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第2話 恋のライバル登場に「えっ、ベタな……」ってなるのは許してほしい。
2−20
しおりを挟むそうして――翌日。
今日は職人街での大倉庫での素材確認の日だからね?
大討伐で集まった素材に番号や確認用のラベルを置きながら、わたしは昨日の夜の出来事を思いだしていた。
うーっ……。
いまさらだけど、めっっっちゃくちゃ、恥ずかしいことした……。
ちょっと感情が高ぶってたとはいえ……自分で、誘ってさ?
ううっ、……ラルフも、よろこんで、たよね? えーっと。はしたないって幻滅されてないよねっ。
今朝、わたし早出だったから、ホントはね? ラルフには寝ててもらってて、ひとりででてこうって思ってたのに。見つかるし。送ってくれるって言うし。めちゃくちゃ優しいしで。
あー……もう、ミリアムのことなんて、頭のなかからどっかへいってますよね!
あっはっはー。
昨日の夜はギルドホールの大勢の前で啖呵きったわけだけど、朝お仕事にでたらさ、咎められなかったし。
むしろ、エイルズギルドとしては、首都のギルドの強引な勧誘に抗議してくれるって言ってくれたし。
「……」
首都かぁ。
首都……。
別にね? ミリアムのことがなければさ、首都のギルドってやっぱり、憧れに近い感情はある。
ラルフは新しいモノ好きだしね? 今のうちに、向こうのギルドでいろいろ経験つむのって、感情論抜きに考えたら、すごくいいなって思うんだ。
でも、それを決めるのはラルフだもんね。
……まあ、わたし自身も、興味がないかっていったら嘘になるんだけど。
でも――うん。
それを無理強いするのはちがうって、思うから。
よし、仕事だ!
しっかり仕事して、ラルフとの時間も作りたいし。はやく終わらせよう!
って、気合いを入れたはいいんだけど。
「ね、ちょっと、アナタ」
……おっと。
うーん……聞き間違えじゃなければ、すごーく、聞きたくない声が聞こえたよ?
「もう、こっち向きなさいよ、リリー」
あー。はい。
向きましたとも。どうも、ミリアムですね? うん。
わざわざ彼女がこんなところまで来るとは思わなくて、額に手を当てる。はー……仕事中なんだけど。えっと、手っ取り早く、終わらせてくれるかな?
「えーっと……昨日は、どうも」
あやまりはしないけどね。
でもまあ、昨日の今日なので、なんとも気まずくてとりあえず挨拶して。
「フン。別にいいわよ。ラルフを直接誘っても無駄だってことがわかっただけ、成果はあったわ」
「あー……やっぱり勧誘だったんですね」
もう取りつくろわなくなっただけ、話はしやすい。
わたしは肩をすくめて、小さくため息をついた。
「勘違いしないでほしいんだけど、別に、首都のギルドは優秀な冒険者を集めるだけじゃないわよ?」
「では、なんだと?」
「知識と技術の共有と、教育。ある程度首都で実力をつけた冒険者は、また地方へ勝手に帰るもの。そうやって、各地の冒険者のレベルを均等に保てるように動いているだけ」
「…………ご自分のやり方を忘れたのですか?」
「えーっ、あれは個人の趣味よ。ラルフってば普通にあたしの好みだし」
そう言ってミリアムは、からからと笑う。
「ああいうコはね? ちょーっと色仕掛けしたら、案外のってくる子が多いんだけど。――アンタにぞっこんなんだもん」
おそらく、首都のギルドが勧誘して、教育がどうこうっていう話も、半分くらいは本音なのだと思う。実際、そういう研修とか、人員交換の制度があったらいいなって、わたしだって思ったことがある。
ただ、ちょっとミリアムは性格がね……? 享楽主義というか、人を焦らせて楽しんでいるというか。だからどうしても、仕事のようにも思えなかったんだよね。
はっきり言うと、人が悪いんだろうなって、わたしのなかでは結論が出ている。
まあ、それも、彼女なりの世渡りなのかもしれないけど。
「いまさらどうこう言っても無駄ですよ。ラルフのことはラルフが決めるのだし。――でももう、彼はあなたの言葉には耳を貸さないと思います」
「うん。それはよくわかったわよ」
「だったら――」
「でもね!」
ミリアムは宣言する。それはもう、楽しそうに。
「だからこそ、燃えるっていうか。あ、恋愛的な意味じゃあないわよ? アンタを怒らせるのは得策じゃないって、理解したもの」
「…………は?」
「ふふふ、今日は謝りに来たの。ちょっかい出して、悪かったわね?」
「え……と?」
まるで開き直ったかのようなもの言いに、困惑しか出てこない。
つまり……?
何が言いたいのだろうか……?
「アンタの、頑固なところも、はっきり物を言うところも、あたし、嫌いじゃないわよ? じゃあね」
なんて言いたいことだけ言って、彼女はひらひら手を振りながら去っていく。
遠ざかっていく彼女の背中を、わたしはぽかーんとしながら見つめていた。
恋愛的な意味では、諦めた?
……じゃあ、勧誘は? って、こと???
謝罪したけど、そこは全然折れる気はないってこと???
えーっと。
もう、ラルフを追っかけたりとかは、ないよね?
ないってことだよね……???
今度はどんなちょっかい出してくるのかわからなくて、途方もない気持ちになる。
でもまあ。
ラルフは、ちゃんとわたしのことを好きっていってくれたし。
わたしは彼の隣にいられるように頑張るだけ。
それを忘れないようにしなかったらさ、それでいいんだって思う。
よーし!
まずは明後日のデート!
気持ちを切り替えて、いっぱい楽しんでやるんだから!
▼第3話へつづく
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