
私の真似をし始めるご兄妹に微笑みながら、お母様のスマホをお預かりした。私は緊張する気持ちを極力出さぬよう配慮して、笑顔を絶やさずスマホを構える。
「くねくね~」
「いいですね~!よろしければ楽し気なほほえみもお願いします!」
7日間の研修のうちの5日間、接客ではなく、写真の撮り方をひたすら練習した。
ラーメンの味は一瞬の快楽だが、写真と記憶はお客様に残る。
「残ったものが満足感で、残るものは何より強いんや」
最初にオーナーから、そう説明を受けた。
「この店が売っているのはラーメンやなく『白良浜の想い出』やで。このコンセプトを貫く店の顔は、おもてなし係の風子ちゃんや。頼むで」
オーナーは溌剌とした笑顔でエールをくれた。
白良浜ラーメン屋さんはたった20席、さらに週5日、一日5時間の短時間営業。
規模、営業時間を含め、どこまでも小さな店だ。
けれど、観光地特別価格であるとはいえ、ラーメン一杯2000円には驚愕した。だがこの強気のお値段でも人波が絶えないのは、小さな店で最大限の満足を提供する工夫が随所にあるからだ。
「では撮ります!はい、白良浜ポーズ~!」
徹底的に練習した写真の撮影マニュアルに当てはめて構図を決める。
何時ごろ、どの席に、何人が座った時などが細かく決まったマニュアルに沿って写真を撮ると、素人でもそこそこ見栄えの良い写真が撮れる。
マニュアルという「枠」は仕事のハードルを下げてくれる。
けれど、飲食店の経験から言わせてもらえば、マニュアルの中で温度を灯すのは人の手だ。
照れくさそうに家族四人が手首をくねくねしたポーズばっちり、光量たっぷり、白良浜の海まで見える写真が撮れた。良い笑顔が写真の枠に収まった。
スマホをお返しして、私はすぐにウエストポーチから、子ども用コースターを五枚ほど取り出してお子様の前に屈む。ババ抜きのカードを引くようにコースターを見せた。
「こちら『白良浜の道しるべコースター』です。お土産にお配りしております。どうぞ一枚お引きください」
「お土産だって、やった!オレこれ!」
「あたしこれ!」
お子様が次々と引いて、私は大人用コースターをまた五枚取り出して、ご両親にも引いてもらった。お子様たちがコースターを見て口を尖らせた。
「えーただの紙じゃん」
「ほんとだーつまんないのー」
「こら、そんなこと言わないの」
お母様が注意するが、皆さん裏も表も真っ白の丸いコースターを見て不思議そうにする。そう、このままではただの紙だ。
「実はこのコースターには秘密があるのです」
私はお子様のコースターを一つ受取り、ラーメン鉢の下にそっと敷いた。
あっ、とお父様は合点がいったように言った。
「温度で色が変わるコースターだ?」
「大正解です!コースターをラーメン鉢の下に敷いて頂いて、食べ終わったらご覧ください。『白良浜から導きの一言』が現れています」
「導きのひとことって何?!」
「食べ終わってからのお楽しみです。美味しく食べてくださいね」
私は人差し指を鼻先に立てて、秘密だよとポーズして笑った。
子どもたちはさっそく箸を持って食べ始める。
私はテーブルの端に白良浜の砂が入った砂時計をことんと置いた。そしてこそっと、ご両親にだけ耳打ちする。
「砂時計が落ち切ったら、もうコースターの色は変わっています。もし食べ終わるまで待ちきれなかった場合は、砂が落ち切ったころにコースターを見せてあげてください」
「ご丁寧に、そんなことまで?ありがとうございます」
「いえ、白良浜を、存分にお楽しみください」
私は深々とご家族皆さんにお辞儀をして、テーブルを辞する。
これが、基本的な私の仕事だ。
ラーメンを食べに来ただけのお客様に素敵なお写真と、ちょっとした楽しみをご提供するのだ。
私はお客様自身が配膳を終えたテーブルをくるくる回る。新しいテーブルを回り終わったころ、先ほどのお子様の声が聞こえた。
「うわ!すご!『勝ち確。』だって!」
「あたしは『えらい。』だって~!アハハ!ラーメン全部食べるの見てたみたい~!」
落ち着いた店内の壁際で待機しながら、きゃらきゃら笑うご家族四人のテーブルを目を細めて見守る。
「ママとパパは何て書いてあったの?」
「ママはね『通知をオフれ。』だって……」
「ママ、スマホばっかり見てるもんね!」
「すごい、道しるべ、ママのこと知ってるじゃん」
「切れ味が鋭いわね、この道しるべ」
お母様はお子様たちとくすくす笑いあいながら、最後にはお父様に与えられた道標の一言『寝ろ。』に大笑いしていた。この一言道しるべ、妙に偉そうなのが味で、つい笑ってしまうのだ。
研修中に、私が初めてこの体験をしたときの一言道しるべは「話せ。」だった。
