異世界留学！隣の席は、銀髪クールな竜人プリンス様だった！

エピローグ

　蒼天学園、最後の春……。
　卒業式が終わって、校舎はすっかり静かになっていた。

　みんなが帰ったあと、私はこっそり、あの部屋に立ち寄った。

　異世界のゲートがあった場所に――。
　あの春、何も知らなかったあたしの世界に、銀色の風が吹いた場所。
　窓の外には、もう桜が咲いていた。
　季節はめぐって、時が過ぎて、それでも、心の中の景色は色あせない。

　異世界から戻った時には、時間は戻っていた。ううん、元に戻っただけ。
　あのドキドキの体験は、私の胸のかなに絶対あったんだ。

　でも――。

「……来るわけ、ないよね」

　ぽつりとつぶやいたそのときだった。
　きゅう、と風が吹いて、部屋の空気が揺れた。

　どこか懐かしい、匂いがする。

　胸をぎゅっと締め付ける……。
　なんだろう。知ってる。この匂い。

　涙が自然と、溢れてくる。
　必死に止めようとしても、止まらない。

「……シウ、くん……？」

　振り返ると、そこにいた。

　変わらない銀の髪。だけど、少し大人びた顔。

「約束、したからね。」
「……っ」

　夢じゃない。
　ほんとうに、帰ってきてくれた。

　あたしは、気づけば走り出していて、次の瞬間、シウくんの胸に飛び込んでいた。

「おかえり、シウくん……！」
「ああ。ただいま――あや。」

　ぎゅっと、腕があたしを抱きしめた。

　どちらの世界でもない、“ふたりの場所”で、
　私たちはまた出会えた。

　もう迷わない。
　この手を、絶対に離さない。

「これからの“未来”は、ふたりで作ろう。」
「……うん！」

　恋して、強くなって、
　そして今度は──一緒に未来を歩いていく。


　　　　◇◆◇


　私は蒼天学園の一色あや。
　地味な私は、少しドジで、おっちょこちょい。
　いつも、自分に素直になれなくて、本当の自分から目を逸らしていた。

　本当は、変わりたい。
　新しい自分になって、羽ばたきたい。

　そう思ってた。

　でも、あることをきっかけに……。

　私は新しい自分になって、羽ばたくことができた。

　これは、ちょっと不思議で、めちゃくちゃドキドキな恋の物語。