異世界留学!隣の席は、銀髪クールな竜人プリンス様だった!

飢杉

文字の大きさ
21 / 22

第20羽 異世界とのお別れ

しおりを挟む

 空が割れて、白い光が溢れた。
 境界の“裂け目”の中心で、わたしはひとり立っていた。

「……あや!」

 走ってくる、銀の髪。

 ――シウくんだ。

 その後ろに、ロイくんや、みほ、ミアちゃん、そして如月先生までが次々と現れる。

「みんな――!」

 あとは、この“裂け目”を閉じるだけ。

「……でも、閉じたら、もう元の場所には戻れない。人間界と異世界の扉は完全に封印される。二度と行き来はできないだろう。」

 シウくんの言葉に、胸が苦しくなった。
 そんなの――さよなら、ってこと?

「異世界留学は、元々……印を生む者を見つけるために提案したのよ。そして、それがあなただったの。本当は、異世界と人間界が繋がっててはいけなかったのよ。ごめんなさい。あなたを利用してしまって」
「……それじゃ、もう、会えないの?」

 如月先生の瞳は、涙を浮かべていた。

「そう。勇者はどこにいるんだろう、そう思ったでしょう。私が、人間界に帰りたいと願った時に、勇者は扉になったのよ。そして、彼を元に戻してあげたかった――」

 そんな……。そんなのあんまりだよ……。

 シウくんは少しだけ笑って、でもその瞳は真剣だった。

「僕は、君と出会ってしまった。だから、もう戻れない。」
「えっ……?」
「人間界でも、異世界でもない――君の隣に、俺はいたい。」

 その手が、そっとあたしの手に触れる。
 熱くて、でも優しくて、ずっと求めていたぬくもり。

「俺は、扉の“鍵”を閉じる。でも……そのあと、自分の意思で“開き方”を探すよ。君と同じ世界で、生きていく方法を。」

 ぽろっと、涙がこぼれた。

「……そんなの、ずるいよ」
「ずるくていい。君に出会った僕は、もう“王子”でも“竜人”でもない。ただのシウだから。」
「……うん」

 ちゃんと、言わなくちゃ。
 ずっと言えなかったこの気持ち。
 いろんなすれ違いも、葛藤も、全部越えて――。

「わたし、シウくんのことが好きだよ……!」

 その瞬間、世界がひときわ眩く光った。
 境界が静かに閉じていく。
 だけど、手を握ったまま、シウくんは笑っていた。

 ――たとえどんな世界でも、君といるって決めたから。
 まぶしい光の向こうに、あたしたちの未来が待っている。

 きっとそこには、恋して、笑って、時々ケンカもして、でも最後にはちゃんと、手をつなぐふたりがいる。

 信じてるよ、シウくん……。

 「これが、わたしの“青春”だよ!」

 君と出会えたこの世界で、一歩ずつ、好きって言える日を増やしていくために。

 私は、羽ばたくことができたんだ。



    ◇


 蒼天学園に戻ってきた私。
 如月先生は、異世界に残ったまま……、今頃勇者と再会できたのかな。

 みほと私は、異世界留学を終えた。

 ううん、戻ってきた時には、なかったことになっていた。

 ここは、蒼天学園の教室。

「おーい、何しょげてんのさ!」

 隣にいたのは、中学生の時に唯一できた友達の清水みほ。

「今日のあや、元気なさそうだけど大丈夫?」

 まったく。なに言ってるんだろ。一緒に異世界留学したじゃん……。
 自然と、涙が出てきた。

「えー、では次に。今年度初の試み、地域交流制度について――」

 先生が、教壇で話す。如月先生じゃない。知らない先生。

 今までの出来事は、全て夢だったのかな……。
 みほに、確認しようと思ったけれど、やめた。

 これは、わたしの思い出。

 胸にそっと、閉まっておくことにした――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...