なぜかどの一言も、私には宗一郎さんの声で再生される。オーナーに聞くとやはり宗一郎さんが監修のコースターで妙に納得した。
この店のオーナーは宗一郎さんの母親の美香子さんだ。
だが、店のコンサルティング担当は宗一郎さんだそうだ。
清い白の空間に、セルフサービスのルールがビシっと敷かれた小さな店は、確かに宗一郎さんっぽい。
海街メゾンには曜日ルールもあって、月曜日は海鮮丼の日、金曜日は映画の日、なんてのもある。
メゾンルールにはまだまだ慣れなくて、意味不明だ。
けれど、飲食店現場という私の慣れた場で、宗一郎さんが作った店のルールを体感すると、すぐわかった。
ルールは働く人を楽にするものだと、現場感覚としてすっと肌に馴染んだのだ。
この店はバシッと分業が決まっていて、客の導線は計算され尽くし、私のやることは明確だ。今まで働いた店と比べて、断トツで仕事がやりやすかった。
小さな店という枠の中で、これだけ濃度の高い体験をつくることができる。
もしかして海街メゾンのルールも、暮らす人が楽になるためだったり──するのだろうか。
研修中だった私は、今日から独り立ちをすることになった。
天井が高く広々としたホール20席を、私がワンオペレーションで全部回す。
責任重大だ。
けれど、高校生の頃から色んな飲食店で十年働いてきた私にとって、セルフサービスのこの店なら、そんなに難しい仕事とは思わなかった。注文は食券で、配膳も片づけもお客様自身がしてくれる。
そんなシステムの店で、私の仕事は「おもてなし係」だ。
店の壁際に立ちホール全体に目を配ると、カウンター席の水入れピッチャーの残量が目にとまる。
「お水をお足しいたします」
笑顔でお客様に声をかけながらすぐに水を足しに行き、戻りの足で使用済みテーブルを布巾で拭き上げる。現場の空気感に身体が馴染んでいくのを感じる。
長年、飲食の現場で働いて知ったのだが、私は現場にいる時が一番冴えている。先日、図書館に行ったとき、榎本君の司書としての振る舞いはプロフェッショナルだった。
私も、飲食の現場ではプロでありたい。
店の内装は全面ガラス張り、どの席からでも白良浜の海が見える。白とエメラルドグリーンが基調の店内に配置された樫の丸テーブルはどこも満席だ。
ラーメン屋なのに、南国リゾート風というキャッチーな造りで、開放的な独特の風情がある店だ。
白良浜から徒歩一分。白良浜前のメインストリート一等地にあるこの店、「白良浜ラーメン屋さん」は常に人が途切れない。
私は自分の席にラーメンを運び終わったお客様のテーブルへと足を運んだ。お客様は透き通った魚介塩スープのラーメンをスマホで撮影し始めていた。
「いらっしゃいませ!白良浜ラーメン屋さんへようこそ~!」
セルフサービスの店なのに、突然テーブルを訪問する私に、お子様連れのご家族四人は目をぱちくりさせた。グリーンの三角巾と前掛けを巻いた私はにっこり笑う。
「当店のサービスで、ご家族のお写真をお撮りしますがいかがですか?もちろん、お客様のスマホでの撮影で、料金はいただきません」
「いいんですか?じゃあお願いします」
「承りました。よろしければ白良浜の波ポーズをお願いします。こんな感じです」
私がくねくねと手首を動かして波の真似をすると、小学生の子どもたち二人がくすくす笑った。
「フラダンスみたいじゃーん」
「そうです、そのイメージです!」
私の真似をし始めるご兄妹に微笑みながら、お母様のスマホをお預かりした。私は緊張する気持ちを極力出さぬよう配慮して、笑顔を絶やさずスマホを構える。
「くねくね~」
「いいですね~!よろしければ楽し気なほほえみもお願いします!」
7日間の研修のうちの5日間、接客ではなく、写真の撮り方をひたすら練習した。
ラーメンの味は一瞬の快楽だが、写真と記憶はお客様に残る。
「残ったものが満足感で、残るものは何より強いんや」
最初にオーナーから、そう説明を受けた。
「この店が売っているのはラーメンやなく『白良浜の想い出』やで。このコンセプトを貫く店の顔は、おもてなし係の風子ちゃんや。頼むで」
オーナーは溌剌とした笑顔でエールをくれた。
白良浜ラーメン屋さんはたった20席、さらに週5日、一日5時間の短時間営業。
規模、営業時間を含め、どこまでも小さな店だ。
けれど、観光地特別価格であるとはいえ、ラーメン一杯2000円には驚愕した。だがこの強気のお値段でも人波が絶えないのは、小さな店で最大限の満足を提供する工夫が随所にあるからだ。
「では撮ります!はい、白良浜ポーズ~!」
徹底的に練習した写真の撮影マニュアルに当てはめて構図を決める。
