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シュウは嗤う
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NO世界に戻ったシュウはリオに連絡した。
「リオ。状況はどうですか?」
「うん。順調だよ。後1日すれば目的地に到着かな?」
「それは良かった。ところでボイドセクターに頼んだ件はどうですか?」
「ちょっと、待ってね。ボイ君。あの証明はどの程度進んだ?」
リオは艦長席の横にいるボイドセクターに声をかける。
『現在、70%の証明が完了しています』
「だって!」
「なるほど、そちらも順調ですか。では、そのままお願いします。何かあれば連絡して下さい」
シュウは一旦、通信を切った。
ボイドセクターに任せた証明はシュウにとって大きな意味を為す。
ボイドセクターはその機体特性から量子的な働きを観測しそれを物理理論として数値化する事に特化している。
それを応用すれば、量子法則の証明装置としてもその機能を十全に発揮する。
だからこそ、必要なのだ。
ボイドセクターの“証明”を以てこちらの正当性を訴え、“理不尽”を発生させずにこの作戦は攻略しないとならない。
何気にボイドセクターに任せた役割は今回の作戦において必須とも言える。
シュウはここまでの流れが何故、発生したのか?どうして起きたのか?その訳を理の魔眼を通して知っている。
一言だけ言えばこれらの結果を生んでくれた「リオ」には感謝しかないとシュウは凄く思っていた。
だからこそ、その力は大いに役立つ。
リオの因果力をエンパシーで増幅する事で因果律的に”存在”と優位に戦う事ができる戦場を構築する事ができるからだ。
戦争とは、準備の3分の2で既に勝敗が決まっている。
その勝敗に寄与しているリオと言うファクターはこの戦いにおいて一番の功労者になるだろう。
◇◇◇
決戦の時は来た。
新メンバーの素材採取により機体や武装の大幅なアップグレードが完了した。
ただ、幸いと言うべきか、ヘルビーストや邪神とは彼らは遭遇しなかったのでスペリオル レベラーにはなれず、今回の戦いに関しては戦力外通告を受け、ギルドにて待機命令を与えた。
惑星と月との間ではエンパシーと“荒廃の文明”世界から派遣された宇宙艦隊が派遣されていた。
そこには如月と阿部の乗る紅桜と新型APであるノウソリスが展開されていた。
その中には大型の兵器があり、巨大なずんぐりとした胴体にミサイル等を積載した武器腕に多数の砲塔を備えた武器足を搭載した兵器が鎮座していた。
これはユウキが造り出した因果決戦兵器“アマテラス”だ。
細部はシュウが知るモノと若干違うが構造的には似通っている。
そして、その調整の為にユウキの艦隊と共にこの宙域に来ている。
そこに遅れるようにギデオンクラスター達が宙域に入って来た。
「遅れて申し訳ない。少々、セッティングに手間取っていましてね」
シュウが謝罪するとユウキが答えた。
「問題ないわ。重要な作戦だもの。万が一にも失敗できないわ」
「お気遣いに感謝します」
その時のシュウはまるで時を待ち侘びるように恍惚に笑った。
「それで、どのようにしてその根源と言われる“存在”を呼び寄せるのですか?」
「それは簡単です。“存在”は負の感情を触媒としていますから圧倒的なまでの負の感情……すなわち、“絶望”を与え、そこに特定の術式を当て嵌めれば相手に呪いを与えつつこちらが有利に戦えるようになります。その為には生贄が必要です」
「生贄ね……誰を生贄にするのですか?」
「……カナ。わたしの前に来て下さい」
それを聴いたGCのメンバーは絶句した。
何も作戦を聴かされていないメンバーからすればその作戦は如何に承諾しかねるものか分かるからだ。
特にマナは黙っていない。
「ちょっと、シュウ!一体何のつもりなの!アンタ!カナを生贄にする気なの!だとしたら!」
「……マナ。少し黙って下さい。協力するなら最後までわたしを信じて下さい……そのように言ったはずですよ」
それを聴いて全員が黙った。
それで少なくとも悟った。
シュウは仲間を裏切ったりはしない。
これは何か思惑がある……だが、その思惑が傍から見れば信じられない行動だからこそ、あの指示書には“協力するなら最後までわたしを信じて下さい”等と書かれていたのだ。
