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本編
15.存在がバグ、それがバグ王 *
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【if 約束されし黎明の騎士王】バグウィル(UR)。
それは、5周年を迎えたお祭りイベントを迎えた中で実装された期間限定URだ。
特別な記念日には特別なキャラクターを、ということなのだろうか。
バグウィルという存在に対して、運営の思い入れが強すぎた。
制作スタッフが何を血迷ったのか、あるいは本当にバグなのか、ひとりだけ性能がケタちがいに良すぎたのだ。
高難易度をうたうクエストも、彼ひとり限界突破にしておけばどうとでもなる――といわれているほど攻守に優れたキャラクターだった。
結果、彼を限界突破できるようにカードを複数枚手に入れようとするプレイヤーが続出。
瞬間風速的にセルランは一気に駆け上がったけれど、その代償も大きかった。
ゲーム性が大きく損なわれ、これまで育ててきた他のキャラクターの価値が下がったと、プレイヤーの不満が噴出する。
どうにかバランスを調整しようと運営によって下方修正がとられたけれど、今度はバグ王を手に入れるために課金を重ねたプレイヤーの怒りが爆発。
いわばバグ王は運営によるメアリー・スー。界隈は荒れに荒れ、SNSでの炎上が続いた。
5周年記念はまさに、炎上という意味でのお祭り騒ぎになり、プレイヤー離れが一気に進んだ。
そして、メインシナリオライターと運営会社側との関係性にひびが入り、少しずつ、少しずつ衰退の一途を辿っていった。
【if 約束されし黎明の騎士王】バグウィルとは、まさに、その引き金となったキャラクターなのだ。
でも。
そんなことは、関係ない。
わたしにとっては、彼もまた、大好きなバグウィルその人なのだから。
性能がいいとか、悪いとか、どうでもいいんだ。……いや、強いにこしたことはないけれども。それでもっ!
彼の存在そのものが尊くて、彼の歩んできた道を考えるだけで胸が痛む。――わたしにとっては、そんな存在なのだ、彼は。
「王……さま……」
バグ王、だなんて風にはとても呼べなくて、わたしはあえて、他のバグウィルたちにあわせてそう呼んだ。
「――バグ王と、いつも通り呼んでくれても良いのだが?」
「っ……え、と……!」
ああそうか。
プレイ中のわたしの声が聞こえてたのなら、そう呼んでたことも筒抜けだ。
「だが、そうだな。私のこともバグウィルと、名前で呼んでくれるとうれしい」
わたしと目があった瞬間、彼はふっと極上の笑みを浮かべて微笑んだ。
わ……わっ……!
笑顔!
彼の、極上の笑顔……!
ゲームプレイ時も、シナリオで彼が笑顔を見せるのはたった一度だけ。
何度も冒険に連れ出して親密度をMAXまであげたら、居室でつつくとたまに見せてくれるようになるけれど、それ以外は本当に、一切笑顔を見せない。
【放浪騎士】バグウィルのように、彼が騎士国から離れなかったら――そんな〈もしも〉の世界線を生き、騎士国で頂点に辿りついたという設定の彼は、その地位につくまで、失うものも多かったというわけだ。
『笑顔なんて、とうの昔に失った』
――特別イベントの際に、王さまはたしかにそう言っていた。
だから、他のバグウィルたちも彼の笑顔を見たのははじめてなんだろうね。ビックリして、目を白黒させている。
「んだ、その顔……っ!」
「おいおい、マジかよ」
呆然とするバグウィルたちを無視して、騎士王は真っ直ぐわたしのほうへと歩いてくる。
途中、白銀の鎧をスキン替えして、白い私服モードになったけれど、彼の清廉さはそのままだった。
圧倒的な雰囲気で、わたしたちをのみ込む。
「嬢ちゃん、こっちだ」
「ひゃっ……!」
俺を忘れるなよ、とでも言うかのように、首領がわたしの身体を揺さぶる。
「王サマが気になるのはもっともだろうがよ? 今は、俺と楽しもうな?」
「ん、ぁ! 首領……っ!」
「ったく、セックス中断させるなんざ、無粋なことしやがって」
悪態をつきながら、首領がわたしを追い込んでいく。
「ひゃ、ぁ……んんん……」
「俺のちんこ、きもちーか?」
「首領、……ま、まって……っ」
「な? ちゃんと教えてくれ? 俺のちんこ、きもちーのか?」
「きもち、いっ……きもちいい、からあああっ!」
がつがつと容赦なく貫かれ、わたしはまたイってしまう。
アソコがヒクヒク震えて、首領のモノをぎゅって締めつけた。
「あー……すげー締めつけ。たまんねえな」
「ユイのナカはクセになるからな。――誰かさんは、まだ知らねェだろうが」
なんて、首領だけじゃなくてウィルまでも、王さまを煽るようなことを言う。
王さまはすごく不機嫌そうにウィルの方を睨みつけ、その手をかざした。
ドォォォン!
瞬間、ものすごい破壊音が聞こえたけれど、わたしは視線すらそちらに向けさせてはもらえない。
がっちり頭を抱えられ、首領に唇を奪われている。
「ん……ふぅ、ぅぅっ」
まって?
まって……!!
ベッドの向こうではウィルと王さまがなにやら戦闘をはじめたみたい。
こんな状況で続けていられない!
