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ワクワク☆ドキドキ♡始まりへの船旅編

第18話・アルベルトの後悔と思い出 前

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しばらくサボっていてすみませんでした。
どうしても手が進まず…。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ーーーアルベルト・ゲーチェリー・ツェルガは、後悔していた。

そもそもの始まりは、学園内でとある少女を見つけたことだ。
窓から校舎裏をひょっこりと覗くと、陽の光に当てられた天使と見間違う程美しい少女が、盛り上がった土に対して花を添え、手を合わせていたのである。

合わせている手の指は細く白く、苦労を知らない手であったが、その手はお世辞にも綺麗とは言えない、泥だらけの状態であった。

それからだ。少女を気にするようになったのは。

少女は、愛されている者だった。
アルベルトは、嫉妬のような、憎悪には遠いが、似たようなものを少女ーーーエミリアに感じた。

自身は愛とは、かなり遠い位置にいたから。

父親とはあまり話さず、気まぐれに菓子を与えられ、成績を聞いてくるだけ。
母は愛してくれているのだろうが、激務に追われ、あまり構ってもらった記憶はない。
兄も淡白なもので、たまに会っては気にかけてくれるが、母と同様、一ヶ月に数回顔を合わせる程度であった。

幼き頃は共に囲んでいた食卓も、今ではバラバラに、部屋で食べるようになってしまった。
そもそもそれは、兄が毒をもられたのが原因で、食を誰かと食べるという行為を恐れてしまったのである。

そのため、立食式のパーティーでは何も口にせず、どうしても何か食べなければいけないときは代わりにアルベルトが飲むというふうにしていた。
それで許されているのは、顔と身分と、それからまだ幼いからではあるが。

たからこそ、なんでも持つエミリアに嫉妬したのだ。

整った容姿に、美しい体躯。
綺麗な髪も肌も、恵まれた才能も。
周りの人間に愛され、そして愛す彼女も。

全部全部、自身の理想に近い形であった。


ーーーだからこそ、衝撃的だった出来事がある。

その日はあいにくの雨で、ジメジメとした空気に苛々としていた。
だから、自分の取り巻き達に、ぽつりと零してしまったのである。

「エミリア・クロケットは、本当にいいひとなのか?」と。

言い出したら、止まらなかった。

「そもそも、そう演じているだけだろう」
「愛される自分に酔っている」
「優しい少女を演じている自分に対して悦に浸っている」
「身分もそれ程高くないくせに」

そういったとき、ほとんどの周りの者は戸惑う表情をしながらも、口では薄っぺらく同意の意を示していた。
アルベルトは、ああやっぱり、と目を細めた。

「そうですよね!」
「私も、前々からそうではないかと思っていたのです」

薄っぺらい、薄っぺらい。
ほれ、見たことか。
結局、エミリア・クロケットも、この程度しか愛されていない。
自分のほうが、上ではないか。



















「巫山戯ないでください。」

凛とした、ボーイソプラノだった。

「先輩方が、教材室で何を語っていると思えば、同級生の女のコ一人の陰口ですか?あまり美しい行為ではありませんね。」

ーーーカイベル・フォンディナム。
確か、学園内では、その容姿と丁寧な物腰が人気な生徒であった。

「エミリア・クロケットのこと、何も知らないくせに、何を語るっていうんです?」

濁った黄色が、アルベルトを捉えた。

「彼女のことは、僕が一番知っている。僕が一番愛してる。彼女の肌はきめ細やかで、白く、白粉なんてつけなくたって美しい。彼女の髪、あの蜂蜜色の髪に使っている石鹸は、はちみつの香りがするんだ。だから、彼女の髪からはいつも蜂蜜の甘い香りがする。あのグリーンアイ、硝子のような透き通った瞳に僕が映るたび、歓喜に身体が震えるんだ。それに、あの華奢で骨の髄まで美しい身体からは想像もつかないくらい魔法の才能がある。それこそ、彼女は聖女のようなんだ。けれど、そんなものはオマケでしかない。彼女の本当の魅力は、その清らかな心根なんだ。初めは一目惚れだったんだけど、彼女に救ってもらえて、僕は、僕の一目惚れなんていう皮一枚を見ただけで判断した自分が如何に愚かだったか思い知った。ああ、勿論、彼女の皮も愛しているけれど。それどころか、髪の毛一本、睫毛一本だって全て僕のものにしたい。ああ、けれど、邪魔な奴が多いんだよな。でもね、最後に手に入れるのは僕だよ。完璧な計画を立ててあるんだ。子供は2人は欲しいな。できれば女のコで。だって、僕以外の男が彼女のそばで、彼女の愛情を身いっぱいに浴びるなんて、いくら自分の子供でも許せない。狂ってしまう。まあ、女のコだとしても、あまり愛されすぎるようなら邪魔でしかないけど、彼女の血が通った女だと思えば愛せるような気がするんだ。楽しみとか、ワクワクするって、こういうことを言うんでしょ?大丈夫、まだ待てる。あー、待てなくなったらどうしようかな。
ーーーふう。てことで、僕のほうが彼女のこと知っているし、彼女をあいしているんだよ。分かった?わかったら、もうくだらない盲言を吐き散らさないでください。それでは、失礼します。」


ーーーアルベルトは、先程までの嫉妬と憎悪に似たなにかが、すとんと同情に変わった。


ああ、そうか、彼女は確かに愛されている。

だけど、愛されすぎると、こうなるのか…。

アルベルトは、彼女に深く深く同情した。
自分は、こんなものに愛されるくらいなら、今のままの方がマシだ、と。
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