何時ごろ、どの席に、何人が座った時などが細かく決まったマニュアルに沿って写真を撮ると、素人でもそこそこ見栄えの良い写真が撮れる。
マニュアルという「枠」は仕事のハードルを下げてくれる。
けれど、飲食店の経験から言わせてもらえば、マニュアルの中で温度を灯すのは人の手だ。
照れくさそうに家族四人が手首をくねくねしたポーズばっちり、光量たっぷり、白良浜の海まで見える写真が撮れた。良い笑顔が写真の枠に収まった。
スマホをお返しして、私はすぐにウエストポーチから、子ども用コースターを五枚ほど取り出してお子様の前に屈む。ババ抜きのカードを引くようにコースターを見せた。
「こちら『白良浜の道しるべコースター』です。お土産にお配りしております。どうぞ一枚お引きください」
「お土産だって、やった!オレこれ!」
「あたしこれ!」
お子様が次々と引いて、私は大人用コースターをまた五枚取り出して、ご両親にも引いてもらった。お子様たちがコースターを見て口を尖らせた。
「えーただの紙じゃん」
「ほんとだーつまんないのー」
「こら、そんなこと言わないの」
お母様が注意するが、皆さん裏も表も真っ白の丸いコースターを見て不思議そうにする。そう、このままではただの紙だ。
「実はこのコースターには秘密があるのです」
私はお子様のコースターを一つ受取り、ラーメン鉢の下にそっと敷いた。
あっ、とお父様は合点がいったように言った。
「温度で色が変わるコースターだ?」
「大正解です!コースターをラーメン鉢の下に敷いて頂いて、食べ終わったらご覧ください。『白良浜から導きの一言』が現れています」
「導きのひとことって何?!」
「食べ終わってからのお楽しみです。美味しく食べてくださいね」
私は人差し指を鼻先に立てて、秘密だよとポーズして笑った。
子どもたちはさっそく箸を持って食べ始める。
私はテーブルの端に白良浜の砂が入った砂時計をことんと置いた。そしてこそっと、ご両親にだけ耳打ちする。
「砂時計が落ち切ったら、もうコースターの色は変わっています。もし食べ終わるまで待ちきれなかった場合は、砂が落ち切ったころにコースターを見せてあげてください」
「ご丁寧に、そんなことまで?ありがとうございます」
「いえ、白良浜を、存分にお楽しみください」
私は深々とご家族皆さんにお辞儀をして、テーブルを辞する。
これが、基本的な私の仕事だ。
ラーメンを食べに来ただけのお客様に素敵なお写真と、ちょっとした楽しみをご提供するのだ。
私はお客様自身が配膳を終えたテーブルをくるくる回る。新しいテーブルを回り終わったころ、先ほどのお子様の声が聞こえた。
「うわ!すご!『勝ち確。』だって!」
「あたしは『えらい。』だって~!アハハ!ラーメン全部食べるの見てたみたい~!」
落ち着いた店内の壁際で待機しながら、きゃらきゃら笑うご家族四人のテーブルを目を細めて見守る。
「ママとパパは何て書いてあったの?」
「ママはね『通知をオフれ。』だって……」
「ママ、スマホばっかり見てるもんね!」
「すごい、道しるべ、ママのこと知ってるじゃん」
「切れ味が鋭いわね、この道しるべ」
お母様はお子様たちとくすくす笑いあいながら、最後にはお父様に与えられた道標の一言『寝ろ。』に大笑いしていた。この一言道しるべ、妙に偉そうなのが味で、つい笑ってしまうのだ。
研修中に、私が初めてこの体験をしたときの一言道しるべは「話せ。」だった。
なぜかどの一言も、私には宗一郎さんの声で再生される。オーナーに聞くとやはり宗一郎さんが監修のコースターで妙に納得した。
この店のオーナーは宗一郎さんの母親の美香子さんだ。
だが、店のコンサルティング担当は宗一郎さんだそうだ。
清い白の空間に、セルフサービスのルールがビシっと敷かれた小さな店は、確かに宗一郎さんっぽい。
海街メゾンには曜日ルールもあって、月曜日は海鮮丼の日、金曜日は映画の日、なんてのもある。
メゾンルールにはまだまだ慣れなくて、意味不明だ。
けれど、飲食店現場という私の慣れた場で、宗一郎さんが作った店のルールを体感すると、すぐわかった。
ルールは働く人を楽にするものだと、現場感覚としてすっと肌に馴染んだのだ。
この店はバシッと分業が決まっていて、客の導線は計算され尽くし、私のやることは明確だ。今まで働いた店と比べて、断トツで仕事がやりやすかった。
小さな店という枠の中で、これだけ濃度の高い体験をつくることができる。
もしかして海街メゾンのルールも、暮らす人が楽になるためだったり──するのだろうか。
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