美少女エルフと夢世界転移~Re:Frain~

したらば

文字の大きさ
14 / 29
アリーシャ編■二律背反

13.決意

しおりを挟む

「アリーシャ、そろそろ行こう」

スコットがそう言い、洞窟の方角へ歩き出す。
私は正直まだこの場を離れたくない。
醜い姿で野ざらしになってしまっているヒュッケを、このままにしてはおけない。

「お父様、待って、せめて五分だけ!」

「......早くしろ、追手が来るといけない」

父に急かされ、供養の準備をする。
と言っても道具も資材もないので、本当に簡易的な墓しか作れないが、この際は仕方がない。

アリーシャは懐刀を取り出すと、倒木の枝を切断し、シャベルをこさえた。
焼けてしまった枝から作ったシャベルなど耐久値は知れているが、素手やナイフで土を掘るよりは幾分か効率が良いだろう。

「くっ......」

地面を掘り返す際に踏ん張ると、左足が剣で切りつけられたように痛む。
止まっていた血が再び流れ出し、アリーシャの陶器のように白い肌に赤く細い筋を作り出す。


土を掘るのはなんと骨の折れる作業なのだろう。フェルミナは古くからある土地で地盤がしっかりしており、粘土質が堆積して出来ているため、非常に土が硬い。
ましてや華奢なアリーシャにとっては、非常に過酷な作業であると言えよう。

もう既に十分近く経過しているが、なかなか大人一人を埋める程の大きさにならない。


スコットは手伝う素振りもなく、ただ辺りを警戒している。
──いや、警戒しているように見えるだけかもしれない。


今日のスコットは少し様子がおかしい。

先程までは意識していなかったのだが、目が若干血走っているように見えるし、肌の色も、なんだか──血の気が感じられない。

普段の父なら、迷わず手伝ってくれる。
いや、むしろ私に代わって掘ってくれるはずだ。

それに、ヒュッケは父の魔法の教え子でもあり、溺愛している私の次くらいに可愛がっていたのに。
どうしてこんなに冷たい対応を取るのだろう。
せめて涙を流すくらいしてもいいのに......。


土を掘り出してから三十分ほど経過したあたりで、ようやく埋葬できるほどの大きさの穴がぽっかりと口を開けた。

アリーシャは焼けて痩せ細ってしまったヒュッケを抱きしめると、穴の中にそっと横たえた。

──こんなに軽いなんて。

「苦しかったね、ゴメンね、ヒュッケ......。」


遺体の指から指輪を外し、自分の右中指に付ける。少しぶかぶかだけど、大丈夫。
これからは、私を守ってくれる。


遺体にそっと口付けをし、静かに土を被せていく。
半分くらい埋めたところで、私は魔除のお守りのブレスレットを左腕から外すと、ヒュッケの腕に付けた。

「これは貴方が私にくれたお守り。今まで私のことを守ってくれた。今度は貴方自身を守る番。どうか、いつまでも安らかに......」


アリーシャはヒュッケを土に返すと、最後にそばにあった大きめの石を墓標に、懐刀で文字を掘った。



──最愛の友人、ここに眠る──



毎朝行っている神への祈りを、親友に向けて行う。
墓石の前にひざまづき、アリーシャは両手をしっかりと握りあって目を瞑ると、小さく祈りを捧げた。


「我が神よ、友に永遠の安寧をお与えください」



アリーシャは、最後に一筋の涙を流したのち、指で静かに拭って立ち上がる。

もう迷うことはない。
これからやるべき事も決まった。

新たな決意を胸に、歩き出す。
村のかたき、森の敵、そして──


友の敵を討つのだと。



右手につけた指輪が、応えるように一瞬煌めいた。



──アリーシャ、がんばれ────
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

それは思い出せない思い出

あんど もあ
ファンタジー
俺には、食べた事の無いケーキの記憶がある。 丸くて白くて赤いのが載ってて、切ると三角になる、甘いケーキ。自分であのケーキを作れるようになろうとケーキ屋で働くことにした俺は、無意識に周りの人を幸せにしていく。

処理中です...