転生男爵家五男は、忍びのあの子を囲いたい。

黒川

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短編版

【短編】転生男爵家五男は、忍びのあの子を囲いたい。

(うっっわぁぁぁ⋯⋯)

男爵家の五男は絶望した。

(俺、転生してるじゃん)

齢4歳にしての自覚である。
男爵家の五男の前世は日本人だった。
もうお約束である。
前世の日本には穿いて捨てる程の転生物語がワンサカと溢れていたのだから。

(で?俺は何のゲームに転生したんだ?小説か?漫画か?アニメか?)

前世、特に熱中するゲームも小説も漫画も嗜んでいなかった男爵家の五男は頭を抱えた。

(くっっっそぉぉぉ。俺、どこの世界に転生したんだよぉ)

全く検討が付かないのである。
これなら気付かない方が幸せだったと嘆くも現実は無情で、どんどこ前世の記憶が流れ込んできた。

(いらんいらん!いらんったら!!童貞のまま死んだ情報いらん!非モテだった記憶いらん!あぁ!やめたげて黒歴史!俺のライフはもうゼロよぉぉぉ!!)

スカル柄のシャツに黒パンツ、手には良くわからない指だけ出てる革手袋に牙の形をした指輪を左の薬指に嵌め、片目が隠れる前髪にトゲトゲした靴を履き、その格好で大学に通う前世、そして童貞。
もう瀕死である。

「た⋯⋯たしゅけて⋯⋯」

男爵家の五男は4歳児らしく助けを求めた⋯⋯が、だれも来なかった。

「あ、かじょく家族いにゃかった」

男爵と言う爵位に五男と言う順位。
誰も彼を気に留めていなかったのである。
家族仲が悪いわけではない。貧乏貴族でもない。むしろ男爵家の中では裕福な方だ。

故に、4歳でありながらも金と使用人を充てがって放置されている立派な放置子なのである。

「んまぁ、ちかたねぇか。てかちようにん使用人どこ?ちっこトイレか?」

トイレである。
5分後に戻って来た。

ちようにん使用人、ぼくぼーけんちゃ冒険者になってくえちゅとクエストたくしゃん沢山こなちておかねガッポガッポかちぇぎ稼ぎたいんだけど、まじゅなにちたらいい?」

4歳にてこの口調、使用人は違和感覚えるかと思いきや、

「まぁ坊ちゃま。男爵家の五男と言う微妙な立場にふさわしい心構えですわ。協力いたします。まずは冒険者ギルドに登録ですわ。その後にワタクシとオンジョブトレーニングOJTで実戦積んでレベルアップですわ」

使用人は脳筋だったので何も問題は起きなかった。
男爵家の五男は脳筋使用人のおかげで、4歳にして冒険者ギルドへの登録と、定期的な依頼を受けられるようになった。
ちなみに、この世界観では0歳からギルド登録が可能である。何故ならば冒険者が子をもうけた場合、赤子を乳母車に乗せながらクエストをこなす親がいるので、冒険者しか入れない洞窟に入る場合は子も登録が必須なのである。

「うぇぇぇん!!ちようにん使用人もんしゅたーモンスターこぁぁぁい!!」
「ぼっちゃま!根性ですよ!ド根性をお見せくださいませ!」
「うぇぇぇん!!!」

依頼の全てを根性だけで押し通す脳筋使用人のおかげで、男爵家の五男は魔力覚醒に大幅向上、体術にも長け、実戦向きの身体にどんどん仕上がった。

そして15歳の誕生日を迎えた日、脳筋使用人は言った。

「これで私の付き添いはおしまいです。15歳以上であれば保護者が居なくても依頼は受けられます」

「おー、長らく世話になったな」

そして脳筋使用人との挨拶を済ませ、男爵家の五男は一人で依頼を受けるべくギルドに向かった。


◆◆◆


「お前はパーティ追放だっっ!!」

ギルドに向かう前に立ち寄った食事処で追放劇が繰り広げられていた。
とても立派な鎧を纏ったリーダーっぽい男が、薄っぺらい黒装束を纏い、かつ不釣り合いな剣を腰に下げた小柄な男を殴り飛ばしていたのである。

(嫌なもん見ちゃった⋯⋯てか、コレってなんかのイベントだったりする?あまり関わらないようにした方がいいな)

と、踵を返そうとした男爵家の五男だったが、つい殴られた小柄な男の顔を見てしまった。

(やだ♡もろ好み♡)

