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daidroid

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新たな仲間

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 あの戦いの後、千鶴は「次の世界に用がある」と言ってどこかに行ってしまったので戦後報告はシュウがリチャードにする事になった。
 シュウは全て話した。
 魔王を殺したのは自分である事と自分には支配しようとした相手を支配する能力がある事、その能力で魔王を自分の内で支配下に置いた事でシュウが生存する限り魔王は復活しない事、更にシュウの寿命はスペリオル レベラー第2形態になった事で長くなっているので半永久的な封印が可能である事等を説明した。



「なるほど……貴殿にそんな能力があったのか。ならば、何故、事前に言ってくれなかった?」

「何分、賭け的な要素が孕んでおりましたのでそんな作戦に期待を持たせるのは良くないと思い伏せておりました。申し訳ない」

「ふん……そうか。なら、仕方がないか」



 リチャードはとりあえず納得してくれた。
 彼が話が分かる人物で本当に良かったとシュウは思った。
 もし、話が分からない人間なら「部隊の信用を失墜させた。賠償を払え」などと言っていただろう。
 それをしないだけリチャードも今後もシュウ達との関係を良好にしたいと考えていると分かる。
 そして、彼は顎に手を当てて何か考え込んでいた。
 しばらくすると何かを思いついたようで両腕を両膝に据えて構えた。



「貴殿の言い分は理解した。しかし、それだけではまだ、何とも言えないな。貴殿を疑う訳ではないが我々もその能力がどの程度の効果があるか知っている訳ではない。もしかすると長い時間をかければその封印が解ける可能性もある。」

「それは……仰る通りかと思います」



 これに関してはシュウも危惧していた。
 魔王は最後シュウに全てを託したが魔王がその気なら支配された中で理の魔眼とかを駆使して“支配の狩人”を無効にする魔術を編み出す事も可能かも知れない。
 もしかすると反理の魔眼でオートで解除する可能性もある。
 エクストラスキルの支配となれば強大だが、どこまで支配できるモノなのかシュウ自身分かっていない。
 自我が強い人間とかだとレジストされる可能性もある。
 それを考えるとリチャードの言い分も理解できた。



「そこで貴殿に監視を1人派遣したい」

「監視ですか?」

「うむ、万が一、貴殿が魔王になった際に即座に貴殿を処刑すると言う名目だ。」

「中々、物騒ですね」

「まぁ、正確にはこの国としては魔王候補には必ず監視をつけるのが習わしでな……そうでないと民が安心できないのだ。そこは勘弁して欲しい。」



 その気持ちはシュウも理解できた。
 50年後と言う定まった期間があるにしても得体の知れない況していつ暴れるかも分からない怪物候補に監視をつけない等他の人間が納得しないだろう。
 リチャードはシュウの能力にある程度理解をしているが他の人間もそうであるとは限らない。
 この後、元の世界に帰ると言ってもあの世界とこちらは繋がっている。
 繋がっている以上、いつまたこの世界が脅威に晒されても可笑しくないと考える者も必ずいる。
 そう言った意味でリチャードの判断は間違っていない。



「それに単に貴殿を監視する為に監視を派遣する訳ではない。貴殿を守る意味も含まれている」

「わたしを守る……ですか?」

「何を不思議がっている。当然ではないか。貴殿の言う事が確かなら貴殿が生きている限り魔王の脅威には晒されない。逆に貴殿が死ねば我々はまた、魔王の脅威に晒されるやもしれん。ならば、貴殿を監視しつつ貴殿を守る盾が必要である。それにはこちらの事情を理解できる者がいた方が適任だ。」




 それも一理あると思えた。
 実際、シュウも自分の能力を完全に把握している訳ではない。
 自分が生きている限りとは言うが実際それがどこまでの定義なのかにもよる。
 NO内のプレイでキルされた時にも“死んだ”と適応されるなら魔王が復活するかも知れない。
 それに関しては月光に聴けば詳細が分かるだろうが以前、達也がカナに対して魂を消すアイテムとやらを持っていた事もある。
 プレイ中の攻撃で“死亡判定”を受けない可能性などない。
 それを考えると護衛をつけるのは自然な流れと言えた。
 それも魔王に関する事情を知った上で配慮できる人物は確かに適任だ。
 ギデオンクラスターのメンバーも無論、その辺はバックアップしてくれるだろうが専属の護衛がいるといないのではチーム内の負担が大分、変わって来る。
 シュウとしてもこの話を受けて損はないと考えた。



「分かりました。そう言う事なら是非、護衛をつけて下さい」

「ふん……なら、リリーシャを貴殿に派遣する」



 その言葉にシュウの眉が動いた。



「リリーシャを派遣するのですか?その……良いのですか?彼女は副団長ですよね?そんな簡単に派遣を決めて大丈夫ですか?」

「魔王が消えた戦後だからこそだ。今、必要なのはリリーシャのような武力ではなく繁栄だ。少々、惜しい気はするが貴殿を止める上でも貴殿を守る上でもアレほど適任な者はいない」



 それは確かにそうだ。 
 正直、シュウもリリーシャとは戦いたくない。
 感情的な意味もあるが、そもそも勝てる気がしない。
 ネクシルを使ってやっと魔王を倒したシュウと違ってリリーシャは生身でそんな過酷な戦いを熟したのだ。
 地力が違い過ぎる。
 普通に生身で戦ったらまず、勝てる見込みがない。
 そもそも、マッハ1万越えの剣と斬り合いたくない。
 そんなモノは生身で核兵器に挑むようなモノだ。
 失礼な言い方かも知れないがリリーシャは人の姿をした核兵器と言っても良い。
 ネクシルで戦うならともかく、生身では絶対に戦闘を避けたい。
 故にそれほど最強のボディガードもいない。
 彼女のネクシルでの戦闘を教えればシュウ直属の護衛機扱いで高い戦闘力も見込める。
 ある意味、恐ろしくはあるがこれほど旨味のある人材派遣もない。



「分かりました。そう言う事でしたら、リリーシャはお預かりします。」

「預かるか……謙虚なモノだ。なんだったら、貰ってくれても良いぞ」

「いえいえ、恐ろしくてできませんよ。ちゃんと然るべき時がくればお返しします。」

「ふん……律儀な男だ。なら、それまではと言う形で仲間として扱ってくれ」

「心得ました。陛下」



 シュウとリチャードは固く握手を交わした。
 こうして、ギデオンクラスターにリリーシャが加わる事になった。
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