【R18】嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

浅岸 久

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第1話 嘘から本気にさせられちゃった恋のおはなし。

1−20

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 ……なんて。

 ……調子に乗りすぎた昨日のわたしを殴ってやりたいです、ハイ……。


「ぅ、ぅ、ぅ、ぅ……」

 朝、起きて、普段絶対痛くならないような筋肉があちこち痛くなっていることに気がついて、後悔した。

 ええと……?
 ぜんっぜん記憶ないんだけど。昨夜、彼とは何回やったかな……???

 いや、うん。
 別に、ラルフを責めるつもりはないんだよ?
 わたしもなんか、気分がぽや~んってして調子乗っちゃったし?
 うん。全然責めてないよ?
 初心者用ってなんだったのかな? とか、問い詰めたりしないよ……?


「った、た、た……」

 朝起きたらラルフは隣にはいなくて。
 わたしは上半身を起こしてから、自分の体を確認する。胸とか腕とか、なんかいろんなところにキスマークが散っていて、それだけで赤面しそうになる。
 っていうか、裸のままだ。
 体は清めてあるようだけど、服は――と探そうとして、回収されちゃっていることに気がついた。
 自分の部屋の方に着替え取りにいかなくちゃなんだけど……これじゃあ自分で、行けないじゃない。

 とりあえず着るものを……と思って、適当にラルフのクローゼットを漁る。
 ……んだけどね?
 もうね、立つだけで、至る所の違和感がすごい。
 なんか股の間にまだなにか挟まってる感じするし、……ずっと、体の色んなとこ、まだ彼に触られている感触が残ってる。
 世の中の女の子、すごい。みんなこれを経験してたのか……。


 適当な大きめのシャツを見つけて、がばりと上から被っちゃう。
 ちょうどワンピースくらいの丈になるから、とりあえずこれで凌げるかなと。

 隣の部屋からいい匂いが漂ってきてるから、また朝ご飯を用意してくれているのだと思う。
 ラルフは意外と甲斐甲斐しいところがあって、そういうところも、きっと好き。
 体はあちこち痛いし、ついつい調子に乗っちゃった反省はしてるけど、わたし、多分、すごく幸せな夜を過ごしてて。

 彼と顔をあわせたら、何を言おうかな。
 お礼とか。ちゃんと言わなきゃ、とか、いろいろ考える。


 そしたら、おきたかー!? って声がかけられて、はーい! って返す。
 あけるぞー? っていう言葉と一緒に、ドアが開いて。

 じゅうじゅう、と向こうの部屋からまだフライパンで何か焼いてる音が聞こえてきて。
 香ばしいかおりに頬を緩めると、ぱちぱちと瞬くラルフと目があった。

「えーっと……おはよ? ラルフ」
「ああ……」
「いい匂い。もしかして、朝ご飯つくってくれてたり、する?」
「ああ……」
「そっか。ありがと。……あの、ラルフ? あのね? わたしね?」
「ああ……」
「ラルフ? おーい。ラルフ?」
「………………」

 彼はじっと、わたしを見つめたまま硬直していて、うわの空。
 わたしの言葉なんか全然聞いてなくて、いったいどうしたのかなと不思議に思って。

「それは、反則だ」
「は?」

 なんか、よくわかんないこと、言った。

「ちょ……なに!?」

 彼はすたすたとわたしに詰め寄り、抱きしめられる距離のちょっと手前で立ち止まる。
 ますますどうしたのかわかんなくて、ぽかんとしちゃって。

 向こうからは相変わらず、じゅうじゅうなにかが焼ける音が聞こえて。


「オマエ、今日遅番だったよな……?」
「え? あ。うん、それは、そうだけど」

 ほんとはもう、まるっと一日休みたい。
 ギルドでは立ち仕事も多いし、体中に違和感を抱えて一日働ける気もしない。
 でも、仕事は仕事。億劫だけど、なんとかしなきゃいけないと思っているわけで。

 と、この後の予定をいろいろ考えていると、彼はわたしの頭のてっぺんからつま先までをじっと凝視し続けているようだった。

「……いい……」

 なんて、なにやら感慨深そうに呟いて。

「は?」
「な。リリー?」
「えーっと……なにかな……?」

 嫌な予感がする。

「朝食の前にだな。その――」
「……」
「今の、オマエの、その…………つまり、一発だけ、だな」
「…………」

 ………………悟った。

 まずい。これは。
 流されると、体力的にもいろいろ厳しい気がする……?

「ま、まって、ラルフ?」
「リリーが裸の上に、オレのシャツ着てるとか……こんなの、反則すぎる……」
「いやいや。だって、わたしの服、回収し――ひゃっ」
「リリー、はぁー……オレ、幸せすぎるだろ」
「まっ! ほら! ラルフ! 焦げる!! きっとなにか焦げるからっ!!!」

 じゅうじゅうじゅう。
 フライパンの中身が焼け焦げてく音を聞きながら、わたしは抗議して。

「ラルフってば!」
「キスだけ、キスだけ先にっ」

 ――なんて。
 たまに後先考えずに暴走しちゃうこともあるわたしたちだけど。

 まあ、そんなところも含めてね?
 すき。……というか。
 もう、離れられないってことなんだろうな。って思うけど!

「わかったけどっ! これ以上は体が持たないっ。ムリ……っ!」

 これから先も、こうやってラルフに振り回されるんだろうなーって思うと、なんか、大変だろうなって。
 ちょっと、笑っちゃいたい気持ちで。

 ……でもまあ。ラルフとだし。
 きっとだいじょーぶ。

 わたしたちなんだかんだ、うまくやっていけるかなって、思う。




▼第2話へつづく
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