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−終−
しおりを挟む次にティキが目が覚めたとき、ぐちゃぐちゃになってた身体は綺麗にされて、シーツももちろん清潔なものにされていて。
あったかで、フリルがいっぱいの清潔な夜着に身を包んでいたことに少なからず驚いた。
レースカーテンのおかげで、外から差し込む朝の光は柔らかく、優しい。
身体はずっしりと重いけれども、なんだか気持ちは妙に軽くて、ティキはそっと身体を起こす。
「あっ、ちょうど起きたんだね? おはよ、ティキちゃん」
「! ろ、ロラン……」
まるでティキの様子を観察していたかのごとく完璧なタイミングで、ロランが現れる。
「え、えっと。お、はよう……」
「っ……んんんーーーーっ!!! ティキちゃんのおはようっ! いただいてしまった!! っ、僕、古代種ちゃんの研究しててほんっとうによかったああああ……っ!!」
「え、ええーっと」
ティキそっちのけで歓喜の涙を流しているあたり、やっぱり彼はロランだった。
なんだか昨日はとっても恥ずかしいことになっていた気がするけれども、こうやって改めて見ると、やっぱりロランは変なひとだ。
……いや。この時代に目ざめてから、まだ彼以外の人間に会ったことはない。だから、もしかしたら彼がこの時代の標準なのかもしれないけれども。
…………いやいや? それでも。はたしてこれが、本当に普通、なのだろうか。さすがにない気がする。どっちだ? どれが普通だ? なんて、答えの出ない迷路に入りこみそうになって、ティキは首を横に振る。
どちらにせよ、ロランとは長いつきあいになりそうである。つまり、ティキははやく慣れないといけないわけで。
まあ、悪いひとじゃないってことはもうわかっているし、彼にはティキのはじめても捧げてしまっていて。
魔力の相性が恐ろしいほどにいいため、おそらく、いい相手に出会ったのだと思われる。たぶん。おそらく。きっと。そうだといいな。
――うん。いろいろ不安はあるけれども、それよりも、だ。
ふわん、と、いい香りがして、ティキはその香りの方向に目を向けてしまう。
ロランがなにやらトレーに朝食をのせて持ってきてくれたようだった。
ベッドに腰かけるティキのために、そのまま使えるベッド用のテーブルを用意してくれて。さらにその上に、持ってきてくれたトレーをそっと置く。
「わ……」
パンのようなものに、たっぷりと緑や赤の具材がはさまったものと、温かいスープ。あと、色鮮やかな飲み物もあるけれども、これはなんだろうか。
「昨日、ゼリーやおかゆも問題なく食べてたし、固形物もこれくらいなら大丈夫かなって」
おかゆはまだしも……ゼリー? なんだろうか、それは? と思いつつ、食べた記憶があやふやである。
たしか昨日、ティキが目ざめたのは真っ昼間だったはず。
検査と称してあれこれ巻き込まれて、気を失ったり、起きてまたいっぱい抱かれたりをただひたすら繰り返していた気がする。
その最中に、もしかしたらなにか食べていたのかもしれない。…………恐ろしいほどに覚えていないのだけれども。
急に昨日のあれこれが思い出されて、ティキは顔を赤くする。
ちなみに、ロランもロランで、ティキちゃんが照れてくれてるっ、と感動しているようだった。そりゃあ、照れますとも。乱れに乱れたのだから。
「えーっと。お野菜と卵のサンドイッチ、隣は鯖のマヨネーズあえのサンドイッチ。ええと、お魚ね? ……と、あとは、コンソメスープ。多分、味の進化にビックリすると思うから、味はちょっと薄目にしたからね? 口にあわなかったら教えて?
それからオレンジジュース。果物の汁を搾ったモノ、って言ったらわかるかな?」
なるほど。この鮮やかな色の飲み物は、果物の色なのかと驚いて。
こくこく、と頷きながら、迷いに迷って、鯖のマヨネーズあえのサンドイッチなるものから口をつける。
「!」
ぴしり、と固まった。
「……っ!!」
衝撃だった。
ふわっふわの真っ白なパン! ……パン!?
ティキの知っている硬くて薄いパンとは全然ちがう……なんだこれは!?
しかも具材!
魚……たしかに魚ではあるけれども、このまろやかな味付けは、なんだ……!?
両目をこぼれるほど大きく見開いて、ぱくぱくぱく、と一気に食べてしまう。
あ、終わってしまった。一瞬だ。一瞬で終わってしまったではないか!