シュウはそこまで想定している。
ここでシュウを止めるのは彼に対する裏切りである。
それにカナもシュウに衝撃的な事を言われても一切微動だにしない。
それはシュウを信じているからだ。
そのカナの信頼すら裏切ってしまうとマナも含めて全員が思った。
カナはシュウの前に出た。
シュウは破壊剣を取り出し構えた。
「良いですか。カナ……あなたがわたしの事を一番信頼している。だからこそ、絶望するには打ってつけと言う訳です」
「そうですね。それはわたしがどんな気持ちを抱いているかも知っていますよね?」
「わざと気づかぬふりをしていましたよ」
「酷い人ですね」
「そうですね。勇気をもって踏み出せない哀れな男かもしれません」
「でも、そんなあなただから、わたしは惹かれたのかも知れない。だから、この身を捧げる事は厭いません」
「……良いですか。カナ。“存在”は高濃度のSWNに惹かれます。それが奴をこの地に引き落とす触媒となる。それには深い絶望が必ず必要となります」
「覚悟は出来ています」
「そうですか。カナ、あなたに会えた事がわたしにとって一番の幸福だったようです。そして、これがわたしなりの答えです!」
シュウはそれと共に破壊剣をカナのコックピット目掛けて投擲した。
それは高速でカナのコックピットに吸い寄せられる。
カナは全てを受け入れたように一切避けようとしない。
既に直撃コースに入っており、誰も介入できない。
だが、コックピットに当たる直前、そこに時空魔術で開けられたワームホールが出現し破壊剣はそこを通り過ぎた。
破壊剣は時空を跳んだ。
そして、人が持てるサイズにまで縮小し、ある人物の背後に出現、それを背後で待ち構えたルオが破壊剣を握り、その女の胸を突き刺した。
「ガハッ!」
その剣はユウキに刺さった。
ユウキは床に倒れた。
致命傷ではないので即死はしない。
治療を行わねば30分で死ぬだろう。
それと同時にユウキを襲ったアサシンは誰にも悟られぬように艦の艦橋から脱出した。
脱出と同時に艦橋をロックして脱出できないように細工しながら……。
「パパ!言われた通りにユウキを殺ったよ!」
それをルオがオープンチャンネルで全部隊に通達した。
シュウは不敵に嗤った。
「リオ。状況はどうですか?」
「うん。順調だよ。後1日すれば目的地に到着かな?」
「それは良かった。ところでボイドセクターに頼んだ件はどうですか?」
「ちょっと、待ってね。ボイ君。あの証明はどの程度進んだ?」
リオは艦長席の横にいるボイドセクターに声をかける。
『現在、70%の証明が完了しています』
「だって!」
「なるほど、そちらも順調ですか。では、そのままお願いします。何かあれば連絡して下さい」
シュウは一旦、通信を切った。
ボイドセクターに任せた証明はシュウにとって大きな意味を為す。
ボイドセクターはその機体特性から量子的な働きを観測しそれを物理理論として数値化する事に特化している。
それを応用すれば、量子法則の証明装置としてもその機能を十全に発揮する。
だからこそ、必要なのだ。
ボイドセクターの“証明”を以てこちらの正当性を訴え、“理不尽”を発生させずにこの作戦は攻略しないとならない。
何気にボイドセクターに任せた役割は今回の作戦において必須とも言える。
シュウはここまでの流れが何故、発生したのか?どうして起きたのか?その訳を理の魔眼を通して知っている。
一言だけ言えばこれらの結果を生んでくれた「リオ」には感謝しかないとシュウは凄く思っていた。
だからこそ、その力は大いに役立つ。
リオの因果力をエンパシーで増幅する事で因果律的に”存在”と優位に戦う事ができる戦場を構築する事ができるからだ。
戦争とは、準備の3分の2で既に勝敗が決まっている。
その勝敗に寄与しているリオと言うファクターはこの戦いにおいて一番の功労者になるだろう。
◇◇◇
決戦の時は来た。
新メンバーの素材採取により機体や武装の大幅なアップグレードが完了した。
ただ、幸いと言うべきか、ヘルビーストや邪神とは彼らは遭遇しなかったのでスペリオル レベラーにはなれず、今回の戦いに関しては戦力外通告を受け、ギルドにて待機命令を与えた。
惑星と月との間ではエンパシーと“荒廃の文明”世界から派遣された宇宙艦隊が派遣されていた。
