Dream of Alice

彩。

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少年との出会いと

九話「賑やかで楽しそうね」

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「時計を取ってきてくれてありがとう。大変だったでしょう?」

井沢さんと約束していた町にひとつしかない宿へと向かい、ソルトくんが時計を渡すと笑顔で言ってくる。その笑顔を向けられたソルトくんは、頬を赤く染めそっぽを向きながら答える。

「そんなことねぇし。楽勝だった」

そういうけどソルトくんは食べられ、酷い目にあい倒したのは飛鳥くんで大変で、けして楽勝ではなかったと思うが、目の前にいたちろる先輩が首を振り何もいうなと視線で言ってきたので、男のプライドと思うことにし、黙っておいた。

「そうなんだ! 禾本くんって強いんだね」
「ま、まぁな……」
「……」

ソルトくんは確かに一瞬で相手の剣を弾くほど強いのだけど、なんだろうかこの複雑な気持ちは。井沢さんと私とじゃ態度が全く違うからかな?

「じゃあ、約束の宿代……払っておいたよ」
「お、井沢ありがとう」
「ううん、約束だったし。それにね……私」
「?」

井沢さんの視線がソルトくんから私に向く。

「甘泉さ……ううん、陽菜ちゃんって呼んでいいかな? 私のことは姫亜って呼んでいいから」
「え……」
「同じ女の子同士仲良くなりたいなぁって思って。ダメかな?」

美少女である井沢さんが困ったように笑い首を傾け聞いて来る。その表情は、女の私でも可愛らしく、断ろうという気持ちがなくなる。
それに、女の子の知り合いなんて記憶喪失になってはじめて会ったし、仲良くなりたいとも思った。

「ダメじゃないです……その、よろしくお願いします。……姫亜ちゃん」
「うん、宜しくね陽菜ちゃん!」

姫亜ちゃんが私の手を取り、にっこりと笑う。間近で見る笑顔も可愛く、ソルトくんが弱くなるのも当たり前かもしれない。

「女友達出来て良かったな陽菜ちゃん」
「ちろる先輩」

姫亜ちゃんの笑顔が眩しく感じていると、ちろる先輩が近付いてくる。そして、彼女の腕にぶら下げてある時計を見ると、目を細め口を開く。

「ところで井沢ちゃんはこの時計の主は知っているのか?」
「……。貴方は知りたいの?」
「あぁ……ちょっと気になることがあるし話を聞きたいし……なぁ、あす……お」
「あ……」

ちろる先輩が後ろに振り向くと、そこにはいると思った飛鳥くんがいなかった。いつからいなかったのだろうか。

「アイツ、町入る前に俺らが会話している間にふらっと逃げましたよ」
「え、マジかよ!? ……俺が気が付かないくらいさりげなく抜けるなんて……やるな」

ちろる先輩は腕組みをし、何故そんなに楽しそうなのかというくらい楽しそうに笑っている。
でも、飛鳥くんはここ宿がひとつしかないのに逃げたということはどこで寝る気なんだろうか。テントでもたてて野宿でもするのだろうか。

「なんでは飛鳥くんはそんなにここの町嫌がるんだ?」
「さぁ、結界でも張られてて入れないとかじゃないスか」
「え、飛鳥くん……そんな呪いが……」
「陽菜ちゃん冗談だから。……でも、不思議だよな~」

ちろる先輩はちらりと姫亜ちゃんを見る。私の手を離した彼女はその視線を受け、にっこりと笑う。

「……で、時計の主は知っているのか?」
「そうね……ごめんなさい。依頼されているだけで、私達は持ち主は知らないの」
「本当に?」
「えぇ……」
「……」

ちろる先輩は本当かと見抜く為か、姫亜ちゃんの瞳をじっーと見つめる。数秒見つめると、納得したのか私達の方に視線を戻す。

「だとよ。時計の謎がわかるかもしれないと思ったが……」
「先輩! 先輩の睨み怖いんスからそんなに睨むことないと思うスよ! 大体井沢は……」
「あーはいはい。ソルは今日も美少女に弱いんだね。元気だねー」
「なんなんスかー! その感じはー!」

ぎゃーぎゃーっと会話し始めた二人に慌てていると、隣でくすくす笑う声がする。そういえば、姫亜ちゃんがいるのにと二人を止めようとすると彼女から話しかけて来た。

「賑やかで楽しそうね」
「は、はい! それはもう!」
「ふふ、それは……」
「ひーめーあ!!」
「!?」

女の子の声がしたと思ったら手がにょっと横から現れ、後ろから抱き付かれた。姫亜ちゃんじゃなく私に。驚きにゆっくりと抱き付かれた相手を見る。

「遅れてごめんー」
「むぎ……」
「いやーおいしいカプをみてしまってさーつい追いかけてしまったというか」
「それはいいよ。だから……」
「え? いいの? 依頼絶対しないといけないってやつだったじゃん! それをいいよで終わらせるの!? あの姫亜が? いつもなら笑顔で怒ってくる……」
「陽菜ちゃんを離してあげて」
「? あ」

姫亜ちゃんに言われて、抱き付かれて困っている私にやっと気付いたらしくぱっと離れてくれた。

「なんか抱き付きやすいいい背丈の子がいたから……ついつい。ごめんねー。えっと、陽菜さん?」
「は、はい……私の名前は甘泉陽菜です。貴方は……」
「私は筒井こむぎ! むぎって呼ばれること多いからそう呼んでくれ!」
「は、はぁ……」
「私は君のことは陽菜って呼ぶ! これは決定事項である!」
「は、はぁ?」
「陽菜ちゃん、嫌なら嫌って言わないとむぎに伝わらないからね」

流されている私に、姫亜ちゃんが苦笑いで助言をくれる。

「いえ……名前はお好きに呼んでくれても構わないので別に……むぎさんは」
「かたい! せめて、むぎちゃんだな陽菜!」
「む、むぎちゃんは姫亜ちゃんの待っていた友達ですか?」
「そうだとも! 昔からの知り合いで仲のいい友達だ!」

腰に両手を当てて、自慢のようにいうむぎちゃんに姫亜ちゃんは呆れた顔をしている。中々、元気がいい人のようだ。

「まぁ、むぎはうるさいけど悪い人じゃないから一晩宜しくね」
「は、はぁ……って、え?」

一晩とはどういうことかと、姫亜ちゃんの顔を見るとにっこりと笑い、ソルトくん達の方に声をかける。

「さっき言い忘れたけど、部屋は二部屋しか取れなかったんだ」
「へ?」
「お?」

じゃれ合っていた二人は、姫亜ちゃんの言葉に止めこちらの方に向く。部屋数が元々少なそうだから二部屋しか取れなかったのも納得だけど、それがなにかと彼女を見つめる。

「? 俺らの部屋と井沢達の部屋だろ? それのなにが問題……」
「ありまくりよ!!」
「うお!?」

むぎちゃんが勢いよくソルトくんの前に行く。

「男二人に女である陽菜が一人……何かあったらどうすんの!?」
「な、何かって……今まで一緒に寝ていたし別に……」
「ないかもって言い切れるの!?」
「言い切れると思うけど……そうだなぁ……」
「?」

ちろる先輩が、むぎちゃんから私に視線を向ける。

「陽菜ちゃんはいつもいる俺らといたい? それとも知り合った女の子達と話していたい?」
「あ……」

そうか。折角ここで会った女の子達と一緒に話せるかもしれないんだ。いつもなら、ソルトくん達と居る方が選ぶけど、二人と一緒にいて悪い気はしないし……私は。

「彼女達といたいです」

そう言うと、全員笑って頷いてくれた。


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