――って、ウィル、あなたさっきまで裸だったんじゃ……? なんて思ったけど、すぐに杞憂だって気がついた。結局、スキン変更さえすれば、服はすぐに着替えられるということなのだろう。たぶん。
それは、5周年を迎えたお祭りイベントを迎えた中で実装された期間限定URだ。
特別な記念日には特別なキャラクターを、ということなのだろうか。
バグウィルという存在に対して、運営の思い入れが強すぎた。
制作スタッフが何を血迷ったのか、あるいは本当にバグなのか、ひとりだけ性能がケタちがいに良すぎたのだ。
高難易度をうたうクエストも、彼ひとり限界突破にしておけばどうとでもなる――といわれているほど攻守に優れたキャラクターだった。
結果、彼を限界突破できるようにカードを複数枚手に入れようとするプレイヤーが続出。
瞬間風速的にセルランは一気に駆け上がったけれど、その代償も大きかった。
ゲーム性が大きく損なわれ、これまで育ててきた他のキャラクターの価値が下がったと、プレイヤーの不満が噴出する。
どうにかバランスを調整しようと運営によって下方修正がとられたけれど、今度はバグ王を手に入れるために課金を重ねたプレイヤーの怒りが爆発。
いわばバグ王は運営によるメアリー・スー。界隈は荒れに荒れ、SNSでの炎上が続いた。
5周年記念はまさに、炎上という意味でのお祭り騒ぎになり、プレイヤー離れが一気に進んだ。
そして、メインシナリオライターと運営会社側との関係性にひびが入り、少しずつ、少しずつ衰退の一途を辿っていった。
【if 約束されし黎明の騎士王】バグウィルとは、まさに、その引き金となったキャラクターなのだ。
でも。
そんなことは、関係ない。
わたしにとっては、彼もまた、大好きなバグウィルその人なのだから。
性能がいいとか、悪いとか、どうでもいいんだ。……いや、強いにこしたことはないけれども。それでもっ!
彼の存在そのものが尊くて、彼の歩んできた道を考えるだけで胸が痛む。――わたしにとっては、そんな存在なのだ、彼は。
「王……さま……」
バグ王、だなんて風にはとても呼べなくて、わたしはあえて、他のバグウィルたちにあわせてそう呼んだ。
「――バグ王と、いつも通り呼んでくれても良いのだが?」
「っ……え、と……!」
ああそうか。
プレイ中のわたしの声が聞こえてたのなら、そう呼んでたことも筒抜けだ。
「だが、そうだな。私のこともバグウィルと、名前で呼んでくれるとうれしい」
わたしと目があった瞬間、彼はふっと極上の笑みを浮かべて微笑んだ。
わ……わっ……!
笑顔!
彼の、極上の笑顔……!
ゲームプレイ時も、シナリオで彼が笑顔を見せるのはたった一度だけ。
何度も冒険に連れ出して親密度をMAXまであげたら、居室でつつくとたまに見せてくれるようになるけれど、それ以外は本当に、一切笑顔を見せない。
【放浪騎士】バグウィルのように、彼が騎士国から離れなかったら――そんな〈もしも〉の世界線を生き、騎士国で頂点に辿りついたという設定の彼は、その地位につくまで、失うものも多かったというわけだ。
『笑顔なんて、とうの昔に失った』
――特別イベントの際に、王さまはたしかにそう言っていた。
だから、他のバグウィルたちも彼の笑顔を見たのははじめてなんだろうね。ビックリして、目を白黒させている。
「んだ、その顔……っ!」
「おいおい、マジかよ」
呆然とするバグウィルたちを無視して、騎士王は真っ直ぐわたしのほうへと歩いてくる。
途中、白銀の鎧をスキン替えして、白い私服モードになったけれど、彼の清廉さはそのままだった。
圧倒的な雰囲気で、わたしたちをのみ込む。
「嬢ちゃん、こっちだ」
「ひゃっ……!」
俺を忘れるなよ、とでも言うかのように、首領がわたしの身体を揺さぶる。
「王サマが気になるのはもっともだろうがよ? 今は、俺と楽しもうな?」
「ん、ぁ! 首領……っ!」
「ったく、セックス中断させるなんざ、無粋なことしやがって」
悪態をつきながら、首領がわたしを追い込んでいく。
「ひゃ、ぁ……んんん……」
「俺のちんこ、きもちーか?」
「首領、……ま、まって……っ」
「な? ちゃんと教えてくれ? 俺のちんこ、きもちーのか?」
「きもち、いっ……きもちいい、からあああっ!」
がつがつと容赦なく貫かれ、わたしはまたイってしまう。
アソコがヒクヒク震えて、首領のモノをぎゅって締めつけた。
「あー……すげー締めつけ。たまんねえな」
「ユイのナカはクセになるからな。――誰かさんは、まだ知らねェだろうが」
なんて、首領だけじゃなくてウィルまでも、王さまを煽るようなことを言う。
王さまはすごく不機嫌そうにウィルの方を睨みつけ、その手をかざした。
ドォォォン!
瞬間、ものすごい破壊音が聞こえたけれど、わたしは視線すらそちらに向けさせてはもらえない。
がっちり頭を抱えられ、首領に唇を奪われている。
「ん……ふぅ、ぅぅっ」
まって?
まって……!!
ベッドの向こうではウィルと王さまがなにやら戦闘をはじめたみたい。
こんな状況で続けていられない!
――って、ウィル、あなたさっきまで裸だったんじゃ……? なんて思ったけど、すぐに杞憂だって気がついた。結局、スキン変更さえすれば、服はすぐに着替えられるということなのだろう。たぶん。
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