そこには如月と阿部の乗る紅桜と新型APであるノウソリスが展開されていた。
その中には大型の兵器があり、巨大なずんぐりとした胴体にミサイル等を積載した武器腕に多数の砲塔を備えた武器足を搭載した兵器が鎮座していた。
これはユウキが造り出した因果決戦兵器“アマテラス”だ。
細部はシュウが知るモノと若干違うが構造的には似通っている。
そして、その調整の為にユウキの艦隊と共にこの宙域に来ている。
そこに遅れるようにギデオンクラスター達が宙域に入って来た。
「遅れて申し訳ない。少々、セッティングに手間取っていましてね」
シュウが謝罪するとユウキが答えた。
「問題ないわ。重要な作戦だもの。万が一にも失敗できないわ」
「お気遣いに感謝します」
その時のシュウはまるで時を待ち侘びるように恍惚に笑った。
「それで、どのようにしてその根源と言われる“存在”を呼び寄せるのですか?」
「それは簡単です。“存在”は負の感情を触媒としていますから圧倒的なまでの負の感情……すなわち、“絶望”を与え、そこに特定の術式を当て嵌めれば相手に呪いを与えつつこちらが有利に戦えるようになります。その為には生贄が必要です」
「生贄ね……誰を生贄にするのですか?」
「……カナ。わたしの前に来て下さい」
それを聴いたGCのメンバーは絶句した。
何も作戦を聴かされていないメンバーからすればその作戦は如何に承諾しかねるものか分かるからだ。
特にマナは黙っていない。
「ちょっと、シュウ!一体何のつもりなの!アンタ!カナを生贄にする気なの!だとしたら!」
「……マナ。少し黙って下さい。協力するなら最後までわたしを信じて下さい……そのように言ったはずですよ」
それを聴いて全員が黙った。
それで少なくとも悟った。
シュウは仲間を裏切ったりはしない。
これは何か思惑がある……だが、その思惑が傍から見れば信じられない行動だからこそ、あの指示書には“協力するなら最後までわたしを信じて下さい”等と書かれていたのだ。
シュウはそこまで想定している。
ここでシュウを止めるのは彼に対する裏切りである。
それにカナもシュウに衝撃的な事を言われても一切微動だにしない。
それはシュウを信じているからだ。
そのカナの信頼すら裏切ってしまうとマナも含めて全員が思った。
カナはシュウの前に出た。
シュウは破壊剣を取り出し構えた。
「良いですか。カナ……あなたがわたしの事を一番信頼している。だからこそ、絶望するには打ってつけと言う訳です」
「そうですね。それはわたしがどんな気持ちを抱いているかも知っていますよね?」
「わざと気づかぬふりをしていましたよ」
「酷い人ですね」
「そうですね。勇気をもって踏み出せない哀れな男かもしれません」
「でも、そんなあなただから、わたしは惹かれたのかも知れない。だから、この身を捧げる事は厭いません」
「……良いですか。カナ。“存在”は高濃度のSWNに惹かれます。それが奴をこの地に引き落とす触媒となる。それには深い絶望が必ず必要となります」
「覚悟は出来ています」
「そうですか。カナ、あなたに会えた事がわたしにとって一番の幸福だったようです。そして、これがわたしなりの答えです!」
シュウはそれと共に破壊剣をカナのコックピット目掛けて投擲した。
それは高速でカナのコックピットに吸い寄せられる。
カナは全てを受け入れたように一切避けようとしない。
既に直撃コースに入っており、誰も介入できない。
だが、コックピットに当たる直前、そこに時空魔術で開けられたワームホールが出現し破壊剣はそこを通り過ぎた。
破壊剣は時空を跳んだ。
そして、人が持てるサイズにまで縮小し、ある人物の背後に出現、それを背後で待ち構えたルオが破壊剣を握り、その女の胸を突き刺した。
「ガハッ!」
その剣はユウキに刺さった。
ユウキは床に倒れた。
致命傷ではないので即死はしない。
治療を行わねば30分で死ぬだろう。
それと同時にユウキを襲ったアサシンは誰にも悟られぬように艦の艦橋から脱出した。
脱出と同時に艦橋をロックして脱出できないように細工しながら……。
「パパ!言われた通りにユウキを殺ったよ!」
それをルオがオープンチャンネルで全部隊に通達した。
シュウは不敵に嗤った。
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