黒川さんちの短めなおはなし【短編集】

黒川

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短編(1000文字以上)

アホショタ君のその後の話。

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美ショタ息子は何度目か分からない親子喧嘩を実家で繰り広げていた。

「だから!クソ親父には会わせねーって言ってんだろ。同じ男として恥ずかしいんだよ!」

「一言謝罪したいだけだと言ってるだけだろ。それから、親に向かって言うセリフじゃない!誰のおかげでここまで成長できたと思ってるんだ!」

「出たよモラハラ言動。そのセリフ、おふくろにも言ってたんじゃねーの?最低だね。尊敬出来る親だったらそりゃ敬うさ。それが出来ねーからこう言う態度が出るんだろ?誰のおかげ?そりゃ飯作って世話してくれて俺の事を尊重してくれてここまで立派に育ててくれた、おふくろのおかげかなぁー!!!おかあさんだいすきー!!!」

「ふざけた態度を取るんじゃない!」

「ふざけてなんかいねぇよ!いちばんふざけてんのはアンタだろーが!!アンタの勝手な言動でアホショタさんの人生台無しにして!」

「ぐっ⋯⋯だから⋯⋯それを謝罪したいのだと⋯⋯」

「誰が望んでんの?アホショタさんがそれを望んだの?俺、親父よりずっとずっと近い場所に居るけど、アンタの事1ミリも気にして無ぇよ?テメェの自己満にアホショタさんを巻き込むんじゃねーよ」

美ショタ息子は、言いたい事だけ言うと、さっさと実家を出て行った。
この実家帰りだって本人は望んでいなかった。
半強制的に拉致られたのだ。母親に。
美ショタ息子は、父親の事はアホショタの件でかなり嫌悪感を抱くようになったが、母親の事は変わらず大好きなのだ。
だから逆らえるわけが無かった。
その先にクソムカつく父親が居ると分かっていても。
母親をけしかけたのが父親であると分かっていても。


◆◆◆


「あ゛ー!!!最悪っ!アホショタさん癒してください!」

アホショタのマンションに直行し、美ショタ息子はアホショタの腹に自分の顔をスンスングリグリと押し付け胸いっぱいアホショタの匂いを嗅いだ。

「美ショタ息子君くすぐったいよう」

ケタケタ笑いながら、アホショタは美ショタ息子の頭を撫でた。

「はぁ~。癒される。俺、アホショタさんちの子になる」

これも冗談で言ってるわけではない。常々、養子縁組をしたいのだとアホショタに持ちかけている美ショタ息子である。

「ふふっ。そんな事したら本当の親子になっちゃうね。それもいいなぁ⋯⋯僕、結婚なんてもう出来そうにも無いし」

「ダメ」

「ん?」

「俺以外と結婚しないで」

「んふ。しないよぅ。こんなオジサンを好きになる女の人なんて居ないし、僕は美ショタ息子君以上に愛せる人なんて今後絶対現れないよぅ」

「俺の事、愛しているんですか?」

美ショタ息子は恐る恐る聞いた。
なんだかんだ、自分の顔が父親に激似であること、アホショタと自分の父親が幼い頃とても仲が良く、アホショタはその記憶だけで充分幸せだったと言うくらいだったので、もしかしたら今も父親の方に気があるのでは無いかと思っていたのだ。

「誰よりも愛しているよ。僕のこと、好きになってくれてありがとう」

自愛の眼差しでアホショタは美ショタ息子を見つめ、身体を屈めて美ショタ息子の額にキスをした。


◆◆◆


結局、美ショタ息子の強固な鉄壁によって、美ショタがアホショタに謝罪をする機会は叶わなかった。
それどころか、美ショタ息子は両親に相談する事なく、アホショタの養子になった。

「それでいいの?」

と、言うアホショタに、

「それがいいんです」

と、美ショタ息子は応えた。
実の家族と縁を切るつもりで養子になった美ショタ息子だったが、なんだかんだ母親とは定期的に外で会っているし、弟たちは2人の愛の巣に遊びにやって来る。

「アホショタさん、兄さん、お邪魔しまーっす。いやぁ、相変わらずアホショタさん可愛らしい。どうです?俺の事も養子にしませんか?」

「いやいや何言ってんだよ。お前は次男なんだから、あっちの世話があるだろ。むしろ俺ですよね?末っ子の俺がアホショタさんの子になります」

「お⋯⋯ま⋯⋯え⋯⋯らっ⋯⋯!」

「「兄さんばっかりずるーい!!俺たちもここの家の子になるー!!」」

アホショタがアホショタたる理由は、すでに美ショタ家では周知の事実である。
故に、美ショタ妻は呆れはしたが変わらず美ショタを愛し、弟2人はドン引きはしたが表面的には変わらない態度で美ショタに接した。ただ、目は笑っていなかった。
そして、兄にアホショタを紹介されれば流石兄弟。
兄程では無いが、アホショタを気に入り、隙あらばちょっかいをかけるのである。

「アホショタさんを邪な目で見るなら帰れ!」

そんなやり取りをニコニコと笑いながらアホショタは眺める。
愛しているのは美ショタ息子君だけなのになぁ。
なんて思いながら、アホショタは今の幸せを噛み締めた。




おしまい






ここまでお読み頂きありがとうございました。
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