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婚約破棄編
第11話・実家に帰らせていただきますわあ!
しおりを挟むーーーあの後は怒涛の展開だった、とエミリアは思い出す。
王妃の離婚&実家に帰らせていただきますー宣言の後、国王はそれはそれは怒り狂った。
白い肌をタコのように真っ赤にしてギャーギャー喚く姿は、とてもこの国の頂点だとは思えない程滑稽な姿であった。
まあ、それはそうだろう。
なんてったって、彼は王妃に仕事を押し付け自分は異国からの輸入品である、キャンディーカルメ焼きなるものを堪能するだけの生活だったのだ。周りの貴族が勝手に勘違いしてお飾り妃なんて言った日にはいっちょスキップかましながらだらしない腹をぶるんぶるん揺らして踊った記憶もある。
そんな王妃がいなくなれば、かれこれ何年もほとんどの仕事を押し付けていた国王に、今の政治や国際状況を把握する時間なんてない。仕事をしてこなかった彼は、全くそんなの知らない。つまり、仕事ができなくなる。
国王は喚きに喚いた。
だが、母国では賢姫とまで呼ばれた彼女だ。国王が口で勝てるはずもない。
王妃は自分がクロケット一家を連れて自国へ帰ることを条件に、この国の一切を国王に任せる、つまり、自分の好きなように国を動かせるぞ、口八丁に言いくるめ、ついには婚姻破棄届けにサインまでさせたのだ。
国王がある程度国を動かせるのは当たり前だし、それどころか侯爵位をやってでも引き留めたかったクロケット夫妻は彼女に取られるだなんて、興奮していた国王は気が付かなかったのだ。
(一方的な)オハナシの中で、一等ひどかったのが子供の話しである。
ぽわんぽわんぽわわ~ん
「二人は私が連れていきますわ。」
「なんだと!勝手を言うな!アレは私の子だ!!」
「自分の子供をアレ呼ばわりですか。それに、あなたは子供を道具としか思っていないでしょう…!どんなに愚かでも、あの子達は私の子供よ」
どんどんヒートアップし、クロケット一家置いてけぼりで進行する国まるごと巻き込みそうな騒動は、なかなか聞くに耐えないものだった。
国王はこんなにバカだったか?いや、そんなことはない。
云うなれば、王妃が完璧超人だったため、ダメ男なバカになってしまったのだろう。
「今の今まで、私は仕事を黙ってこなしてきた。それは、ひとえにこの国と、子供達のためですわ。あなたの元においてはおけない。今回の件でわかったわ。あなたといると、息子達は愚かになると。蛙の子は蛙とはよく行ったものだわ!」
「なんだと…!?」
ヒートアップしていく国の頂点2人に、クロケット一家も周りの侍女執事護衛達も冷や汗ダラダラである。
「とにかく、子供は私が連れて行きます。」
「そうなったら、跡継ぎはーーー」
「知っていますわよ、フォンディナム公爵夫人とのお子さんがいるじゃない?」
「ーーー!!どこでそれをっ、」
「私が、あなた様の浮気に気付いていないとでも?妊娠したんですってねえ、でも、まだ堕ろしていないんでしょう?」
エミリアは、スッと表情が抜け落ちた。
スカーレットに妙に優しかったのは、それでか、と。
もうやだ、大人は汚いよう。一生ネバーランドの住人でいたい。
「な、なぜ、違う、私はっ、むりやり」
「問答無用ですわ。一番はじめの契約では、側妃も愛人も作らぬと、互いに同意した。それも、あなたから仰った契約だわ。」
国王は、タコのような真っ赤な顔はどこへやら、真っ青になって伏いてしまった。
「子供達は、私が連れていきますわ。いいですわね?」
ーーー「…分かっ、た…」
弱々しい国王の姿と声が、笑いーーーおっと間違えた、涙をさそう。
だが、エミリアはある一つの問題点に気づいた。
ーーーうん?てことは、あのストーカー王子ついてくんの?
エミリアは、自身の顔の筋肉がひくひく引きつっていくのを感じた。
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