能なし転生者は、スローライフを望んでる ~能なしとして処分されたけど、属性変化スキルで生き延びる!~

佐藤遼空

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3 悪戦苦闘

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僕は改めて二人に言った。

「よくよく考えたら、役割をちゃんと考えてとりかかるべきでしたね」
「確かに。なんとなくじゃあダメだ」

 エリナの言葉に、キャルも真剣な面持ちで頷く。

「正直言うと、どのポイントにいるかは判っても、地中のどの辺、ってのを探るのはまだ難しい。それに集中してると、やっつける役は難しいかも」

 エリナに続けて、僕は言った。

「地面を掘るのって、意外に重労働なんでそれは僕がやった方が、長続きするんじゃないかと思うんですけど。直接狙われる役ですし。ただ、掘るのとやっつけるのは、同時は難しいですね」

 僕とエリナの言葉を聞いて、キャルが口を開く。

「じゃあ、わたしがヒモグラをやっつける役ね。……できるかしら?」
「武器はこの前渡した、警棒でやってみたら」
「うん。使ってみる」

 キャルが言った後で、エリナが口を開く。

「という事は、私は盾役でもあるわけだね。けど、索敵と盾は一緒の方がいいかもしれない。少なくとも、出現にそれほど驚かないから」
「よし、じゃあこれで行ってみましょう!」

 僕らは配置を決めると、新たなヒモグラ探しに取り掛かった。

「うん、此処にいる」
「じゃあ、掘りますよ」

 僕はエリナの教えたポイントを掘り始めた。
 と、ヒモグラが飛び出してくる。ヒモグラは火を噴いた。
 エリナが盾で僕をかばう。

「えいっ!」

 キャルが警棒を振った。――が、それは空を切る。
 ヒモグラはあっという間に、地中に姿を消した。

「ご、ごめんなさい。外しちゃった……」
「大丈夫、大丈夫。最初からうまくいくことなんてないよ」

 僕はキャルにそう言うと、エリナも笑って頷いた。
 
 僕らは新たなヒモグラ探しにとりかかる。
 今度もヒモグラが飛び出してきた。火を噴く。それを守る。

「えぃっ!」

 当たった。が、横に飛ばされたヒモグラは、まだ生きていてそのまま地中に逃げてしまった。

「あ……」

 僕らは呆然と、ヒモグラを見送った。キャルが涙目で口を開く。

「ご…ごめんなさい。わたしがちゃんとできなくて!」
「ううん、キャルが優しいから、力を込めるのが難しいだけだよ」
「そうそう。次第にできるようになるよ」

 僕とエリナが慰めると、キャルがう~、と唸った。…可愛いな。

 しかしそれから二回の空振り、三回の当たったけど逃げられたを繰り返すと、キャルが観念したように口を開いた。

「わ、わたし、やっつける役ダメかも……」
「そっか。じゃあ、僕がやっつける役やるよ。土掘るの結構大変だけど、大丈夫かな?」
 
 僕の言葉に、キャルは頷いた。

「うん、頑張る」
「キャルちゃんは、私がしっかり守るからね」

 エリナもそう声をあげた。

「じゃあ、僕はあれを出そう」

 僕は装備から、作った鉄棒を取り出した。ブンブンと振ってみる。
 これなら、当たればそれなりのダメージだろう。

「じゃあ、いってみましょう」

 再びエリナの探索。と、エリナが足を止める。

「此処にいるね」
「エリナさん、見つけるの早くなってません?」
「うん。感覚を掴んだ」

 エリナは、にっと笑ってみせた。

「じゃあ、掘ります!」
 
 キャルが地面を掘り出す。しばらく掘ると、エリナが声をあげた。

「ストップ! そこで止めて」

 キャルの動きが止まる。

「うん。次に掘ったら、飛び出してくると思う。クオンくん、準備はいい?」
「いつでも」
「じゃあ、キャルちゃんお願い」

 キャルが真剣な面持ちで頷いた。そしてズガっとスコップを一つ入れる。
 と、ヒモグラが飛び出してきた。
 空中でヒモグラが火を噴く。

「きゃあ!」

 キャルが思わず悲鳴をあげる。が、その身体は、エリナが盾で守っていた。
 僕はバットのように構えた鉄棒を、斜め下に振り下ろす。

 バン、という感じの手ごたえとともに、ヒモグラの身体が地面に叩きつけられた。
 やった!
 ――と、思った瞬間、ヒモグラはまだ動いていた。

「「「あ」」」

 そして一瞬で、地面を掘って姿を消してしまった。

「に…逃げちゃいましたね」
「うむ――」

 呆然とする二人に、僕は言った。

「ヒモグラ、意外に頑丈ですよ。僕、それなりに力入れてましたもん。キャルがやっつけきれなかったのも、無理なかったよ」
「そっか……そうだったんだね」

 キャルが納得した顔で息をついた。

「どうする、クオンくん?」
「今度は鉄棒を軽くして振ってみます。多分、鋭さは増すはず」
「よし、やってみよう」

 再び僕らはヒモグラ探し。そしてキャルがある程度掘ったところで、エリナが止めた。
 エリナの合図で、キャルが最後の掘りを入れる。飛び出してくるヒモグラ。
 
 僕はほとんど重さがないほどに軽くした鉄棒を、見えないくらいの速度で振り切った。

 バシン、とヒモグラが地面に叩きつけられる。
 今度は動かない。――と、思ったけど、少ししたらピクピク動き出した。
 で、一瞬で地面に消えた。

「あ――また逃げてしまった。今、ちょっと動かなかったらいい感じだったのに」
「はい。あの感じでいいと思います。ちょっと今度は、トドメを刺します」

 僕はそう言うと、その場で鉄棒を柔らかくした。
 柄の先になる部分を指で加工して、尖らせる。

「これでよし。今度こそ、取りましょう」
「うん」

 エリナが大きく意気込むと、キャルも真剣な顔で頷いた。

 そしてヒモグラを探り当てる。キャルが掘り、ヒモグラが飛び出して火を噴く。

「ハッ!」

 僕は気合とともに、鉄棒を振り抜いた。
 ヒモグラが地面に叩きつけられる。と、すかさず僕は、柄の先でヒモグラを刺した。

 さすがのヒモグラも、それで流血して動かなくなった。

「やった……」

 僕の口から、思わず声が洩れた。

「やった! やりましたよ!」
「やった! やったな、クオンくん!」
「やったね、クオン! 凄いわ!」

 僕たちは手を取り合って、輪になって跳ねて喜んだ。

 三人で協力して、一つの目標が達成できたのだ。
 僕は能なしかもしれないけど――僕たちは力を合わせれば、目標を達成できる。
 今まで生きてきて、初めて感じた充足感だった。

「よ~し、一匹取れればこの調子で、あと9匹とるだけだ! 私たちは、やればできる! いけるぞ、『ブランケッツ』!」

上気した顔で、エリナが言った。僕とキャルも、大きく頷いた。



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