黒川さんちの短めなおはなし【短編集】

黒川

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草露白(くさのつゆしろし)

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朝。
真夏みたいなだる暑さは無くなった気がする。
そうは言っても、暑いは暑い。
そんな中でも、恋人は自分の事を離さない。
ベッドの中で、彼は自分の事をぬいぐるみか何かの様に、両手両足を使って抱き込んで眠るのだ。

だから、余計に暑い。

抜け出そうにも力が強く抜け出せない。
起きろ、と言わんばかりに恋人の足をゲシゲシと蹴りつけるがビクともしない。

いい加減に暑い。
エアコン付け直したくても腕が動かない。

じっとりと額に汗をかけば、ポトリと雫も落ちてくる。

「あ゛ー!!暑ぃんだよっ!離せっ!」

いよいよ我慢出来ずに、寝ている恋人に悪態を付く。

「んっふ⋯⋯おはよ。今日も元気だね⋯⋯」

恋人は、寝起きの掠れた声で挨拶をし、より一層に抱き込んだ。

「だぁかぁら!!離せって言ってんだよ!クソ暑ぃ!!」

「確かに君の額、汗でキラキラしているね」

離すつもりの無い恋人は、目を細めて額の汗を眺めていた。

「くさのつゆしろし、ならぬ、額の汁白つゆしろし、だね。エアコン付けよう」

恋人はエアコンのリモコンを掴むとピッと電源を入れた。
そよそよと涼しい風が、肌を撫でつけてくる。

「これでいい?俺、まだ眠いんだけど、もう少し寝かせてね」

時間は朝方。
まだ日は昇っておらず、窓の外は白々としている。
エアコンが効けば暑さは和らぐ。
額の汗も落ち着くだろう。

「ふぁ⋯⋯分かったよ⋯⋯」

日が昇るまで、2人は再び眠りについた。


◆◆◆

七十二候

「草露白(くさのつゆしろし)」

9/7~9/11頃
9月は一般的に日中と夜間の寒暖差が大きくなる。
その影響で朝方​、草の葉に白い露が宿ると言われている。



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って言う、いつか1年通してこう言う話を作りたい表明。
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