男爵家の五男は男もイケる五男だった。
装束が薄っぺらい事も相まって、ボロ雑巾の様に横たわる男。殴りつけた男は他の仲間と一緒にゲラゲラと笑ってるいる。なんとも下品な笑い方である。
五男とは言え男爵。男爵とは言え貴族。4歳から冒険者をしていたが、貴族教育もきちんと受けていた。
洗礼された所作で、横たわる男に近付きお姫様よろしく横に抱き上げると、下卑た笑いをしている彼の仲間に貴族スマイルを向けた。

「それでしたら、彼は僕が頂いても?」

そう言うと、リーダーっぽい男は目も合わせずに「やるよやるよ!そんな役立たず!剣もまともに振れねぇやつなんかいらねぇ!」

と言って店を出て行った。

残ったのは追放された黒装束の男と五男。
まずは怪我の治療のため治癒魔法をかける。
黒装束の男は目を丸くした。
この世界では、治癒魔法はとても珍しく貴重なのである。
しかしそこは転生男爵家の五男。
なんかこうチートなアレで身につけた。
ちなみに首さえ残っていれば身体の再生も可能だ。

「ごはん、一緒に食べようか?」

五男は黒装束に言うと、黒装束は返事の代わりにお腹で「ぐー」と返事した。

お互い食事をしながら自己紹介をした。
男爵家の五男は、男爵家の五男であること。
4歳から冒険者をしている事を伝えた。
黒装束の男は、先ほどのパーティーで剣士だったが、ついさっき追放された旨を話した。

「黒装束さ、もとは剣士じゃねぇだろ?」
「あ、はい。リーダーにパーティバランスが悪いからって剣を持たされました」
「その身なりじゃ前衛には向かねぇよなぁ」
「そう、ですね。どちらかと言うと後方支援と裏工作が得意で⋯⋯いや、そんなワガママ言える立場では無いので⋯⋯仕方なく⋯⋯」

どうやら黒装束、他国出身のため単独で冒険者ギルドに登録出来ない身分だったらしい。
登録するなら保証人を、保証人は同じパーティメンバーであること、そこである程度功績を上げれば単独で登録が出来ること。
そんな話をポツポツと話した。

「こんななりですから、なかなかパーティに恵まれず」
「んで?あのクソみたいなパーティに入ってたのか」
「クソ⋯⋯あれでもBランク冒険者なんですけど」
「俺Aプラスぅ~。俺の勝ちだな」

ちなみに、Bランクはベテラン勢。
A+は最上級Sの1個下。
BとAには大きな隔たりがあるが、A+とSの隔たりは国に要人申請するか否かの違いだけで実力はほぼ一緒。

「え⋯⋯え⋯⋯す⋯⋯」

黒装束は更に驚いた。

「まぁ、俺とパーティ組めば保証人になってやるし、功績も直ぐに上げれられる。ついでにお前個人のランクも上がるから、単独でのギルド登録も直ぐに出来る」

五男は黒装束に下心満載だった。
ここまで良くすればワンチャン同衾、果ては夜の合体までイケるのではないかと目論んでの申し出だった。
しかし黒装束はそんな五男の下心には気づかなかった。
涙ぐんで五男に頭を下げた。


◆◆◆


「お前、忍者だな?」

「忍者?」

「ほら、ニンニン!ってやるやつ」

「にんにん⋯⋯」

通じなかった。五男は項垂れた。

「えっと⋯故郷では俺らみたいなのは生まれの土地の名で名乗っていました。有名な所だとイガとかコウガがとか⋯⋯」

「ほらぁぁぁ!!忍者ぁぁあ!」

伊賀に甲賀、紛れもなくニンニンしてる。
なのに通じない。

「お前の出身ニホンとかジャポンとかだろ!?東の島国!」

「確かに出身は東にある島国ですが、国の名前はゴクトウと言います」

「極東っ!!」

「こっちではゴトーと呼ばれてます」

「後藤じゃん!!」

五男は叫ぶばかり。
黒装束は自分の発言の度に叫ぶ五男を心配した。

これらのやり取りは、パーティを組んで新たに五男が黒装束の保証人になり、いくつかクエストをこなした後の出来事だった。
黒装束は、動きも戦い方も忍者なのだ。
得意武器を持たず、身近にある石や枝、時には魔獣の骨や牙を使って戦うソレは乱定剣らんじょうけんと言っただろうか?
五男は前世幼少期に読んでいた忍者のたまごにん◯ま的な漫画本を思い出していた。


◆◆◆

(ここ、絶対日本人が創作したナニカの世界だろ)

五男は確信しているが、全く見当がつかない。
黒装束と出会ってパーティを組んでから、やたらと日本を感じている。
しかし、それなら。

(俺の立ち位置は何だ?悪役令息か?溺愛されてたまらん男爵家五男か?前世知識でチート三昧ハーレム展開か?)