いやいやまてまて、ティキにはもうひとつサンドイッチがあるはずだ。今度はお野菜の――、
「!!!!!」
こっ……この、新鮮さは、なんだ!?
こちらにもまろやかなソースがかかっているようで、そのコクと味の深みにただただ衝撃を覚え――だが、くるしゅうない、悪くない……と、食べる手を止めることなんかできなくて……、
「気に入ってくれたみたいだね?」
安心したように肩をすくめるロランの、黄金色の瞳と目があって。
ティキは瞳をキラキラさせながら、何度も頷く。
こんな素敵な食べ物であるならば、毎日、毎食食べるのだって大歓迎だ!
「よかった。僕、ティキちゃんのお世話頑張りますから。しっかり食べて、体力つけて――」
彼はそっと、ティキの耳元に顔を寄せる。
「イイコト、たくさんしようね?」
……まんまと最後は食べ物に釣られた気がするけれども、でも。
かああああ、と、頬に熱が集中して、こくりと。咀嚼していたものを、のみ込む。
甘い彼の声に抗うことなんかできなくなっていて、ティキは小さく、首を縦に振った。
ちなみにこの数日後――街に連れていってもらったティキは、やっぱりロランみたいなひとはこの時代でも変なひとの部類に入るのだと確信する。
でもまあ、なんだかんだ、彼のことは好ましく想っているのだと思われる。きっと。多分。おそらく。……。
あと、えっちは激しかった。
それはもう、孕むまでとことんえっちはしたけれど、孕んだら孕んだでめちゃくちゃ過保護にお世話されたりして。
なんだかんだ、彼なしには生きられない身体にされてしまった自覚はあって。
多分、ティキにとって、とってもいいひとと出会ったの……だと、思われる。ほんとうに、多分。
……ちなみにこの数ヶ月後、ふたりも驚くほどの魔力量と才能に恵まれた子が産まれてくるわけだが、それはまた別の話である。
〈おしまい〉
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どこの世界も突き抜けたヲタクは強いなとしみじみ。利害も相性も完全な一致で、もはや運命💕な二人がこれからも沢山増えていく?家族と幸せになり増すように。素敵なお話をありがとうございました✨
ありがとうございます!
そうなんです、オタクは強い!笑
猪突猛進すぎるところもありますが、ティキのお相手はそれくらいが良いのかもしれませんね(*´艸`)
なんだかんだティキは貴重な存在なので、これからもドタバタ事件が起こりそうですが、彼ならきっと全力で守ってくれそうです(ノv`*)
ホープさん、ありがとうございますー!
わーい!再読しに来て頂けただけでもうれしいですのに、バッチリ続きまで見つけて頂けて、こうしてあったかなお言葉までたっぷり(*ノωノ)めちゃくちゃ励みになります…!第二部!書いててよかった…!!
そうなのです、昨年末から1ヶ月ほどガガー!っと続きを書かせて頂いておりまして(*´ー`*)
なんだかんだ第一部と同じくらいの長さになっております(`・ω・´)
終盤なんかは特にめちゃんこ気合い入れて、書いておりまして…!
可愛いルヴェイから格好いいルヴェイへの進化とかもお楽しみいただけるんじゃないかなと思っておりますので、またのんびり時間にでもお楽しみいただけますととってもとっても嬉しいのですヾ(*´▽`*)ノ
いろいろ不安の多い世の中ですが、物語の中はやっぱり夢が溢れていてほしいなと考える書き手ですので(*´ー`*)
いただいたお言葉をエネルギーに、これからも、あれやこれやとお話作り頑張りますね(*ノωノ)
4月〜5月くらいには、こちらのサイトにお月さまからの転載を2作、6月か7月くらいには新作長編とかも出せたらいいな…と思っておりますので、のんびりまったりお待ち頂けましたら(`・ω・´)!!
嬉しいお言葉、本当にありがとうございました〜ヾ(*´▽`*)ノ
浅岸さんがアルファに降臨された( 〃▽〃)
記念すべき一つ目の作品は……まさかの!
コメディーチックなエロ、楽しませていただきます💕
ありがとうございます(*ノ∀ノ)
アルファさんの片隅で、こっしょりデビューしました…!
右も左もわからずおろおろしていますが、新天地…そわそわですねえ…!
せっかくなので、お話、楽しんでいただけたら嬉しいなって思ってます!ドキドキ!