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ワクワク☆ドキドキ♡始まりへの船旅編
第17話・花と鼻ですれ違い
しおりを挟むーーーカイベル・フォンディナムは、船の中で両親と共に談笑している想い人をこっそり見つめた。
整った顔を歓喜に染め、まろい頬を赤く染める美少年を、幸か不幸か誰も気にかけることはなかった。
その鼻には痛々しく白い布が被っており、この傷は両親と大もめしてつけられたものだ。
まあ、情報料兼運賃料、なによりエミリアとともにいれる歓喜に比べたら、安い傷である。
暫くして、彼女の両親が離れたのを見計らい、さり気なくカイベルはエミリアに近づいた。
「エミリア嬢」
「…………カイベル様。御機嫌よう…」
心なしか大分間があったが、そんなことは気にしない。
「あの、姉のせいでこのようになってしまいすみません…。後、僕、貴方にどうしても話したいことがあって」
勿論想いを告げることであるが、まだ早い。
カイベルはこれから、自国の知り合いもおらず困惑しているエミリアに手を差し伸べ、唯一の親友、そしてゆくゆくは…。
湧き上がる快感と笑みをこらえ、カイベルは儚げに微笑んだ。
「は、はな…、花、ご、ごごごめんなさい。」
青い顔をして謝る彼女に、カイベルは驚いた顔をする。
なんと、鼻のことを今回の渡国が原因だとしっていたのか。なんと優しいのだ、この少女は。一番の被害者である彼女が真っ青になって謝る必要はないのに。
「いいえ、あなたが気にする必要はありません。」
カイベルは、目の前の優しい少女を安心させられる用、きっぱりとそう断言した。
「はわ……」
エミリアは、顔を真っ青にしたままだ。
優しい彼女のことだ、カイベルにそう言わせてしまったのが申し訳ないのだろう。
カイベルは再度微笑んで、エミリアの両親と入れ違いに、軽い会釈をして部屋を出た。
ーーーカイベルは、知らない。
気にする必要はない、というのを、エミリアはもう少しで復讐をするつもりなのだ、今更気にしても手遅れだ、というのを暗に伝えているのだと勘違いして青くなり、震えていることを。
そして、同刻、アルベルトはエミリアを探し始めた。
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