どれも心当たりが無い。
悪役令息しようにも4歳から冒険者してるものだから貴族との交流が無い。溺愛してくれるハイランク貴族の令嬢とも令息とも縁が無い。男爵で五男だから婚約者もいない。生前知識と言いたいところだが、そこまで専門的な知識も無い。

(まぁ、悩んでも仕方ないからな。このまま冒険者を続けて金に困らない程度になったら国外に旅にでるのも良いだろう。そうすればきっとアレだ。どこかの作品に影響は出ないはず)

五男には、国を出た途端に聖女になったり他国の王族に溺愛される作品知識は無かった。


◆◆◆


「五男さん、本当にお世話になりました」
「おう、良かったな。ギルド登録出来て。まぁ、お前の実力ならすぐだと思っていたが」

本当にすぐだった。
黒装束は己の戦い方に特化すると、メキメキと実力を発揮しランクを上げていった。
そしてとうとう単独登録が出来るところまで成長したのである。
ちなみにその間、2人にラブは芽生えてない。
寝泊まりの宿は同室ではあったが、ベッドはツイン。
2人健全にそれぞれのベッドでスヤァである。

(俺のバカチーン!チャンスはいくらでもあったのに!)

五男は現世でも童貞だった。
そしてしつこいようだが4歳から冒険者をしているのである。女っ気ゼロだし貴族教育と言っても所詮脳筋使用人との机上の空論。
所作は叩き込まれたが、それ以外は空論。
褥教育に至っては、木の洞と丸太で学んだ。

「坊ちゃま、この穴に、丸太をこう!(ズボッ)」
「こう!(ズボッ)」
「そうです!」
(ぜってぇ違う⋯⋯)

そんな教育しか受けてこなかった五男、そして前世は中二病に疾患した童貞大学生。アプローチなんて出来やしないのである。

そんな塩っぱい過去を思い出しながら、黒装束に微笑んで「寂しくなるな」と呟いた。
ギルドに正式に登録が出来れば俺と一緒に組んでる意味も無いだろう。
彼ともお別れだ。

「五男さんは、俺が居なくなると寂しいのですか?」

先ほどの呟きが聞こえたらしい。

「そりゃ寂しいよ。俺はお前とパーティ組む前も使用人と組んでいたから、一人で冒険者ってのは未経験なんだ」
「使用人⋯⋯お強いのですか?」
「つえぇな。なんでアレが使用人なのか不思議で仕方ない。俺の親代わり兼教育者でもあったな⋯⋯いま思うとチートじゃね?褥教育のクソっぷりに目を瞑れば貴族教育に魔術体術全部アレから教わったもんなぁ」

五男は、改めて脳筋使用人のスキルの高さに感心した。

「し⋯⋯とね⋯⋯?」

黒装束の目の色が変わった。

「その方から、そちらも教育受けたのですか?」
「おん?クソみたいな教育だったがな!受けた受けた」

木の洞と丸太で、とは言わなかった。言えなかった。
そんなの褥では無い。

「クソみたい⋯⋯って事は、きちんと受けられなかったって事ですよね?」

黒装束が五男に詰め寄る。
木の洞と丸太で、とは言えないが、五男は頷いた。

「では、今までのお礼も込めて俺が改めて貴方に褥についてお教えしてもよろしいでしょうか?俺は房中術の心得があります。やる事は一緒です。どうか、その役目、俺に任せて貰えませんか?」

願ってもいない申し出である。
五男は黒装束と組んずほぐれつな関係を密かに思っていたのだから。
五男は二つ返事で了承した。

(こんなことってあるんだー!!!)


◆◆◆


そして朝チュンである。


「しゅ⋯⋯しゅごい⋯⋯」
「どうでしたか?俺の教育?」
「べ⋯⋯勉強になりましたぁぁぁ♡♡」

五男は抱かれた。
そりゃもうトロットロに溶かされ舐められ出るもの全て出し切って、朝方まで鳴かされた。
全身カラッカラである。

「色は、あらゆる場面で役立ちます。これを使いこなせれば、相手を意のままに操る事も可能ですし、欲しい情報だって得られます」

「は⋯⋯はぃ~~」

「俺と、これからも一緒に居てくれますよね?」

「は⋯⋯はぃ~~」

「って感じに⋯⋯ですかね」

黒装束はニヤリと笑って五男の乳首をキュムっと抓った。

「あぁっん!!」

囲われたのは、五男の方だった。



おしまい




----------



こちらの短編をベースに、お話が始まります。
多少設定等が異なる所も出てきますが、それは俗に言う「少年漫画の読み切り作品が、後に連載版となって再登場した時に得る違和感」てやつです。
よろしくお願いします。
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