官吏になりたい僕ですが、宰相が本気で邪魔してくる

すみよし

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三度目

12 不出来な弟子も餌になる

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 現実的に資金がギリギリ。来年、僕は成人を迎える。四度目も試験に落ちてそれから別の道を考える場合、今より選択できる道は狭まるだろう。

 その上、すでに厳しい世界に身を置いて頑張っている友人たちと、世間に出ずに浪人生活を送っている僕の差は、開くばかり。その焦りもある。

 やめる理由なんて、いくらでも挙げられる。だけど。

「受けます」

 僕はようやく体を起こしてカイルさんに告げる。

「もう一年。もう一年だけ受けます。来年落ちたら、厳しいでしょうが他の道を考えます」

 カイルさんは、そうですか、とただ笑った。

「それでは、もう一年だけ好きになさい。身元保証人は続けましょう。推薦状はいつもの方にお願いしますか?」

 クスクスと笑うカイルさんに、僕は不安になる。

 僕が試験後一番挨拶に行きたい相手は、推薦状を書いてくださるその方なのだけど、それは断られているのだ。人目につくのはお互いよくない、と言う理由で。

「やはり、あの方は僕に推薦状を書いたせいで、お気の毒なことになっているのですか?」

 毎年、それが気がかりだった。

「そういった話は私の耳には入っていません。物好きだと話のネタにはなっているようですね。尤も、それを気になさる方なら、推薦状は書いて下さらないでしょう」

 彼も官吏として生き延びて来たのですから、心配はいらないでしょう、とカイルさんは請け負う。

「ただし、来年は貴方に推薦状を書きましょうと言う方が、たくさん現れるかも知れませんね。いつものあの方はご無事ですし」

 それは、ちょっと面倒なことになりそうだ。僕を利用したい人は、やはり、多いんだろうな。

 僕が嫌そうな顔をするのを少し眺めて、カイルさんが言う。

「私もいたずらに不出来な弟子を好きにさせているわけではないのですから」

 ニコリと微笑む皇帝侍従は、僕を餌にどなたを釣り上げようとしているのだろう。

「貴方が官吏なら、私の立場上こういうことはできません。受かるまでは精々私に使われなさい」

 嫌ならとっとと受かること。僕は「はい」と言うしかない。

 ※

 そうして、僕は四度目の試験に挑戦する。

 宮の官吏の間で「どんな奴が我が部署に来るか?」より、「さて、宰相閣下がどう出るか?」の方が多く話題に上った僕の四度目の受験は、意外な結果に終わる。
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