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イベント(復刻版)

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 イベント告知


 3日後
 世界を恐怖に落とした憎き存在“第1種敵対害獣”の討伐イベントを行います。
 今回のイベントはポイント制でありエネミーのランクと撃破数に応じてポイントが加算されイベント終了後にアイテムと交換する事ができます。

 ※なお、本イベントは復刻版として過去のイベントに登場したアイテムを入手する事も可能です。



 そのようなイベントを聴いて、プレイヤーは大きく燃えた。
 第1種敵対害獣に対する敵意とその腹いせが疑似的にできると言う高揚感と過去のイベントで取り損ねたアイテムが取れるとなれば俄然燃えざるを得ない。

 グラジオラスのイベントの際は核兵器を持っていなかったプレイヤーはUWE特典を逃しているのでUWE特典をゲットするチャンスでありグンを討伐する際のイベントでは当時は技量が足りず取り残した“シルバー”シリーズを獲得するチャンスでもあった。

 特にグラジオラスのアイテムはMk25に次ぐ人権アイテムと化しており“シルバー”シリーズの中にも複数の人権アイテムが存在する。
 これは言わば、人権アイテムを回収できるビッグイベントなのだ。
 当然、参加しない者はいない。

 更に備考欄には今回のイベントに限りイベント時間内で倒した全てのエネミーもポイントとして加算すると言う仕様になっているのでグリードの数が不足しても他のエネミーで賄える仕様となり結果的にSWNを無害なDWNに変換する事でWN量も増え、アイテムの供給も賄えると言うシステムだ。

 こうして、ゴスペルのエミルトシティから東に100km地点に多くのプレイヤーが集まっていた。
 なお、今回のイベントは今までとは、違いかなり期間が長い。
 最大20日の長期イベントである。

 その理由としてまず、スフィアと言うモノのグリード発生周期が定かではないと言う事だ。

 ある程度、決まっているらしいが時期によって一定時間の発生回数等に大きな差がありその数はまばらである。
 シュウの観測と予測から推移すると恐らく、世界に満ちるSWNの濃度によりスフィアに供給されるSWNの量に差が生まれた事で発生する現象と推測している。

 そして、この世界はあらゆる世界と接続されSWNを回収している都合上、その周期は早い可能性が高い。
 だが、それがいつになるのか?また、どの程度のSWNを吸収してどの程度のグリードが発生するのかは分からない。

 よって、如月大尉の証言を基に如月大尉の世界では10日以内にグリードが発生すると言う情報を基に期間を20日に設定した。
 これで一度はグリードの出現は確定的となりグリードの間引きができると言う寸法だ。
 ただ、不確定要素が多い中で本当に20日以内にグリードが現れるのか?と言う不安がシュウにはあったがそんな事は杞憂だと言わんばかりにイベント開始からわずか3時間後にグリード発生の予兆が起きた。



「来るぞ!」



 イベント参加者達がオープンチャンネルで呼び掛ける。
 周囲で暇つぶしのように他のエネミーを狩っていたプレイヤーも作業を一時中断しスフィアの方角に殺到する。
 それも当然だ。
 今回のイベントではグリードの討伐によるポイント還元率の方が遥かに高いのだ。
 誰もが我先にグリードを狙うのは自明だった。
 そして、スフィアの発光が最大に達すると辺りを埋め尽くす程のグリードの軍勢が現れた。



「敵が出たぞ!撃って!撃って!撃ちまくれ!」

「おっしゃ!オレの職場を壊した恨みを晴らしてやる!」

「実家を壊した罪を贖え!」

「よくもオレのコンテナフィギュアBOXを破壊してくれたな!」



 皆が「積年の恨み!」とでも言っているようにネクシルによる一斉射撃を行った。
 事前の情報でグリード達は物理火炎耐性と魔術火炎耐性が低い事が判明しているのでナパームやテルミッド弾、ロケットランチャー、ESイグニスライフルの発展改良型の猛攻がグリードの大軍を襲う。
 グリード達は猛火に包まれ悲鳴を挙げて悶絶していく。



「ポイントはオレが総取りだ!」



 等と言いながらMk25弾頭の廉価版と思わしき弾頭を取り出し3点バーストで連射する者も現れた。
 それを遠目で観察していたシュウがマナ、カナに連絡を入れる。




「ギデオン1より2、3へ。核が使用された。繰り返す。核が使用された。システムはどうだ。」

「ギデオン2、問題ないわ」

「ギデオン3、規定値です」



 念の為に核の使用を想定してマナとカナを周囲に展開させておいて正解だったようだ。
 今の一撃でグリードの大半が一掃されたのはある意味、行幸だったかも知れないが何とも複雑な心境だった。
 そんなシュウ達の気苦労など知る由もないプレイヤー達はグリードと交戦している。



「おらっ!」



 両盾使いがグリードのダンゴムシタイプに体当たりして腕に装備された盾でガードした。
 そこにマウントハンガーから両副腕で保持したHEATハンマーと言う武器でダンゴムシを殴り飛ばす。
 いくら硬い甲殻を持っているとしても一応、炭素でできた甲殻は“燃える”。
 その特性を熟知していれば、HEATハンマーで打撃を与えれば、甲殻を燃やしながら上半身を消し飛ばし撃墜する事もできる。

 その手を使って接近戦を仕掛ける者も多く“シルバー”シリーズの大小様々な盾を両手に構え敵の侵攻をガードしたり、受け流しながらマウントハンガーから副腕に持ち帰る形でHEATサーベルやHEATソードやHEATランス、HEATクレイモア等でグリード達を溶接していく。

 両盾使いはその特性上、盾で必ず敵の攻撃を受け止める技術が求められる。
 シュウの目から見てもその練度は上がっているように見え、千鶴が望んだようにプレイヤーはレベルはともなく技量やテクニックがかなり上がっているようでシュウとして最良だった。
 だが、それはそれとして問題があった。



「予想よりも多いですね……」



 やはりと言うべきかSWNが多いこの世界ではスフィアに供給されるSWNが多くなり如月大尉からの情報よりも多く出現している。
 その結果、プレイヤーが徐々に物量で押され始めていた。



「ギデオン各機へ。掃除を開始する」

「ギデオン2了解。わたし達の分も稼ぎなさいよ!」

「ギデオン3了解。期待して待っていますね」



 一応、イベントの仕様としてパーティ間でのポイントの共有化もできるのでマナ達が参加しなくてもポイントが入る仕掛けになっている。
 それにしても何故かカナに「期待して待っている」と言われたら何故か答えぬわけにはいかないと思う淡い感情が滾らせながらシュウは「了解。大収穫を期待されたし」と答えてスフィアの方角に疾走した。
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