書きの種 ’25(エッセイ)

佐藤遼空

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『べらぼう』に見る、少女マンガと組織論

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『べらぼう』を、まあ結構面白く見るわけである。おお、そんな情報満載でしかも薄くて安い本作ったのか。これが事実なんだから本当に凄いよ思う。何が凄いって、リアル蔦屋重三郎の実績が凄い。それを今まで敵のようだった本問屋たちが買い求める。おお、蔦重、逆転勝利じゃないか!

で、見終わるとですね、次回予告があるわけです。それを見ると、凄くがっくりする。「問屋に加えるわけにはいきませんね」かなんか言われてる。それで思うのだ、ああ…また蔦重は苦難の道か――と。

正直、重い気分になって、もう次回見るの止めようかなとか思うのだ。けど、それは前回も前々回も思った。けど、見てみるとそれなりに面白くて、ちゃんと見ちゃうのだ。で、思うんだね。「次回予告ないほうがよくない?」

これ、なまじ次回予告があって、その中でうまくいかない情報が小出しにされるから、次回見るのが凄く気分が重いんだね。けど、よくよく考えてみたらだよ。少女マンガの多くは、こういう構造じゃないかな? ヒロインんがなんとか苦難を乗り切った――と思ったら、また次の不安材料や苦難。それの連続。

これはね、敵を倒したらすぐに次の敵が来るという、少年マンガの構造と似てるんだけど、ちょっと違うんだね。少年マンガの敵は、障害ではあるんだけど、不安はないわけ。けど少女マンガの苦難は、なんか不安とか不吉な予兆とともにやってくる。で、『べらぼう』って、いつまでたっても蔦重のサクセスストーリーにならない。これは『べらぼう』が少女マンガの構造なんだと理解した。

それはともかくとして。今回は出てこなかったけど、石坂浩二がやってる右近衛将監。あれ、リアルだね~。幕府の財政は火の車。それで田沼億次がなんとか金策を考えてるのに、金を浪費する権現参りをしたいとか言い出す。で、そもそも金のことなぞ考えるのは「武士のすることではない」みたいな、妙なプライドだけある。あのプライド、あれ今の日産の役員の戯画かと思ったわ。

自分たちの会社の出自だけ妙なプライドを持ってて、実際の営業利益は完全赤字。それなのに救済策をホンダが提示しても、「そんな100%子会社など認められん」とはねのける。懐困ってるのは自分たちなのに、自分たちの方が「偉い」んだという態度を捨てきれない。いやあ見事に描けてると感心する。
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