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如月達の思惑

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 シュウはグランゲートで戦域にエントリーした。
 そして、今回のイベントの為に火炎系の武装で固めた装備を十全に活かす事にした。



「行きなさい!ビット!」



 背部に伸びたマウントハンガー搭載されたイグニスビットを射出した。
 グランゲートの高出力化に合わせ調整されたビットは敵の元に高出力を活かし肉迫し四方からグリード達に攻撃を仕掛け、火炎の爆散が周囲のグリードを巻き込む。



「お次はこれです!」



 シュウは左右に装備したイグニスライフルMk5をグリードの大群に向けて発射した。
 カナの持つイグニスバスターライフルほどの火力はないにしても連射性と取り回しはよくグリード相手なら最適化的な威力を発揮する。

 それでもグランゲートとシュウが使えばその火力は馬鹿にできるモノではなくダンゴムシを含めた人型グリードも激しく炎上していく。



「では、次はこれを!」




 シュウは副腕にイグニスライフルをセットすると今度は空間収納からフレイムバズーカMk6を取り出す。
 マナが使っているフレイムバズーカMk7よりの1世代型落ちした武器だ。
 総合スペックではMk7に劣っているがそれでもBMN搭載機が使う事を想定したMk7を除いた武器の中では最高品質でありGC製でも最高ランクだ。
 このバズーカもGCブランドとして高値で取引されるほどだ。



「発射!」




 両手に装備されたバズーカと副腕に装備されたライフルと更にビットからなる四方からの爆撃でMk25を使っていないにも関わらず、それ以上の破壊係数を叩き出しグリード達を業火に包んでいく。



「ぎゃぁぁぁっぁぁぁぁ!」



 人型グリードの断末魔が戦場に響き、業火が天を貫く。
 グランゲートとシュウの圧倒的な神力ポテンシャルがあってこそ為せる破壊の権化だ。
 その一撃はどうしてもプレイヤーの目を惹きつけてしまう。



「やっぱ、シュウはヤバいな……」

「マジ、破壊神じゃねーか」

「アレと戦う事を考えると相当準備が必要だな……」



 まるで核の爆撃のように降り注ぐ攻撃にグリード達がその身を焼かれ、昼間だと言うのに太陽光を上書きするような光が辺りに立ち込める。
 その光景を見ていたのはプレイヤーだけではない。
 GCのギルドでモニター越しにイベントを見学していた如月達から見ても圧巻だった。



「す、凄い……」

「アレでは歩く核兵器庫ではないか……」



 阿部も如月もグランゲートとシュウの圧倒的なまでの破壊係数に度肝を抜かれる。
 グランゲートはそれだけ秀逸的な機体であった。
 彼女達の世界のAPの水準を圧倒的に凌駕する正しく“魔神”とも言える化身であった。



「あの力を東連合に引き込めれば……」

「阿部、その気持ちは分かるがやめた方が良い。シュウは我々とは立場が違う。彼の立場的に東連合1つに肩入れするとは思えん。逆に拗れるだけだ。」



 シュウはあくまで並行世界全ての治安を維持しているような軍属だ。
 対して、如月達は1つの世界、強いては1つの国を守る軍属だ。
 何を守るか何を慮るか立場が違い過ぎる。
 シュウは世界全体を見ており如月達は東連合の生存しか見ていない。
 そんなシュウが東連合の大義の為に動くとはとても思えない。
 寧ろ、一方的に迫ればその力を以て東連合が壊滅しかねない圧倒的な力を有している。



「なら、せめてこの世界のAPの技術だけでも譲って貰えるように交渉するのはどうですか?」

「それは……確かに必要かも知れないな」



 さっきはあのように言ったが如月とてこの機会を最大限活かしたいと考えている。
 先ほどこの世界のAPの戦闘能力を見たがグランゲートに及ばないモノも如月達のAPの性能を大きく超えておりそれだけで現代戦を変えかねないポテンシャルを秘めていた。
 如月も「せめて、あの技術だけでも……」と思わなくもない。



「しかし、何か見合うだけの対価がなければならないな。シュウ殿達も善意やボランティアでギデオンクラスターを運営している訳ではないからな。彼らの活動に対して何らかの有益性を示さねばならない。だが、それがかなり難しい」

「難しいでしょうか?この世界ではあのネクシルはありきたりな機体だと聴きました。あの新型爆弾で出来て時空のねじれで我々の世界とこちらが繋がるならグリードの侵攻阻止の観点からネクシルの貸与まで引き出せると思いますが……」

「確かにその可能性はある。だが、それでは弱いかも知れない」

「どういう事ですか?」

「忘れたのか?シュウ殿は我々の世界に“総意志”と呼ばれる存在がいると示唆していた。それは今の世界の在り方を決めた者がいるとシュウ殿は睨んでいる。つまり、と彼は考えているかも知れない。」

「それが本当だとすると、どうなるんですか?」

「多分、シュウ殿はこう考えるだろう。「こいつらにネクシルの技術を渡せば更に混沌を招くのではないか?」と考える可能性もあると言う事だ」

「なっ!そんな事をするわけが!」

「無いと言い切れるか?我々はスフィアクリーチャーとの戦争に明け暮れているのに人間との戦争にもかまけているのだぞ。他の世界の人間がそれを聴いたらどんな心証を抱く?」

「そ、それは……良いとは言えません」

「そうだろう。況して、シュウ殿の言うSWNは人間同士の戦争でも発生する。もし、彼がネクシルを東連合に譲渡した場合、その技術を巡って他の他国との戦争に発展すると考えたなら我々はネクシル技術すら譲渡されない可能性すらある。」

「そ、それは不味いです」

「そうだ。だからこそ、こちらで用意できるカードを我々は帰還前に練らなければならない。こちらにネクシルを譲渡して貰えるような交渉……強いてはSWNの削減に寄与できる交渉を考えるしかないと言う事だ。」




 こうして、この2人はシュウの預かり知らぬところでイベントを観戦しながら知恵を縛り会った。
 シュウの預かり知らぬところで事態は着実に進行していた。
 
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